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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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穏やかに、準優へ――4日目、午後のピット

SANY0765  ポカポカポカ。温かい。室内仕様のピットは、窓から午後の陽が差し込んでいて、記者席からピットまで歩いて到着すると(おおよそ徒歩10分です)、額にうっすら汗がにじむほどだ。穏やか~~な午後。レースとレースの間にぼーっと突っ立っていると、おっといけねえ、あくびが出てしまった。あわててかみ殺して、選手の姿を目で探す。うーん、ほとんど見当たらない。うむ、この緩やかな空気に身を任せるか……。
 と、「本当に勝負駆けの午後なのか?」と疑いたくなるほどに、ほわほわとしていたピット。9R終了後にはベスト18の大勢が判明していたこともあるだろうが、時間を追うごとにむしろ、穏やかさの層が厚くなっていったのは、なんだか不思議な感覚だった。

SANY0768  そんな空気を象徴するかのように、笑顔を爆発させたのが、岡部大輔。11Rをイン逃げで決めて、シリーズ3勝目。堂々の予選1位! 12Rの中野次郎の結果次第では、2位となる可能性もあったが、11Rの時点で準優1号艇は確定。それだけに、地元勢も歓喜の声を上げて、岡部を祝福した。準優勝戦を1着でクリアしたシーンだと言われても納得してしまうほどの、興奮ぶり。特に印象深かったのは、やはりというか、選手代表の小野勇作で、彼自身は予選を突破することができなかったが、かわいい後輩の快挙を我がことのように歓んでいた。GⅠ初出場の岡部にとって、明日はプレッシャーと緊張感に包まれる日になるだろうが、仲間たちがきっと彼をほぐしてくれる。今日の笑顔を明日にもつなげろ!

SANY0754  中村有裕も、予選ラストを1着で締めて、かなりホッとしているようだった。ピット内ですれ違ったり、近くで見たりしたときの雰囲気が、昨日までよりぐっと柔らかくなっているように思えるのだ。こうなったら、準優ともなれば彼の豊富な経験がモノを言う。2日目あたりは苦戦気味だったが、昨日の後半レースから2連勝と、リズムも上昇している。主役モードに入ったユーユーは、やっぱり怖い存在としか言いようがない。

SANY0762  井口佳典もまた、1着で予選を締めたことでご機嫌の様子。ドリーム戦以降、なかなか突き抜けられなかった井口だが、だからこそこの勝利は非常に大きい。彼の出走する10Rはかなりの激戦区であるが、今日の1着で手応えはつかんだはず。今節を通して、真剣な表情の多かった井口に、レース後は笑顔も見えていたから、精神的にも充実一途といったところだろう。その10R、新鋭卒業組は井口のみ。モチベーションも抜けているぞ!

SANY0749  尻上がりに調子を上げているといえば、吉永則雄だ。4着を2本続けて、やや苦しいスタートから、2着2本でリズムアップ。そして今日は1着! 予選10位とはいえ、勢いは負けていない。予選突破が確実となって、ご機嫌でピット内を歩いている吉永に、「よっ! おめでとう!」と声をかけたのは、長嶺豊さん。吉永、ただでさえ細い目をさらに細めて、「ありがとうございますっ!」と元気よく挨拶だ。大阪の大先輩とにこやかに談笑する姿に、貫禄さえ見え隠れするのは気のせいか。雰囲気的には、予選上位陣にまったく劣っていないように見えるのだが。

SANY0753  一方、露骨に悔しそうな表情を見せていたのが、郷原章平。初っ端から2連勝と最高のスタートを切りながら、10Rを迎えたときには1着条件にまで追い込まれていたのだが、それでもレース前は逞しさすら感じさせる表情を見せていたのだ。しかし、残念ながら6着。ガックリと肩を落として、先輩たちに渋い顔を向けていた。郷原よ、君にはまだまだチャンスがある。これを糧に、さらに大きな存在となって、ビッグレースを荒らしまくれ!

SANY0690  SGウィナーとしての意地が空転してしまった笠原亮は、すでに気持ちの切り替えができたのか、わりとリラックスして、レース後を過ごしていた。10R、ピット内のモニターで僕がレースを見ていると、つつつっと隣に立った笠原。僕が手にしていた出走表を覗き込む。そこで、僕がもう一枚持っていた、9Rまでの得点状況表を発見。「あ、こちらも見せてください」。どうぞどうぞ、ここに○をつけてる選手が、6・00以上が確定の選手です。それで、この印が、10R以降の結果次第で18位に入る可能性がある選手です。そう説明すると、笠原、フムフムと表を目で追い出した。SANY0757 と、何かを発見した笠原、「おっ」と声をあげる。「新太郎、可能性あるんですか!?」。同期の西川新太郎は、その時点で33位だったが、11Rで1着を取れば、5走29点にまで到達する。ボーダーが下がれば、ベスト18入りの可能性が充分あったわけだ。それを知った笠原、「よ~し、新太郎に空気入れてやろっ」と呟いて、西川を探しに行ったのだった。自分は残念な結果となったが、動機には頑張ってもらいたい! その思いが、笠原を走らせた。
 で、10分くらい後。西川の肩を抱く笠原を発見! ニコニコと笑う西川に、真剣な表情で何事かを訴えているのだった。西川が弱気なことを言ったのだろうか、「ダメだって! 大丈夫だって!」という言葉が聞こえてきたぞ。うーん、素晴らしき同期愛。西川、一発やってやれ! ま、結果は3着と残念だったけれども、西川も悔いなき戦いができたはずである。二人とも、明日以降も頑張れ。

SANY0755   なかなか落ち着かない時間を送っていたのは、江夏満。9Rを終わって、予選19位。10Rを終わって……やっぱり19位。準優進出選手は、JLCのインタビューを受けることになっており、聞き手を長嶺さんが務めていたのだが、その長嶺さんも「江夏、ごめん。まだ19位や」と気遣う。得点率5・80で、そもそも相手待ちの状況だったのだが、それでも次点となれば、やはり相手の動向が気になって仕方ないというところ。長嶺さんの言葉に、はい、と答えると、「あとは松江さん(11R)、高沖さん(12R)の結果次第ですね」と呟くのだった。
SANY0772  で、11R。松江秀徳がまさかの転覆。これで江夏は18位に浮上した。ボート吊りのため、揚降機に向かった江夏の表情は……やっぱり複雑そうだった。自分がベスト18に入るには、松江や高沖健太が大敗するしかない。それを望みつつも、しかし相手の敗退を願うのは、そもそもが複雑である。しかも、松江は転覆という事故にあってしまったのだから、歓べというほうが無理な相談だろう。幸い、松江は無事に帰ってきたが、江夏としては辛いところ。整備室内の掃除をしながらも、なんとなく浮かない顔の江夏だった。気持ちはわかるが、江夏よ、明日は思い切ったレースを! このチャンスをモノにするべく、豪快な走りを見せてください。

SANY0703  最後に、湯川浩司。今日も5着と大敗、どうにも流れが向いていない。昨日の時点で予選突破は絶望だったから、今日は肩の力の抜けた感じではあったが、しかしこのまま終わってしまっては、彼のプライドが収まるはずもない。僕がピットにいる間は、ほぼペラ調整室で懸命にプロペラと向き合っていた湯川。最後の新鋭王座だから、やはり気持ちよく締めくくりたい。そんな決意が、真っ直ぐな瞳から溢れ出ているようだった。明日こそ、チッチキチーな笑顔を見せてくれ!(黒須田守)


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