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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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淡々と迎えるバトルの時――優勝戦、前半のピット

 優勝戦の日の午前中は、意外なほど騒然としている。一般戦出場組が忙しく動き回り、最後の出走レースが終わった選手たちはボートの洗浄、返納、帰郷準備などに追われる。予選道中でもこんな時間帯は出現するけれども、やはりどこかゆったりした空気を感じる。
SANY0460 優勝戦の日だから、まずはこの人の話を最初にしてしまおう。気になる山崎智也だ。
 さすがに昨日に比べると、肩の力の抜け具合がまるで違う。レース前には気合の乗った顔つきを見せるが、それ以外の時間は、気のせいだろうが、黙っていても目尻が下がっているように見えてしまう。実際は優出を逃した忸怩を抱えているに違いないのだが、それでも切り換えはすっかり完了したような、そんな毒っけのない表情をしている(もともと毒のようなものは、予選道中も感じないけれども)。
SANY0484  ただし、やはり仕事と向き合ったときは、真剣な目つきになる。原田幸哉と話し込んでいるのを発見したので、そーっと近づいてみると、定規で引いたのではないかと思えるくらい真っ直ぐな眼差しで会話を交わしている。智也と原田は実に仲が良さそうで、笑顔でじゃれ合っている場面のほうが圧倒的に多いのだが、こと仕事に関してとなれば、お互いプロフェッショナルの顔になる。このメリハリも、強さの源か、とも思ったりする。
 かと思うと、突如おちゃめな智也がやっぱり現われたりもする。5Rを2着で終え、江口晃生、濱野谷憲吾らと談笑しつつカポック脱衣場へ歩いているときのこと、控室から熊谷直樹が歩き出てきた。それを見つけた智也は「クマガイさ~~~~んっ!」とピット中に響く声で叫ぶ。熊谷、思わず柱の影に隠れる。なぜかバツが悪そうに笑っているぞ。すると智也、「エンジン(? と言ったように聞こえました)ありがとうございま~~~すっ!」と笑いながらさらに叫んだ。江口、濱野谷は大爆笑だ。熊谷もなお笑っている。熊谷が何事か声をかけると、智也は「トホホ……」と、両手の人差し指を合わせる(「いなかっぺ大将の風大左衛門の「どぼじて、どぼじて」です)。熊谷さん、何かいけないアドバイスでもしたんでしょうか。熊谷、江口、濱野谷はさらに大爆笑。もちろん見ていた僕も大爆笑だった。智也、後半も頑張ってね!

SANY0483  さて、優勝戦6戦士。今書いたとおり、江口は智也のギャグに大笑いする余裕がある。昨日と変わらぬ泰然自若ぶりで、プレッシャーなど小指の先ほども感じていないようだ。昨日書いたように、今節は「淡々」な熱さに流れが傾いている、と思える。その見立てが正しいとするのなら、江口のこの落ち着きは脅威以外の何物でもない。智也と一緒にいないときでも、悠然とした風情でいる江口。オーシャンカップに続く大仕事を果たすか。
 淡々といえば、山本浩次。今日もまた、ミスター不動心らしい振る舞いで、淡々と過ごしている。しかも、前半のピット内ではほとんど姿を見かけなかったのだから、もはややることはやり尽くした、ということか。これを書いている途中、優出選手のスタート練習が行なわれていたが、そこにも2号艇は参加していなかった。これもまた、脅威である。

SANY0463  大阪支部、69期の太田和美と田中信一郎も、実に落ち着き払っている。逆に失礼な表現になるのかもしれないが、太田など「今日は一般戦1回乗り」と言われても納得してしまいそうなほど、昨日までと変わらないし、一般戦組と同じたたずまいを見せている。言うまでもなく、この自然体は大きな武器だ。優勝戦1号艇に心拍を乱されることもなく、普段どおりの走りで臨む。そうそうできることではない。
 田中信一郎は、ムードで言ったら一番だと思う。程よい気合乗り、とは今日の信一郎を指すのだろう。我々取材班が見てきたSGでは、いまひとつ精彩を欠いていた信一郎だった。たぶん、我々は本当の信一郎を見たことがなかったのだ。今日の信一郎が、真実の田中信一郎。勝敗は時の運だが、ピット内の様子だけで舟券を買うのなら、信一郎と心中してみたい気にさせられる。

SANY0466  瓜生正義も、基本的には昨日までとは変わらない。選手食堂の取材中、瓜生が現われて、食事中の選手らと(同期の魚谷智之とか)食堂内のモニターでレースを見ていたのだが、すぐに「ここにいると、腹減っちゃう」と笑いながら、食堂を出て行った。昼食抜きでレースに臨むのか。少しでも体重を減らして、いや、少しでも体重が増えることを嫌って、大一番に賭ける。プロフェッショナルの所業である。この思いが報われてほしいと、選手食堂に紛れ込んでカツ丼を食っている体重100kg超のデブは思わずにはいられなかった。
 もっとも慌しく動いていたのは烏野賢太。ギアケースの調整をし、それを終えるとペラ場に直行。熱心に調整を施している。昨日のコメントによれば、伸びはいいのだが、ピット離れが悪いとのこと。ただし、ピット離れを直すと、伸びがまるでなくなるのだそうだ(予選6着、4着のときがそのセッティングだったらしい)。そのあたりを、優勝戦前にもういちど見直したのか。8R前のスタート練習のあと、ただ一人試運転に励んでいたところを見ると、今日の朝、いったんひどいほうに転んでしまったのかもしれない。優勝戦までにどこまで立て直す(もしくはパワーアップする)ことができるのか。

 優勝戦の発走はまであと3時間弱。午前中の静かな闘志が、熱く燃えるまであと少しだ!(黒須田守) 


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