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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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優勝戦回顧

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①横西 奏恵(徳島)
②海野ゆかり(広島)
③淺田千亜希(徳島)
④日高 逸子(福岡)
⑤徳増 宏美(静岡)
⑥永井 聖美(愛知)

 前日までの追い風が、今日の4レースあたりから向かい風にかわった。浜名湖は、冬に追い風、夏に向かい風が吹くという。そろそろ、春が近づいてきたのだろう。
 この風の影響なのか、優勝戦までの決まり手は極端だった。「差し・まくり差し」が9回に対し、「逃げ」が1回しか決まっていなかったのだ。
 1号艇から逃げを狙う横西にとって、この風は文字通り逆風になる。さらに風以上に厄介なのは、女王・日高の存在。日高がインを狙ってくれば、深いインになるには必至。エンジンは快調だし、スタート感も冴えている横西だが、深ければ深いほど不安なのは間違いない。

 優勝戦のファンファーレが響き渡り、全艇がピットを離れる。早かったのは横西でも日高でもなく、海野。しかしインを奪うまでには至らない。
 少しでも内がほしいが、ピット離れが平凡だった日高は、海野の外を大きく回りこんででも内を狙おうとする。だが海野がこれを許さない。
「譲りなさいよ!」
「絶対に入れません!」
 2人の声が聞こえた気がした。意地とプライドがぶつかり合う。2艇は互いに譲らず、くっついたままで、コースに入っていく。海野が壁になったことにより、横西は想定内の深さの1コースに入ることができた。
「これならイケる!」
 横西は手ごたえを感じたはずだ。

2006_0305_12r_041  進入は1245/36。展示ではダッシュに入っていた徳増が、日高についていく形で4コース。展示はスロー進入だった淺田は、打って変わって5カドを選択した。
 各艇がスタートを起こし、大時計が12時の位置を指す。ファイナル6艇がスリット上に並ぶ。
 カド受け4コースの徳増がヘコんだ。逆にカドの淺田はコンマ16のスタートを切り、全速で行った。スタートタイミングこそ内の3艇に負けていたが、伸びはピカイチだ。グングンと加速して、内に切れ込んでいく。日高は飲み込める、海野も飲み込める、横西も飲み込む勢いだ。ダッシュを選択したのは正解だった。
「これならイケる!」
 淺田も手ごたえを感じていただろう。

2006_0305_12r_014  インの横西が素早くターンマークを回る。淺田はその外を豪快に回る。同じ徳島所属の先輩後輩1マーク対決……軍配は、わずかに後輩にあがった。横西がしのぎ切って、逃げを決めたのだ。ただその差はわずか。淺田はバックでジリジリ差をつめる。
 2マーク。もうすでに他の4艇は突き放されている。先マイの横西に対し、内から切れ込む淺田。だが、まだ届かない。2周目1マークでも、淺田は差そうとする。まだ届かない。
 これまでも、淺田の前には後輩の横西が走っていた。女子王座を制した経験がある横西に対し、淺田は無冠。今シリーズも、準優出を3日目に決めたのが横西なら、淺田は4日目で権利を確定させた。そして今もまた、横西が前を走っている。
 2周目2マーク。先に回った横西に対し、またもや淺田は差し。かなりイイ角度で入った。これなら逆転もある。場内がどよめく。しかし、ここで引き波にハマる。淺田の艇がバウンドした。

_2448  ヘルメットを脱ぎ、ウイニングランをする横西。「満面の笑み」とは彼女のためにある言葉ではないかと思うほどの笑顔。スタンドから、いくつも声援が飛ぶ。その声に、何度も手を振りながら応える横西。手を振る回数を数えてみると、20回以上も振っていた。瞳に光るものをためながら。本当に嬉しくてしかたなかったのだろう。
 横西が過去に制した99年女子王座決定戦は当時まだGⅡで、その翌年からGⅠに昇格した。横西は渾身の逃げで、先輩を振り切り、「GⅠ制覇」というひとつの大きな夢を〝かなえ〟た。そして3月16日。平和島でおこなわれる総理大臣杯。彼女はどのような夢をめざし、何を〝かなえ〟てくれるのだろう。

(PHOTO/山田愼二<1.4枚目> 中尾茂幸<2.3枚目> TEXT/姫園淀仁)


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