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ボートレース特集 > はばたけ!金田諭⑤
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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はばたけ!金田諭⑤

SANY0868  ひたすら首を捻るだけだった。わからない。思うような足が来ない。ただただ、首を捻る金田諭。今日は、僕の顔を見ても、笑顔はまるでなく、力のない渋面を作るのだった。
 レースの合間は、明るい金田がいる。関東勢と談笑したり、10Rで勝利をあげた中野次郎と何事か小声で話して、ニッカリ笑ったりもしている。そんな金田を見ると、少しばかりホッとするのだが、それだけにレース後の影を落とした表情が気になる。
 敗れて悔しいのは当たり前。勝負師として、そうでなくてはならない。それでも、日々すり減っていくレース後の明るさは、痛々しくもある。これが、予選道中であるならまだしも、準優への望みが断たれて、今日は一般戦を戦うというのに、苦悩のパラメータが上がっていく一方なのは、やはり放っておけないことだろう。
「これまでは楽しんで参加してましたが、(新鋭卒業となる)今回はそれではダメでしょうね」
 初日に聞いた言葉が、じわりと輪郭をクッキリさせて、脳裏に甦ってきた。
 本来、いわゆる敗者戦では、準優組や優勝戦組のような勝利への渇望は、落ちるはずである。もちろん、戦いに臨む以上、彼らが敗れても良いなどとは考えているはずがなく、どんなレースであろうが1着を目指す思いは変わらないはずだが、それでも一般戦と準優、優勝戦では、勝利の重さが違う。事実、勝者の歓喜、敗者の悔恨は、準優、さらに優勝戦のほうが圧倒的に大きいのもたしかである。
SANY0817  しかし、今節の金田はそうではない。一昨日よりも昨日、昨日よりも今日のほうが、敗戦への落胆をより大きくしているのだ。
 1着が出ないことへの苛立ちなのか。それとも……僕に語った自分の言葉に責任を取ろうとしているのか。後者だとしたなら、彼がこの2年間で身につけたはずの逞しい精神力に、慄然とする思いである。
 気落ちしないで、頑張ってください。そう言った僕に、金田は微妙な声色で、「そうですね」と言った。灰色に染まってしまった心に、「気落ちしないで」という言葉が引っかかった。そして、我に返って、力強く応えようとした。だが……完全な光明は心に戻り切らなかった。そんな感じの口調であった。
 ともかく、だ。明日の2Rで、金田の新鋭王座決定戦は終わる。渾身の勝負を見せる。それだけは間違いない。金田にとって、明日は総決算。そして、僕もまた、金田への思いにきっちりと答えを出さねばなるまい。最後の戦いと、その奥底で燃える感情を、明日の2R、一滴も見逃さずに見つめたい。(黒須田守)


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