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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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すでにダービーは始まっている!――前検のピット

SANY0969 「モーター抽選」の記事の最後に、「『作業開始!』の合図で選手はおのおのピットへ……」とある。たしかに選手たちは一斉に行動を開始したわけだが、誰よりも素早く立ち上がり、誰よりも早足でピットに向かったのは、西島義則だった。誰よりも早くモーターを受け取り、誰よりも早くボートに装着し、誰よりも早く水面に下ろし、誰よりも早く試運転に出る。まだ誰も走っていない真っさらの処女水面に最初の引き波を描く西島。この光景は、西島の出場したSGで毎度見られたものである。西島は、常に水面一番乗りを果たすのだ。ブインブインと、静かな水面に西島のモーター音だけが鳴り響く。あたかも、SGのゴングを鳴らすのが彼の役割であるかのように、西島は一人、ターンマークを全速で周っている。
SANY1004  それを合図にして、次々と選手たちが試運転に出て行く。水面は一気に賑わいを帯びる。その頃、西島はすでに試運転をいったん終えて、ペラを熱心に叩いている。試運転の様子を眺めに水面のほうへ向かい、数分か数十分経って整備室を覗き込むと、西島はすでにモーターをチェックしている。テキパキという音が聞こえてくるような、そんな動きで西島は前検日を過ごすのだ。一分一秒でも無駄にしない。西島のその姿勢は尊い。

SANY0990  対照的なのは、今垣光太郎だ。もちろん、のんびりとしているわけではない。徹底的に、納得のいくまでモーターをチェックする。絶対に妥協することなく、自分のセッティングを追及する。その地点に到達しなければ、決してモーターをボートに装着しないのが今垣なのだ。だから、どんなに早く作業を始めても、水面に出るのはいつも最後のほうだ。おおむね、ベテラン選手は早々と試運転を始め、諸雑用をこなすため若手は試運転に出るのが遅くなる傾向があるのだが(スタート練習は登番が早い順に行なわれるため、ベテランが先に試運転を行なう必要性もある)、今垣がボートを水面に下ろすのはたいてい若手に混じって、ということになる。その姿勢もまた、尊いと言うしかない。
 今日もまた、今垣が試運転に出たのは、80期代の選手たちと同じ時間帯だった。今節は、新モーター使用から5節しか経っていないため、ピストンとピストンリングの交換については新品のみとなる。つまり、中古のピストンとピストンリングは出されない。満足できる部品交換ができないことから、今節の今垣は「ギアケースとプロペラの調整に専念する」という。整備の鬼が、ひとつの武器を封印せざるをえないわけだが、だからこそ今日の段階で手応えと今後の方向性を掴んでおきたかっただろう。試運転前の入念な調整で(もちろんその後の試運転でも)、今垣はおそらくそれを感じ取った。明日からの動きに注目するしかない。

SANY1000  笠原亮がタタタタタッとピット内を走っていた。どこに向かうのかと思ったら、試運転用ピットで調整に励んでいる熊谷直樹のところだ。熊谷の横にしゃがみ込んだ笠原は、顔中いっぱいの笑みを浮かべて、熊谷に何か語りかけ出した。熊谷の顔もほころんで、一見、談笑しているように見える。係留所まで取材者は降りていくことができないので、何を話しこんでいたのかはわからないが、笠原がアドバイスを請うているようにも見える。地区的な接点については微妙だし(北海道=東京支部と静岡)、何より静岡支部は今節、笠原を含めて5人が参戦、熊谷のもとに笠原が駆け寄るのがちょっと不思議ではあるが……。それにしても、二人の間からは何だかすごくいい空気が漂っていた。笠原、先輩にけっこう可愛がられてるんだろうなあ。いいシーンでした。

SANY0972  明るいのは、今村豊だ。「今日は何もしません」とのことで、スタート練習を終え、ドリーム戦共同会見に応えたあとは、あちこちでいろいろな選手(はもちろん、中道善博さんなど)と談笑する姿を見かけた。今年に入って彼の体調が話題にならないことはないが、今でも正直なところ不安はあるのだという。それでも今日は絶好調。このまま、元気に一節を終えることを祈らずにはいられない。
 ただし、ご存知の方も多いだろうが、現在の今村は事故点がパンパンな状況。だから、今節の目標は「とにかく無事にゴールインし、A級を確保すること」と今村は言った。会見では、ダービーはこだわりのあるタイトルでは、と聞かれて、「えっ、これ、ダービーなんですか?」と笑った。「僕にとっては、今節はダービーじゃないですから」と冗談めかして言ったあと、さらに冗談っぽく「でも、レースですから、何があるかわかりませんよね。勝っちゃったらすみません」とニッコリだ。モーターは悪くないと見たぞ。
SANY1010  今村の会見の終盤に、次にインタビューを受ける山崎智也がやって来た。それを確認した今村は「優勝候補が来ましたよ」と、また笑った。会見を終えて部屋を出る際には、智也に向かって「明日はマクらないでね」と、さらに笑う。たしかに、今節の今村は、とにかく無事故完走を命題として走るのだろう。それでも、この明るさは怖いと思う。予選道中、着を落としたりすれば人気は落ちるだろうが、決して侮れないはず。何より、彼はあの今村豊なのだ。無理ができないのは重々承知のうえで、僕は注目し続けたいと思う。頑張れ、今村豊!

SANY1020  ドリーム戦共同会見では、何人かが「植木さんが良さそう」とコメントしていた。それを聞いた植木、「え~~~~~~~っ!? マジぃぃぃぃぃ!?」と素っ頓狂な声をあげた。「どこを見て、良さそうって言うんでしょうね」と、本人は前検日の脚色にまるで満足していないのだ。「とにかくパッとしないね。合格点はつけられない? うん、そうですね」というから、明日は忙しい時間を過ごすのだろう。
 その植木が、「濱野谷くんは出てなかったね」とも言った。赤岩善生も、「濱野谷さん(と光太郎さんは、とも言った)は下がった感じでした」と。ドリーム戦、濱野谷苦戦か? ところが、濱野谷自身に言わせると、真相は違ったらしい。スタート練習は新ペラをつけて臨んだのだが、それがまだしっくり来ていないようなのだ。「いつも使っているのを明日から調整します。試運転では乗りやすさがあったから、思い切ったレースができそうですね」と、ペラさえ換えれば十分手応えあり、の様子である。植木は、「今のままの濱野谷くんなら、ドリーム戦では前付けします。濱野谷くんが元気になって、仕掛けてくれたら6コースでもいいんですけど(濱野谷=5号艇、植木=6号艇)」とも言っていたが、濱野谷、元気なレースできそうです。でも植木は、「濱野谷は出てない」と思っているわけで……。このへんの駆け引きがどうなるか、ドリーム戦の外枠の戦いから目が離せないぞ。

SANY1015  最後に、今節も気になるぞ、山崎智也。前検は、特に目立った動きもなかった。共同会見は強気でもなく、弱気でもなく。気合一杯ですか、という質問にちょっと苦笑いしていたが、決して否定的でもなかった。明日のドリームは、今村に「マクらないでね」と懇願されているわけだが(笑)、「はい、頑張ります」と冗談で返したものの、チャンスがあれば強烈なターンを見せるに違いない。明日も気にさせてもらいますよ、智也選手!(黒須田守)


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(無題) 【「競艇」と「恋愛」は両立するのか!?】
いよいよ明日からダービーですね。早速ドリ 続きを読む
受信: 2005/10/25 1:07:34
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