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ボートレース特集 > はばたけ!金田諭④
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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はばたけ!金田諭④

SANY0712 「カーァァァァァッ! もぉうっ! カーァァァァァッ!」
 金田諭が、僕の顔を見た途端、雄叫びをあげた。ヘルメットを脱ぎながら、もう一度、「カーッッッッ!」と叫ぶ。
 翻訳すれば、「悔しいぃぃぃぃぃっ!」か。それとも、「チクショーッッッッッッ!」だろうか。レースから引き上げてきて、ここまで悔しさを爆発させた金田を初めて見た。

 今日は7R1回乗り。そして、1号艇である。「1本でも(1着を)取らないといけませんよね」と言った、その絶好のチャンスが今日、巡ってきた。金田が、自分の言葉をどこまで意識していたかはわからないが、とにかく有言実行を果たす格好の場となったことは間違いない。レーサーだったら、胸をたぎらせて当然の場面と言えた。
 ところが……トップスタートを切りながら、1マークで流れて、中村有裕の差しを許してしまう。それどころか、内にズバズバと入られて、最後は昨日に続くシンガリ負け。結果を出すべきところで出せなかった……自分を責めなければいられない、そんな結末であった。
「カーッッッ!」。もう一度言って、金田は身をよじらせる。並んで歩いていた僕に、体が触れる。そうして吐き出さなければ、とても心の安定は取り戻せない。そんな風情で、金田は己への不満を表現し続けた。表情は暗くはなく、むしろ苦笑いといった顔つきではあるが、それが余計に悔しさを際立たせている。悔しいっすね、言わずもがなのことを思わず口にした僕に、金田はクイッと首を縦に振った。

SANY0716  やるだけやったのだから、悔いはない。この常套句は、もちろん真実である。しかし、「悔い」と「悔しい」は違う。名詞と動詞の違いではない。「悔しい」を「悔しさ」としても、同じことだ。悔いとは、後から思い悩むこと。そして悔しい、悔しさは、結果が出た瞬間の、その結果に対する思いである。そして、悔いと悔しさは両立しない。悔いのないときにこそ、悔しいという思いが生まれるのだ。やるだけやった、だからこそ悔しい、のである。
 金田も、この7Rにやれるだけのことはすべて注ぎ込んだ。
「スタートもメイチ行ったんですけどねえ!」
 コンマ03。黄色いベスト確定のスタート。金田は、インからトップスタートで飛び出し、外の艇を完封して、勝利を奪おうとしたのだ。そして、スリットを超えた瞬間、それを現実のものとしかけたのである。金田は本気で、「1本でも取らないと」を実行した。ただ、そこから先が思うがままにいかなかっただけだ。
 失敗の要因は、いろいろとあるのだろう。そして、その失敗については、彼なりに検証もしているはずである。だが、僕は金田の“本気”を肯定したい。悔しさを全開にした金田を、称えたい。結果などどうでもいい……などと言ったら、金田に対して失礼にあたるが、そもそも結果はいつだって僕らの思いのままにはなるとは限らず、むしろ手をすり抜けていくことのほうが圧倒的に多いのだ。だからこそ、そこまでの課程、そして込められた思いを大事にしたい。GⅠの場で、自分の不足を徹底的に嘆くことができる金田であらば、なおさらである。“あの日”の金田だったら、ここまで自分を責めなかっただろうと思えば、やはり今日の金田は美しかったのだ。
 あと2日、リベンジを! そう言った僕に、金田は、心の奥底に溜まっているパワーをすべて込めたのではないかと思えるほど力強く、「ハイッ!」と応えた。今節、金田を追いかけようと決めた僕の引っかかりに対しては、もう答えは出ていると思う。あとは、望むべき結果への笑顔。これを見たい。最後の新鋭王座、まだまだ戦いは終わらない。(黒須田守) 


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