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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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競艇とは魂の闘いである

グランドチャンピオン決定戦は、山本浩次の優勝で幕を閉じた。6月下旬の下関で、もっとも輝きを放ったのが、“ミスター不動心”であったということである。

DSC00120 しかし、それでもグラチャンの主役は今村豊だった、と断言する。優勝戦で負ければ、道中でどんな戦いを見せていたとしても意味はないし、結果がすべてであるという正論を認めつつ、6日間の大河ドラマを牽引してきた今村を、グラチャンのMVPとしたいのだ。

何度も何度も取り上げられ、僕も何度も何度も触れてきたとおり、グラチャンでの今村の体調は、決して万全ではなかった。再発したメニエル病症候群を抱えていたのだ。今村自身も、それを公言して戦いに臨んでいる。普通に考えれば、これは大きなビハインドである。しかし、今村は不利を背負いながらも、水面では普段と変わらぬレースぶりを見せた。いや、むしろ魂のこもった戦いを見せたと言っていいだろう。これは、背負ったものが大きいからこそ宿った、鬼神のごとき闘争心がもたらしたものだと思う。背負ったものとは、体調の不利だけではなく、地元SGの中心選手であらねばならないという責任感も含まれていたはずだ。

競艇がギャンブルスポーツである以上、たしかに万全でレースに臨むのは彼らの義務であるとも言える。調子や機力の良し悪しはあろうが、目に見えない不利などあってはならないという意見は正論だろう。だが、競艇選手たちは単なるバクチの駒ではない。レースをするマシーンでもない。機力はもちろん、体調や時には技術までをも凌駕する、魂というものを持った人間である。そして、競艇というのは、つまるところ、この魂が勝負を大きく左右するものだと、今村を見ていて僕は痛感した(競艇に限らず、勝負とはそういうものかもしれない)。松井繁には遅れを取ったが今村は堂々の予選2位。これは、プレッシャーも具合の悪さも、今村が気合で跳ね返した結果ではなかったかと思う(もちろんモーターも噴いていた)。

DSC00130 もう書いてもいいと思うが、予選最終日の4日目、今村は2回乗りの後半レースを2着したあと、ピットで倒れている。救急車も出動し、翌日の準優勝戦を欠場する可能性もあった。翌日のスポーツ紙などで一部報道もあったようだが、我々はこれには触れなかった。理由は、その現場を実際には見ていなかったことと、もうひとつ、今村はそれでもなお準優への出走に意欲を燃やしていたからである。聞くところによれば、宿舎で医師の手当てを受けて体調を回復させ、翌日にはそれまでの元気な今村に戻ったのだという。準優の朝、ピットで見かけた今村に、僕は涙が出そうになった。どんなことがあっても、地元のエースとしての責任はまっとうする。ましてや準優で1号艇を手にしたことの、責任は絶対に果たす。倒れたのがウソのようにきびきびと動き回る今村を、僕は心から尊敬したのだった。そして、ピットでの今村の姿から、準優では、魂の走りで必ずやファンの期待に応えるであろうと確信した。今村はビハインドを背負ったからこそ、誰よりもでっかいでっかいスピリッツを手にしたはずだからである。

もし今村が優勝していたら、と思う。今村も泣いたはずだ。僕もきっと泣いていた。地元のファンも同じだっただろう。優勝戦当日、スタンドには異変があった。開会式で選手が着用していたアロハシャツを覚えているだろうか。1号艇の白から6号艇の緑まで、艇番の色が揃っていたわけだが、競艇場の職員の方々は、毎日このアロハ着用で仕事にあたっていた。この日、職員の方々が来ていたアロハは、僕が見かけた限り全員が全員、黒色だった。示し合わせてそうしたのか、単なる偶然なのかはわからないが、僕には下関競艇場からの地元エースへの祈りを込めたエールだと思えた。僕はこれを、公平性や公正を欠くとか、主催者にあるまじき行為だとはまったく思わない。逆だ。競艇選手たちが魂を抱く人間だからこそ、取り巻く者たちには血が通っているべきだと強く信じる。だから彼らもまた、今村が勝ったとき、敬意をこめて感涙に濡れていたのではないだろうか。それは、まったくもって正しい姿だと言うしかない。残念ながら、今村の優勝はならなかった。勝負は時の運、どんなに願っても、どんなに魂を込めても、かなわないことはある。それが競艇だ。魂がぶつかり合って光を放つからこそ、時に無念の涙も流れる。競艇の素晴らしさは、ここにもあるのだと僕は思った。

DSC00296 僕は、そんな魂をピットで追いかけていたのだと思っている。選手たちがもっとも長い時間を過ごす場所であり、戦いへの準備を着々と整える空間であるからこそ、何らかの発露がそこにはある、ということだ。選手の魂は水面にこそある。もっとレースや進入での魂を取材し、見解を示してほしいというご指摘があった。もっともだと思います。次回からは、ご指摘の部分に関しても力を入れていきたいと考えています。そしてもちろん、ピット情報にも全力を尽くします。さらに、特注選手(H記者、次は誰に注目!?)をはじめとした、さまざまな企画を盛りだくさんに、渾身のレポートを続けます。笹川賞、グラチャンと2節、取材とレポートを終えましたが、もっとも強く感じているのは、競艇選手って素晴らしい! というごくごく単純な真理でした。彼らの輝く魂とその激烈なぶつかり合いを、オーシャンカップからもお伝えしていく所存です。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!(黒須田守)


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コメント

万全のコンディションでレースを・・・
それも1つの見解だが
今村豊がこれまでに艇界に与えたものは計り知れない。
それを今なおを示している彼に脱帽!
それは必ずや若い選手達に伝わり継承されるはずである。
もちろん我々にも・・・

投稿者: a (2005/06/30 4:52:38)
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