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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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ダービー準優勝戦・私的回顧

10レース/山本浩次、グラチャン流の4カドまくり!

 しずしずと降っていた雨が止み、急に向かい風が強くなった。ファンファーレが鳴っても、選手たちはピットから出ない。
「このまま、しばらくお待ちください」のアナウンス。「風雲、急を告げる」というか、明らかに怪しいムードが漂っている。
 こりゃ、荒れるな。
 俺は確信にも近い予感を抱いた。
SANY0430  再びファンファーレ。今度は勢いよく選手たちが飛び出した。特に2号艇の上瀧と3号艇の智也が出色のピット離れ。一気に1号艇の山本を呑み込んで、小回り防止ブイを先取りする。さらに外側からは5号艇の西島がぐる~り大きく回って、いちはやくスタート方向に舳先を向けた。その内側にくるり小さく回って上瀧。予想していたよりも、かなりすんなりと2・5の進入が決まった。風が変わったことで、西島が深い進入を嫌ったのかもしれない。智也が3コースに陣取り、ピットアウトで遅れた山本はやや恨めしそうに内の艇を見ている。
 だが、ここで開き直れるのが山本の強みだ。智也がしっかりと舳先を向き終えるのを待って、潔く艇を引いた。下関グラチャンの優勝戦が脳裏をかすめる。253/146の3対3進入。また一段と向かい風が強くなる。12秒針が動いて山本、瓜生、瀬尾のアウト勢が発進した。続いて智也と西島が初動を入れたが、明らかに遅い。風を読み違えたか。あっ、と思った瞬間には、山本がピットアウトのお返しとばかりに内の艇を呑み込んだ。
 極端すぎる2、3コースの中ヘコミ。インからまずまずのスタートを切った上瀧は、一瞬だけ山本に抵抗する素振りを見せた。だが、防波堤のない4カドまくりに歯が立つわけもなく、舳先がわずかに触れただけで山本の引き波を拝した。2着には、山本のマーク差しで漁夫の利を得た瓜生。典型的なセット舟券だったわけだが、この展開を予想して1-4を買ったファンはほとんどいないだろう。終わってみれば本命サイド決着。荒れると思った俺の予感は見事に外れ、山本の冷静さと強さだけが印象に残った。

11R/太田和美、コンマ06のモンスター逃走!

DSC01622  本人は中堅上位と言い続けているが、太田の足は節一級だと俺は思っている。確かに伸びなら山本、レース足なら植木、などパーツパーツでは見劣っている気もする。それでも足合わせや実戦を見ていると、他を圧倒するような迫力を感じるのだ。一言でいうならパワー。そんじょそこらの引き波なら軽々と超えてしまいそうな重厚感がある。
 そんな太田が枠なり3対3の楽なイン取りからトップスタート。極端にへこむ艇もなく、スリット後の隊形がやや右肩下がりの数珠つながりになってしまっては負けろという方がムリだろう。一瞬だけひやりとしたのは、2コース田中の差しがさすがに鋭角で太田の内フトコロに迫ったときだ。
「入ったかなと思ったけど、(同期の)信一郎が引いてくれたんですよ」
 レース後のインタビューで太田はジョークを飛ばしたが、内心では田中を完封したパワーに確かな手ごたえを感じたはず。逃げる太田、順走する田中で早々と大勢は決した。傍観者にとっては味気のないレースではあったが、それだけ太田が強かったという証でもある。また、その太田に突き放されることなく、ゴールまで5、6艇身差で追走していた田中の足もトップ級だ。69期から3人が参戦したこのレース。太田・田中のSGウイナー2人が貫禄を見せつけ、無冠の大器・仲口博崇は同僚の引き波に呑まれた。

12R/大波乱! 植木、幸哉の空襲に散る

SANY0438  今日、いちばん頭の堅いレース。誰もがそう思っていただろう。もちろん俺も植木の勝利を確信していた。このレースに西島や上瀧がいるのなら、波乱も想像できる。だが、その2人はすでに10レースで役割を終えている。伸び型の江口はコース取りに執着しない。さらに11レースの1-2-3決着が、植木絶対のムードを不動のものにしていた。進入はやはり前レースと同じ3対3で、4カドは江口。桐生オーシャンでは3カドからまくりきった江口だが、さすがにアウェーの4コースでは届きそうにもない。
 植木が落ち着き払った風情で加速した。ダッシュ勢の3艇には、植木に鈴を付けるだけの迫力は感じられない。
 楽逃げだな。
 俺はこう思い、思った瞬間に驚いていた。敵はダッシュ勢ではなく、植木と同じスロー勢だったのだ。完全に死角だった。赤いカポックが、スリットを超えて植木から1艇身ほども出し抜こうとしている。その内にいる黒いカポックも植木の脳天を叩く勢いだ。俺は驚きながらも、この絶体絶命の体勢からどうすれば植木が勝てるかを想像していた。その想像のレースと眼前のレースは、ほぼリアルタイムで進行してゆく。まずはとびっきりのスタートを切った3コースの原田幸哉がまくりの体勢に入る。それではたまらん、と2コースの烏野賢太が身体を張って抵抗する。2艇がぶつかって幸哉の艇がバウンドし、やや失速する。ここまでは想像レースとほぼ同じ。それから烏野が差しに回って、幸哉が無理っぽいつけまいを打てば、植木にも勝機が生まれる。そして、その通りになるだろう。
SANY0443  だが、実戦はまったく違うモードに突入した。体勢が不利だったはずの烏野が捨て身のツケマイを放ち、躊躇した幸哉が差しに回ったのだ。もし幸哉も二段のツケマイを強行すれば、2艇は思いきり流れて植木にもチャンスがあったはず。が、すぐ隣の烏野から強ツケマイを喰らった植木は、なす術もなく引き波にはまって最後方までずり下がった。まくりきった烏野に追随したのは幸哉ではなく、4カドから二段のまくりを打った江口。
 それでも植木は諦めない。艇を内に切り込ませながら、2マークで烏野以外の4艇の舳先をかすめるようにして先マイを打った。今節、何度か見てきた植木マジックともいうべき逆転劇がまた起きるのか……俺はその凄まじい切り込み先マイに目を奪われたが、植木のモンキーをもってしても立て直すことのできない入射角だった。軋むように艇尾が揺れ、振り込んで万事休す。大本命視されていた男が、V戦線から脱落した。
 それにしても原田幸哉という男、あの涼しげな風貌からは想像もできないほどの勝負師だ。スロー発進から他艇を無視して、1艇身ほども飛び出すようなスタート(実戦はコンマ05)を切るとは……並大抵の心臓ではない。この幸哉の奇襲ともいうべき大胆な作戦が、シリーズリーダーを失墜させ、500倍超の大穴を生み出したのだ。(畠山)


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