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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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新鋭王座ベスト・パフォーマンス4日目

 さすがに勝負駆けデー。4日目はさまざまなドラマがありました。まず嬉しいエピソードは、4Rでピン条件だった石橋道友が気合いのイン逃げで自力当確。さらに節間5・80で結果待ちだった江夏満が滑り込みセーフ。ふたりとも、おめでとうございます!
 逆に涙を飲んだ選手もおりました。唯一のSGウイナー笠原亮が6着轟沈で終戦。圏内で踏ん張っていた地元の松江秀徳がよもやの転覆失格……4日間、お疲れさまでした。
 そして、勝負駆けとは無関係にまたまたコンマ02で主催者をドッキリさせた吉田カクロー。あんたはホンマもんのドアホや~~!!
 というわけで第3位。この人も、ひょんな勇み足から涙を飲むことになりました。ひそかに敢闘賞をプレゼントさせていただきます。

9R/亮太スペシャル、減点7に散る!

SANY0695  洞口スペシャルも真っ青のスーパー出足ペラ「亮太スペシャル」を発明した中村亮太25歳、奮闘及ばずV戦線から脱落してしまいました。今日の9Rは3号艇から進入でもたついて5コースへ。自慢のペラで果敢に攻めましたが、さすがに1マークは遠く4着止まり……これで節間成績は153144。本来ならピッタリ6・00で準優当確の勝率です。でも初日10レースの不良航法による減点7点が最後まで響き、残念ながらベスト18に残ることはできませんでした。
 本人もさぞや無念でありましょう。しかし、この予選の4日間に亮太が辿った航跡と功績は、計り知れないものがありましたよね。なんといっても亮太スペシャルの破壊力! 1マークを回ってすぐにグイイイインと相手を突き放し、そのままシュルルルルと伸びる。試運転でもレースでも、あの鬼脚を見ているだけでワクワクしたものでした。競艇学校時代に亮太を育てたO野教官(当時)は、こう回顧しています。
「不思議な子で、あまり他の生徒とは交わらずに、いつもぼんやりと何かを考えているような生徒だった。それなのに、モンキーは禁止!と通達すると真っ先にその言いつけを破ってモンキーをしたり(笑)。何を考えてるのかよくわからず、手を焼いたもんですわ」
 つまりは個性派、そんな独創的な性格だからこそ、亮太スペシャルを生み出すことができたのだと思います。大体、亮太スペシャルそのものが、つかみどころのないヤンチャなペラだし。亮太の性格がそのまま投影されたペラといえるでしょうね。
 さらには初日の鮮やかな逃げきり、3日目の自力のまくり差し、この節間の2勝はペラの力だけではなく、レーサーとしての高い資質を見せつけるものでした。
「亮太スペシャルばかりが全国で名を知られたので、今節は中村亮太の名を知ってもらいたい」
 開会式で亮太はこんな宣言をしておりました。はい、その目標はかなり高いレベルで達成できたと思います。長崎支部は「スター不足の支部」などと揶揄されているようですが、なんのなんの中村亮太ここにあり。胸を張って、明日以降もスペシャルの破壊力を見せつけてくださいまし。

 続いて第2位は、新鋭ならではの熱い友情物語。6レースで87期見事にワンツーを決めた87期のこのふたりに捧げます。

6R/鉄壁の「同期ライン」で準優突破!

SANY0652  このレース、1号艇の妹尾忠幸と2号艇の出畑孝典は87期の同期生。ただ、それぞれの立場はまるで違いました。妹尾は予選落ち確定で、出畑は2回走りで12点が必要な勝負駆け……残酷なようですが、勝負ごとにつきものの明暗です。ふたりはそれぞれの思いを胸に秘めて、枠なりの1、2コースに入りました。
 そしてスタート。妹尾はコンマ10、出畑はコンマ09としっかり踏み込みましたが、絶好調の丸岡正典が3コースからそれを上回るコンマ06! しかもスリットからグイッと突き抜ける勢いです。ターンスピードでも一日の長を誇る丸ちゃんのこと、本人も一気にまくるつもりだったはずです。
 その時でした。インの妹尾が、丸岡よりも迅速に舳先をターンマークに向けたのです。
「丸岡さん、悪いけどまくらせませんよ!」
 そんな鬼気迫るような全速インモンキー。丸岡はこの強気な先マイに、オッと驚くような風情で減速し、それから妹尾の外を抱きこむようにして旋廻しました。その間に、しっかりと差し抜けたのが出畑。スルリと2艇身ほど先行した黒いカポックが、「妹尾、サンキュ!」と言っているように私には見えました。
 もちろん、妹尾が出畑に勝ちを譲ったわけではありません。まくりに抵抗するのはイン選手の務め、スリットから覗いた丸岡を先マイで牽制し、差す出畑とのバック勝負というセオリーに徹したインモンキーでした。ただ、そのセオリーのもっと深い部分に「このまままくられて出畑も道連れにするのは、絶対に嫌だ」という思いがあったとしても不思議はないでしょう。
 出畑に差されるは仕方がない、でも丸岡さんにだけはまくらせない。
 競輪でいうところの「ライン」が、私の目にはっきりと見えました。たとえ自分が死んでも仲間を生かす、無駄死にだけはしないぜ、という心意気がひしひしと感じられる先マイでありました。
 結果は1着・出畑で2着が妹尾。出畑は後半の11レースで4着に敗れましたが、この1着が大きくモノを言って見事に予選突破を果たしました。その陰に、同期・妹尾の豪快なインモンキーあり。地味だ地味だと言われる87期ですが、いざ予選を終えてみれば5人が準優に駒を進めています。「花の85期」の3人を上回る、期別最多の5人突破! スター選手が不在の87期だからこその結束力が、この予想外の活躍の原動力だったような気がします。
 そして出畑をはじめとする準優組5人は、予選で散った同期の分まで、いや同期とともに明日の勝負に臨むことでしょう。
(ちなみに最終レースでも85期の高沖&丸岡が艇番のままのワンツー決着を果たし、高沖が準優のキップを手にしていましたね)

 そして、勝負駆けデーでもっとも光り輝いたのが、このA2選手。多大なプレッシャーに耐えてひたむきに走り続ける姿は、ベスト・パフォーマンス賞に相応しいと私は思います。

11R/怒涛のパワー逃げで予選ナンバー1!!

SANY0766  岡部大輔選手は期勝率5・87のA2選手なんです(これまた87期)。それが、昨日まであれよあれよのオール3連対でシリーズを引っ張る存在になりました。そして今日は11レースの1回走りで1号艇……私は、このレースで岡部が逃げきるのは、かなり難しいと踏んでいました。理由はふたつ。
①すでに準優当確を決めていて、怖いのはスタート事故などアクシデントだけ。大事に走りたいという思いが強いはず。
②唐津在住というピュアな地元だけに、プレッシャーは計り知れない。さらにイン戦は「自分との戦い」という強いメンタリティが作用するので、その膨大なプレッシャーに押し潰されるかもしれない。
 このふたつの要因は、SG常連のレーサーでもたびたび手元を狂わせます。今シリーズの初日にGⅠの水神祭を飾ったばかりのA2選手となれば、なおのこと。平常心で走るのは困難だと思ったのです。
「モーターさまさま、自分の力というよりモーターが連れて行ってくれてるだけです」
 今節、岡部はことあるごとにこう吐露しています。確かに22号機は強力で、前節の今泉和則(予選で落水しながら圧勝V)あたりから、すでに怪物級。私の見立てでも、前検から「節イチ」評価を与えています。
 でも、GⅠの後半戦ともなれば、パワー頼みだけでは勝てません。選手の技量と強い精神力が要求されるのです。
 岡部がこの準優当確の1号艇で、自分らしいレースができるか。
 私はこの11レースを静かに見守っておりました。そして、やはりというべきか、岡部は起こしの段階で少し遅れ、スリットでも2コースの表憲一より半艇身以上後手を踏んだのでした。
 あ、やっちまった!
 危惧していた事態が起こったのです。が、そこからが凄かった。全速でスリットを通過した岡部22号機があっという間に伸び返して表に並び、さらにあっという間に先マイから先頭へ……まさにスリットでの遅れを忘れるほどの電光石火の逃走劇!
 このレースは、完全な自力勝ちとは言えないかもしれません。岡部自身も、これまた22号機のおかげと思ったはずです。でも、岡部はとても貴重な経験を積むことができましたね。今までにないプレッシャーを肌身で感じ、畏れ、失敗し、反省した。勝ち負けの結果よりも、この一連の心の動きが、岡部を逞しくしたと思うのです。昨年の賞金王決定戦で、辻栄蔵がトライアルのたびに強くなっていったように。
 最終レースが終わって、岡部大輔の予選トップ通過が確定しました。明日もまた1号艇。それも、地元の準優という心臓が飛び出るような舞台での1号艇です。今日のようなスリットでは、勝ちきることは不可能な舞台でもあります。
 岡部は、このプレッシャーに打ち勝つことができるか。今日の経験と反省が、どれほど通用するか。
 もちろん、それは私にはわかりません。ただ、オリンピックで彗星のように現れて優勝をさらう選手がいるように、若者は時に想像を超えて爆発的に成長するものです。少年三日逢わざれば、剋目して待つべし。岡部のレーサー人生最大のイン戦を、スタンドの片隅から見守ることにいたしましょう。(畠山)


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