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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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紛れもないSG空間だった――賞金王シリーズ、優勝戦のピット

SANY0617 「ダーーーーーーッッッッッ!」
 ピットに帰り着くずいぶん前から、池田浩二は雄たけびをあげていた。愛知勢をはじめとする東海地区の仲間たちの出迎えを受け、池田は右拳を天に突き上げる。そして再び「ダーーーーーーーッ!」。ついにはボートの中で立ち上がって、ダーーーーーーーーッッッッ!(勢いあまって、後ろに倒れそうになってました) 池田は何度、叫んだだろうか。さまざまな選手が次々と祝福し、そのたびにダーーーーーッッ! 賞金王決定戦の2レースのみを残していたピットは、すでに静けさをたたえ出していた。だから、池田の咆哮は、ピットに響き渡って、こだました。歓喜の余韻がいつまでも、ピットに漂い続ける。これほどまでに、ずっとずっと喜びを爆発させ続けるSGウィナーは、7度のSG取材のなかで初めて見た。
 池田、おめでとう!

SANY0618  レース直前の6選手は、それぞれに落ち着いていた、と思う。いちばん気になっていた作間章も、多少の緊張はあっただろうが、昨日までとそれほど変わらない堂々たる雰囲気だった。レース後もまた、作間はごくごく自然に振舞っていた。悔しさを噛み締めながらではあっただろう。結果が出なかったことへの不満もあるだろう。それでも、うつむくことなくレースを振り返っていたことは、立派である。敗れはしたが、これがSGという舞台に名を刻むステップだと思えば、最高の経験となったはずである。萎縮することなく戦いを終え、胸を張ってピットを後にできたのだから、今後の飛躍は約束されたようなものだ。来年の作間にも、もちろん注目したい。

20051223_2_001 意外と淡々としていたのが、倉谷和信だ。レース前には、怖いくらいに目つきが険しくなっていたが、レース後にはすっと優しい目になっていた。もちろん、2着という結果に満足しているわけではあるまい。果たせなかったSG制覇、その悔恨は大きいに決まっている。だが、出てしまった結果をいつまでも引きずらない、そんな潔さが倉谷にはあったような気がする。選手代表という重責もあわせて、お疲れ様でした。着替えをすませた倉谷にそう声をかけると、倉谷は「どもっ」と頬を緩めた。男っぽい姿だと思った。
 平尾崇典も、サバサバとしていた。表情をピクリとも変えず、無言でモーターの返納に向かう姿は、ある意味、大物の素質アリ、だ。

20051223_10r_004   アッサリとした表情ながら、皮を一枚むけば悔しさがドバッとあふれ出しそうに思えたのは、瀬尾達也である。本番は3コースまでしか入れなかったが、スタート展示では敢然とインを奪った瀬尾。ほら、やっぱり「意欲はありません」は逆説だったのだ。その意欲が結果的に空回りしてしまったことで、瀬尾の心は苦渋で埋め尽くされた。普段は、ベテランの貫禄を見せている瀬尾も、やはり勝負師。いや、トップレーサーの一人として長年戦ってきた誇りがあるからこそ、この優勝戦の重さに敏感になれたはずだ。SGにやってくれば、最ベテランであることが多くなった瀬尾だが、チャンスはまだまだ、まだまだ、まだまだある、そう信じたい。レース後の瀬尾は、それくらい若々しかったのだ。

SANY0639  表彰式から帰ってきた池田をもう一度出迎えたのは、原田幸哉である。原田の姿を見た池田は、もう一度、拳を突き上げてみせた。池田の心を占領した歓喜は、永遠に続くのか。そう思えるほどに、池田は笑って笑って、叫んで叫んで、歓び続けた。
 賞金王シリーズが賞金王決定戦の前座のように扱われるのは、ある意味、仕方のないことだ。だからこそ、シリーズ組は来年こそベスト12に食い込んでやろうと、決意を強くするところもあるだろう。だが、戦う選手たちにとっては、これも紛れもないスペシャル・グレード・レース。少なくとも、優勝戦はクッキリとSGの顔をしていたと断言できる。その意味で、今日の10R以降は、あまりに贅沢な空間であった。(PHOTO/SHIGEYUKI NAKAO<倉谷、瀬尾>+黒須田 TEXT/黒須田守)


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