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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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静かに天王山を迎える――4日目、後半のピット

 時間を追うごとに落ち着いた空気が支配していく。4日目、予選最終日のピットはそんな顔をしていた。勝負駆けに成功した者、失敗した者。勝負に勝った者は、もちろん笑顔を見せる。敗れた者は肩を落とす。それぞれの思いが交錯しても、すでに結果は着々と判明していく。今日のレースを終えれば、それを受け止めるしかないのだ。達観にも近い思いを、選手たちはおそらく抱いている。11R、12Rを迎える頃には静けさをたたえるピット、そこには祭りの後の静寂にも似た終息感が漂っている。
SANY0343  しかし、である。意外なことに(……なのだろうか)、その時間に整備場、及びペラ場に姿が見られるのは、ベスト18を逃した面々が多かった。たしかに戦いは終わった。準優勝戦に出場する選手たちは、最大のヤマ場を明日迎えるわけだが、一般戦回りになる選手たちにとっても明日は決して消化試合ではないのだろう。モーターを凝視し、ペラと向き合い、勝ち上がりに関係ないレースといえども、手を抜くことなく勝利を目指す。大挙5人の参戦となった静岡勢は、不本意なことに一人も準優に送り込むことはできなかったが、総帥・服部幸男を筆頭に、明日もまた“最強支部”の存在感を誇示せんと魂を燃やすのだ。

SANY0332   準優に届かなかった選手たちのなかで、少し様子が違って見えたのは、今垣光太郎である。“整備の鬼”であり、いつも忙しく動き回っている今垣が、妙にのんびりしているのだ。整備場では姿を見かけず、ペラ場でも視界に入る場所には見当たらない。かと思えば、レースを見に水面の近くまで出てきて、モニターが見づらいとなると、医務室のテレビを覗き込んでいる。近畿勢のボート引き上げに向かう姿は、すっかり落ち着き払っており、瞳にもやや力がないように見える。こんな今垣は、初めて見たような気がする。今節は、相当に苦しい戦いを強いられた、そういうことではないかと思った。

SANY0318  憮然としていたのは、新美恵一だ。12R3号艇で出走した新美は、4着で準優進出。足色や艇番を考えれば、それほど厳しい戦いではなかったはずだった。ところが、1周2マークでキャビって、シンガリ負け。まさかの予選敗退を喫してしまったのだ。もともとピットでは淡々とした表情でいることが多く、相好を崩したりネガティブな感情を露わにするようなタイプではないが、今回は体全体から憤りが発散しているように見えた。ピット内に設置されているモニターに、多くの選手が集まってリプレイを見ていたとき、新美はモニターの前を遮りながら早足で通り過ぎていった。たとえば、原田幸哉は通過しようとしながら、リプレイを映し出しているのに気づいて足を止め、じっくりと見入っていた。今村豊は、モニターを遮りそうになるのに気づいて、腰を低くして頭を下げながら、見ている選手の邪魔にならないように通過した。しかし新美はリプレイも見ようとせず、肩をややいからせ気味にしながら、スタスタと控室に向かったのだ。やり場のない悔しさをグッと噛み締めていた、そんなふうに思えた。

SANY0355  一方、予選通過組は、やはり表情に明るさが見える。10R終了後、予選18位は6・00の井口佳典。中道善博さんが得点順位表を井口に渡すと、井口はまさにボーダーが自分だと知って「ワァオッ」と叫んだ。あと2レースを残した時点だから、下位の選手が勝負駆けを成功させたら、自分がベスト18からこぼれ落ちてしまうのだ。4Rでなんとかなんとかノルマをクリアしていたはずだったのに、急転直下、崖っぷちに立たされたのだから、「ワァオッ」と叫ぶのも当然だろう。結果は、17位での予選通過で胸をなで下ろしたわけだが、最後までヒヤヒヤさせられたのではないだろうか。井口、とりあえずひとつの責任は果たした。
DSC01551  西島義則も、やや柔和な表情になっていた。スタート展示から一歩も引かない姿勢を見せた10R、本番では3コース発進となったものの、2着に食い込んでの予選通過だ。レース直後は戦いが終わったあとの興奮があったように見えたが、着替えてモーターを格納する頃には、かなり穏やかな顔つきに戻っていた。明日はまた、とびきり厳しい勝負師の顔を見せるに違いないが、まずは準優進出を喜んでいるといったところだろう。こういう西島も実に魅力的です。

DSC01532  ベテランの風格を漂わせていたのは瀬尾達也。得点率6・00の16位で予選通過、きっちり帳尻を合わせたというところか。何しろ、今節の最ベテラン。くぐってきた修羅場の数は、若手たちの比ではない。だから、ピットでの瀬尾は常に慌てず騒がず。きっちりと自分の仕事をこなし、一節間を戦い抜く準備を着々と重ねている、といった風情なのだ。渋い。実に渋い。というわけで、準優進出を決めたと言っても、いつもと変わらず穏やかな表情。準優は6号艇だが、今節の平均STコンマ12という、日本一のスタート屋の本領を発揮すれば、決して侮ることはできない存在だろう。
SANY0335  仲口博崇は、実にスッキリした顔をしていた。前検ではモーターの不調を嘆いてもいたが、初日2、2着と好発進し、ついには準優進出まで果たした。やるだけのことはやった、しかも結果が出た。爽快な気分になって当たり前だろう。12R終了後、原田幸哉とともにリプレイを見たあと、小声で何事か話し込み、突然声を張り上げて大爆笑。原田と大笑いし合うのだった。仲口といえば、準優、優勝戦では、こちらまで身が引き締まりそうなほどに、強い気合乗りを見せている。明日もおそらく、そんな仲口にお目にかかれるのだろう。このリラックスが、明日の気合のスパイスとなるのだ。
 
DSC01560  今日も明るい今村豊。4R出走後にペラの調整とチェックをし、それを終えるとのんびりと過ごしていた。12R前には、取材班がいつもお世話になっている長嶺豊さんとダブル豊で話し込んでいる姿を発見。MB記念の「特注選手・海野ゆかり」で長嶺さんに格別のご高配を賜った取材班・松本が写真を撮ろうと近づいた。すると長嶺さんが、近くにいた評論家の清水克一さんと福永達夫選手(選手会理事長として来場されてました)を指差して、「この人たち、指名手配犯だから撮ってやってください」と笑った。DSC01562 すると、今村、「僕は違うから、抜けなきゃ」と、その場から一歩後ずさり。松本が「せっかくだから、ご一緒にお願いします」と言うと、今村は笑いながら写真に収まった。写真は、左から今村、福永選手、清水さんです。で、今村、「これが未来の選手会ですから。僕が会長になって、この人たちを雑用で使ってあげます」。福永選手も清水さんも大爆笑。言うまでもなく、二人とも今村にとって大先輩です。元気いっぱいの今村、本当に素敵です。今節、登番は二番目に古いベテランなわけだが、いちばん冗談を振り撒いて、はしゃいでいるもんなあ。

  さて、更新のために記者席に戻ってキーボードを打っている間も気になって仕方がない山崎智也。1回乗りの10R、なんと6着に敗れてしまった。準優は当確だったから助かりはしたものの、さすがに肩を落とす智也。仲の良い原田幸哉と顔を合わせると、苦笑いしながらうなだれて見せた。笑いながら肩を抱く原田。智也のほうが先輩なのに、すっかり原田に慰められていたのでした。この二人、本当に仲良しで、よく談笑したりふざけあったりする姿を見かけます。
SANY0348  12R前、ボートに残った水分を拭き取っていた智也。僕はツツツツッと駆け寄って、声をかけた。「明日は3号艇になりそうですが(実際、10R3号艇になりました)」「はい、明日はしっかりコース取ります。頑張ります」。うぉぉぉぉぉ、コース取りますかぁぁぁぁ! 今日の10Rも3号艇だったが、スロー5コースに出されてしまった智也。同じ轍を二度と踏まないとの決意表明だ。明日の10R、うがっ、今日の10Rと同じく5号艇に西島義則、またもや前付けは必至だが、最低でも今日のように不利なコースを取らされるという事態はありえない。今日の失敗があったからこそ、むしろ明日の気合が膨らんだ、ということだ。心中しちゃおっかな、10R。
SANY0349  で、だ。話を聞いた後、またまた写真をパチリ。僕はお礼を言って、その場を離れた。そこに松本がやって来て、取材内容の確認をし合っていると、そこに智也が近づいてきた。そして!「もう一度、こっちで写真撮って」と、智也のほうから声をかけてきたのだ。つまり、先ほどの写真もいいんだけど、どうせだったら撮ってほしいカットがある、ということらしい。僕がもちろん「はいっ!」と返すと、智也はおもむろに来ていたシャツを脱ぎだした! Tシャツ姿になった智也は、デザインされたロゴが目立つように、胸を張った。そして改めてパチリ! これ、最近通い始めた整体所のオリジナルTシャツだそうだ。そういえば、グラチャンで腰を痛そうにしている智也を目撃した。再発しないよう、体の手入れをしている、というわけだ。控室に向かおうとした智也の背中に思わず、「腰、大丈夫ですか?」と聞くと、振り向いた智也は「はい、大丈夫です。ありがとうございます!」と最高の笑顔を見せて、立ち去っていった。よしっ、腰にも不安ナシ! 明日はすんごいレースを見せてくれるはずだ! それにしても、智也の笑顔、まさしく100万ドル級であります。(黒須田守)


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しげ爺の全日本選手権予想 (5日目) 【しげ爺の競艇予想】
管理人のしげ爺じゃ。 4日目の結果は、3連単予想(穴)と2連単予想(穴)がプラス収支じゃった。 なんとかプラス収支の予想が出来て良かったわい。 しかし、本命予想が当たってこそ予想師ってもんじゃからもっと頑張らんとな。 4日目のまあまあな結果は下記のリンク... 続きを読む
受信: 2005/10/29 4:16:45
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