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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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準優勝戦、私的回顧

10R 山崎智也のクソ度胸まくり

SANY0412  スリットで大勢は決した。4カドに引いた山崎智也が、隣の瓜生を一気に1艇身ほど置き去りにする。いや、1艇身抜ける前に智也はもう左にハンドルを切っていた。絞る絞る。瓜生の舳先をかすめ、一目散の先マイに出る西島をターンマーク手前で交わし去った。これでは西島も抵抗できない。なす術なくまくられながら、ほぼ真横にも近い角度でブイを通過する。イン選手が惨敗する時の典型パターンだ。流れる西島。差しに構えた選手たちが殺到する。
 だが、今シリーズの西島は怪物だ。真横に流れたはずの艇が、モンキーとともにガッガッと水面を削り、ほとんど失速することなく鋭い放物線を描いて前進した。なんという回り足!
 その内側から怪物に迫る艇が1艇。6コースからブイ差しを打った原田幸哉だ。4艇身、3艇身……十分にマイシロをとって加速した分、幸哉が伸びる。その差は2艇身まで詰まり、ついに西島の艇尾に届いた。が、そこで幸哉の伸びは売り切れた。同じスピードになった西島はすかさず内に艇を寄せて、幸哉の進路を塞ぐ。たまらず外に艇を運ぶ幸哉。ここから先は、残酷なまでのパワーの差。西島は1ミリたりとも2マークを外すことなく、一気に幸哉を突き放した。1周1マークで智也の優勝戦3号艇が決まり、2マークで西島の5号艇が決した。
 それにしても、山崎智也のクソ度胸はどうだ。さほどスタートセンスのいい選手ではないのだが、腹を据えたらコンマ08の全速。自分の身を切ってでも敵の骨を断つ。何度も見てきた光景だが、何度見ても呆れるしかない。
 そして、F2西島の水面を削るモンキー。さらには、機力では明らかに劣勢なのに、潔くアウトコースに徹してブイ差しの一点勝負に出た幸哉。終わってみれば、SGウイナーの底力だけが印象に残るレースだった。

11R 今垣・辻・笠原のめくるめく凄絶バトル

SANY0462  凄まじいレースだった。3対3の枠なり。カドから青いカポックが伸びる。まるで10Rの再現のようなスリットだが、まくりに出ようとする白水に智也ほどの勢いはなかった。替わってスリットで劣勢だったカド受けの秋山が、白水に突つかれる形でまくりを打つ。が、トップSを切った辻はすでにターンマークを制して豪快な弧を描いていた。
 明日の1号艇は辻で決まり。焦点は2着争いか……と、見ていると、その内側に黒い物体がぺったりとへばり付いた。ナイター照明も手伝って、それは逃げる辻の影かと思えた。
 光太郎!?
 スタートで後手を踏んだはずの今垣が、そこにいた。アウト勢に注目していた俺は、また我が目を疑う。今日は逃げとまくりの自力決着ばかりの「握り水面」で、2コース差しは惨敗続きなのだ。いつの間に、どんな旋廻で差したのだ、光太郎。
 さらに目を疑う光景が続く。秋山のガードでシャットアウトされたはずのアウト勢から、笠原がとてつもないスピードで辻と今垣の間に割って入ろうとしているではないか。
 な、なんじゃ、このレースはぁ!?
 が、驚いているヒマは1秒もなかった。笠原を遮蔽するように辻と今垣がぴったりとくっ付き、ガシガシとぶつけあっている。スタンドは騒然。接触したままの足合わせは双方一歩も譲らず、まったく同じ足色だ。こうなると、内の今垣が辻に仕事をさせるわけもなし。1周2マーク、辻を牽制しながら磐石の先マイで優勝戦の1号艇を手繰り寄せた。
SANY0469 「よっしゃ、1-5-2じゃ、でけたっ!」
 右前のオッサンが拳を振り上げた。が、準優ならではの凄絶なバトルは、終わらない。同じ2マーク、バックで外に持ち出していた笠原が、全速のブン回しで辻の外に張り付いたのだ。もう、内から外から、目が回りそうだ。併走する辻と笠原。パワーではやや辻が上。機力にモノを言わせて2周1マークを先取りしようとする辻に、またまた笠原が全速のツケマイを放つ。決まった。バックで2艇身、辻を振り払う。
「ゴーゴーゴーゴーゴー!」
 今度は左隣の老婆が金切り声をあげた。英語ではなく5番の連呼だとわかっていても、不思議な声援に聞こえる。オッサンや老婆だけでなく、この全速戦の逆転劇にスタンド中が沸いている。歓声とため息と。ついに大勢は決したか。
 2周2マーク、今度は笠原が先マイを打った。狭い懐に艇を捻じ込もうとする辻。入らない。やはり2艇身差。
「ゴーゴーゴーッ!」
 老婆のボルテージが上がる。オッサンは呆然と見ている。差しが届かなかった辻は外に艇を持ち出した。2着をほぼ手中にした笠原は背を伏せて真っ直ぐに3周1マークを目指して走っている。ここで、辻がツツッとまた艇を内に寄せた。ブイの手前で、頭を起こした笠原が、まず外を見た。辻はいない。それから首を左にひねって後方を見た。切り返した辻の艇がすぐ真後ろにいた。慌ててツケマイを放つ笠原。だが、タイミングを逸した分だけ威力がない。モンキーで艇を合わせた辻が、ついに笠原のサイドを奪った。半艇身ほどだが、入ってしまえば辻に主導権が移る。
「イチイチイチイチ~~!」
 オッサンが絶叫する。というより、スタンド全部が絶叫している。最終2マーク。辻が先マイして、笠原が4度目のツケマイを放つ。辻を秒殺してもおかしくない凄いツケマイだ。しかし、勝負の運はわずかに辻に味方した。笠原の全速マイは、すでに1着を決めて豪快に凱旋モンキーした今垣の引き波とぴったり重なったのだ。笠原はその引き波を避けるようにわずかに艇を外に持ち出したが、その分だけ辻に先着を許した。
「よっしゃ、よくやった!」
 オッサンがまた叫ぶ。老婆が沈黙する。資金が尽きて舟券を買わずに観戦していた俺は、ただただ立ち尽くしていた。
 想像もつかない旋廻で影のように差した今垣。
 笠原を出し抜く切り返しで再逆転した辻。
 そして、新鋭王座戦のような超弩級のツケマイをぶっ放し続けた笠原。
 このレースを現場で見ることができて、よかった。

12R 植木、終戦。

SANY0501  4カドを想定していた菊地が5コースになって、俺は植木の勝ちを確信した。昼の特訓から図抜けた伸びを見せていた菊地がカドなら、植木でも危ない。が、4カドになった市川の伸びなら、さほどの脅威ではない。そうタカをくくっていたのだ。
 スリットから市川が飛び出した。絞りはじめる。が、やはりそのスピードはまったりとしていて、植木までは届きそうにない。おそらく市川は植木の内懐へまくり差しに入る。そう決め付けて外に目をやると、市川に連動した菊地がぽっかり開いた空間を突き抜けようとしていた。
 このまくり差しは鋭い。逃げた植木との一騎打ちだな。
 また視線を右に向けて驚いた。植木と市川が競って流れている。市川はややスローモーなまくりの末に植木まで抱き込もうとし、植木がそれに抵抗しているのだ。
 ズルッ。
 鈍い音が聞こえた。植木の艇が市川の引き波に乗って、完全に失速した。まさかまさかのノックアウト劇。菊地との一騎打ちどころか、5番手からもはるかに引き離された最後方だった。スタンドは11Rの熱狂的な声援とは180度反対の阿鼻叫喚ぶり。嘆息、罵声、「うえき~!!」という絶望的な声……そんなこんなが入り混じって呪文のように重苦しい低音が響くなか、菊地は悠々と先頭を走っている。2着も完全に田村が取りきった。凄まじい追い上げでシンガリから3着まで追い上げた植木だったが、この上位2艇との差は縮まることはなかった。
SANY0434  最終2マークの直前、まだ3着争いが熾烈な中で、植木は正座で上体を直立させ肩をわずかに上下させた。ため息をついている。終戦を自分自身に言い聞かせて、静かにため息をついている。そう見えた。そして、ゴールを過ぎてから、植木は深く頭を垂れた。ターンマークまで垂れ続けていた。ファンに詫びるように、己を叱責するように。
 スタンドはとても静まり返っていて、鮮やかな花火が打ちあがっても誰ひとり拍手する客はなかった。(畠山)


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