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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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新鋭王座優勝戦 私的回顧!

それは、死闘だった。

SANY1105  あえて、ふたりの選手に絞って書かせてもらう。中野次郎と岡部大輔。素晴らしいマッチレースだった。両者の「負けたくない、負けられない」という思いを加味すれば、死闘と言ってもいいだろう。
 進入は123/456。スタート展示では次郎が抜群のピット離れからインを奪取したが、さすがに本番では岡部が譲るはずもない。枠なりですんなり収まり、スリットを通過したときには内2艇が抜け出していた。特に岡部は渾身のトップS(コンマ05!)。
 逃げたっ!
 俺だけではなく、誰もがそう思ったはずだ。岡部の22号機は節イチの怪物モーター。次郎の52号機も高いレベルで仕上がっていたが、出足、伸び、回り足ともほんの少しずつ岡部に分がある。1マークを一目散に目指す岡部。追いすがる次郎。岡部がターンした。ほとんど全速と思えるインモンキー。しっかりとブイも捉えている。22号機が唸る。並の相手なら、回った瞬間に3艇身は突き放してしまうターン。
SANY1033  だが、次郎の差しハンドルはすでにSG級なのだ。ブイのはるか手前で舳先が真横を向いていた。逃げきったか、差したか……!? 2艇が旋廻した直後に、それはわかった。次郎が岡部の内に完全に潜り込んでいる。2艇が並び、岡部がやや流れた分だけ次郎が先行する。内外の関係もあって、圧倒的に次郎が有利な立場になった。しかし、岡部の駆るモーターは22号機なのだ。岡部が艇を外に振って、差しの体勢に入る。次郎が焦ってターンマークをはずせば、再び立場は逆転する。
 2マーク。次郎のターンはあまりにも完璧だった。ブイに艇側をなすりつけるような、緻密にして素早いモンキー。岡部に差し場は与えられず、ここで力尽きた。第20代の新鋭王座が決まった。
 中野次郎の負けられない理由。それは、このレースを勝てば、地元・平和島での総理大臣杯のチケットが手に入るから。次郎は去年の若松MB記念に平和島の推薦で参戦し、予選道中でFを切った。次郎からすれば、平和島の顔に泥を塗ってしまったわけで、何としてでも自力で恩返しをしたい。そんな思いの詰まった渾身の差しであり、完璧なターンだった。
 表彰式の次郎に、涙はなかった。去年は準優勝、SGの舞台も経験してきた次郎にとって、この優勝は通過点。そんな余裕さえ感じられた。この1年でSGを獲れるだけの器に成長したのだ。

心に勝って、勝負に負けた

 一方の岡部は、次郎よりも「負けられない」という思いが強かったかもしれない。岡部について、ここで少し詳しく記しておく。
 岡部大輔という名前は知っていたが、レースを見たことがなかった。だから、特別な思い入れとてあるわけもない。が、前検日の足合わせを見ていて、その存在が急に大きなものになった。誰と回っても、1~2艇身ほど引き離す。鳥肌が立つような足だった。この時点では岡部大輔というより、22号機に一目惚れしたわけだ。
DSC00104  それからの岡部の活躍は、ここで書くまでもないこと。22号機のモンスターパワーを駆使して、岡部は節間のリーディング選手になった。俺としては、「今になってみんながチヤホヤしてるけど、この宝物をいちばん最初に見つけたのは俺だぞ!」なんて自慢したい気分だった。その間、彼に関する情報もちらちらと耳に入ってきた。
 唐津に住んでいる純地元選手。
 今まで一般戦でも優勝したことがない。
 GI戦も今回がはじめて。
 尊敬する人物は織田信長。その理由は「天下統一したから」(実はしてないけど)
 などなど。こんなことを知りながら日々の活躍を見ていたわけだが、3日目が終わって準優の当確ランプが点灯したあたりから、俺はいささか不安になってきた。何しろ、優勝経験のない選手がいきなりGⅠの主役に立たされたのだ。しかも地元で。このプレッシャーはSGレーサーには当たり前でも、岡部にとっては今まで味わったこのない重圧に違いない。胃が軋むような日々に、果たして岡部が耐えられるのか。老婆心ながら、勝手に心配していた。前検で一目惚れしてから、なんだか育ての親のような気分になっていわけだ。
 だが、4日目~準優まで、岡部は自力でそれらの重圧を克服した。どちらもイン戦でのピンピン。俺はその精神力に舌を巻きつつ、「それでも優勝戦はメンバーも雰囲気もまるで違うぞ。それに打ち勝つだけの精神力がお前にあるか?」と心の中で岡部に問いかけていた。
 そして優勝戦。GⅠで、地元水面で、1号艇で、1番人気で、同期もいなくて、他に地元の選手もいなくて、メンバーSG常連の猛者たちが揃って、一般戦でも11優出してすべて辛酸を舐めている優勝戦……数えたらきりがないほどの「負けられない」要素を背負って、岡部はこの孤独な大舞台に立った。結果は2着。勝ちきれなかった。
 この結果をもって「岡部がどれほどの器か」を論じるのは読者に任せよう。ただ、凄まじい負荷を背負ってのコンマ05のスタートは、並の精神力ではできない芸当だと俺は思う。
「スタートは少し放ったが、満足しています。ただ、1マークで少し余裕があった分だけ握りすぎました。悔しい、すごく悔しい」
 レース後、岡部はこうコメントしてから泣き崩れたという。今日は思いきり泣きたいだけ泣けばいい。敗因ははっきりしている。経験と技術の差、一言でいうなら力の差で負けた。ここには明確な反省材料と将来への課題がぎっしり詰まっている。泣くだけ泣いて、明日からその課題と真剣に向き合えばいい。そして、今日の優勝戦で「心」では負けなかったことを誇りに思ってほしい。これから駆け上がるであろう舞台で、何よりも大事なのは心の強さなのだから。
SANY1094  中野次郎、おめでとう。岡部大輔、お疲れさま。素晴らしい1マークを、ありがとう。(畠山)


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第20回新鋭王座決定戦最終日! 【GO!GO!GO!中野次郎!】
まずは font size=5中野次郎選手優勝おめでとう!/font スタート展示から1コースを奪い取るなど、 1号艇岡部選手にプレッシャーをさらにかけるところはさすが…。 本番は枠なり3対3でイン2艇が好スタート。 でも昨日書いたとおり、岡部選手は1マーク微妙に流れてしまってそこを次郎君の差しハンドルが炸裂! 岡部選手の鬼モーターにひけをとらない素晴らしい伸びもあって、1周2マークを冷静に回ってほぼ優勝決定。 2着は1マーク差されながら..... 続きを読む
受信: 2006/01/30 10:33:28
コメント

競艇の世界はよく知りませんですが、ほほぉ~、へへぇ~と、おもしろく読んでいます。でも分からない単語だらけなので、若葉マーク初心者用の、解説コラムもあるとありがたいです。畠山氏、お元気そうでなにより。ほかでも読めるところがあったら教えてください。

投稿者: 誤爆 (2006/01/30 10:37:13)
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