この特集について
ボートレース特集 > 4日目 勝負駆けベストレース
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

4日目 勝負駆けベストレース

 3日目終了時点で準優当確選手が4人。それ以外の44選手中、勝負駆けが31人という、大乱戦の4日目となった。ふつう4日目の1~2レースは敗者戦になるものなのだが、今日は朝から最終まですべてが勝負駆け。見ごたえのあるレースが目白押しで、なかなか3レースを選ぶのが難しかった。

 

3レース 『ギャンブル』

 6号艇・佐々木康幸以外の選手がすべて勝負駆けというレース。
 今日1回走りなのが2号艇・田中信一郎で、ボーダー6.00には3着が必須条件である。 残り4人は2回走りで、このレースが1走目。ボーダーには、1号艇・安田政彦が14点、3号艇・平尾崇典は16点、4号艇・中澤和志は14点、5号艇・鳥野賢太は12点が2006_0622_01_038必要であった。
 つまりどの選手も、
「絶対に1着が必要なわけではないが、絶対に大敗はできないレース」
 だったのである。
 アタマが必要ならギャンブルに出る。入着でよいのなら安全策をとる。人間誰しもそう考える。どの選手がギャンブルに出て、どの選手が保険をかけるのかを見抜ければ、今後の舟券にも役に立つ。そう思いながら、私はレースを観ていた。
 最初に厳しい状況に陥ったのは田中信一郎。ピット離れで大きく遅れをとったのだ。準優出のチャンスはココしかない。おそらく「2コースを取って、差す」と想定していたはずなのに、このままでは6コース進入が必至。そこで田中は、一か八かのギャンブルに出る。大きく回りこんで、コースを取りにいった。
 進入は123/546で固まった。展示と同じ進入スタイルだが、1・2コースは深い。そしてスリットでは田中だけが一艇身ヘコむ。ギャンブルは、完全に裏目に出た。
 3コースの平尾にとっては、願ったり適ったりの展開になった。けっこうな助走をつけている上に、隣がヘコんでいるのだ。平尾の〝まくり〟は、かなり勝算が高いギャンブルである。はずだった。
 1マーク。「ごちそうさま~!」とばかりに、まくる平尾。ところが「オレはエサちゃうぞ!」と安田が抵抗する。安田にとってはかなり勝ち目が薄いバクチだが、もう握って回るしかない。
2006_0623_01_358_1    平尾と安田は、アサリと鴫のケンカになった。6コースから〝漁夫の利・差し〟を決めたのが佐々木。2番手に浮上したのは、スタートで遅れた田中。悪手だと思われた2コース奪取が、結局のところ意味をもったのだ。
 しかし勝負はこれで終わらない。2マークで3番手を追走していた鳥野賢太が、狙い済ましたスイチの先マイ。この1点張り作戦が見事にハマり鳥野が大逆転。先頭が鳥野、2番手が田中、3番手が佐々木の順番で、ホーム水面を通過する。
 2周2マーク。今度は「お返しや!」と、田中が先マイに出て逆転。4番手を走っていた中澤もリスキーな鋭いターンを繰り出す。必要なのは2走14点。4着と3着では、このあとの運命が変る。しかし中澤のギャンブルは、艇がバタつき失敗する。

――なんのことはない。勝負駆けがかかった選手は、すべてギャンブルに出たのだ。当たり前だが、このメンバーでは保険をかけて勝ち上がれるほど甘くないということだろう。私の目論見は脆くも崩れ去った。
 1着になったのは、同一レースで天国と地獄を見た田中信一郎。2着は3番手からの先マイを成功させた鳥野。3レースからは、このふたりだけが準優に生き残った。
 ギャンブルに勝った彼ら。明日はどんな華麗なベッティングを魅せてくれるのだろう。

 

  

4レース 『異次元ボート』

2006_0623_12r_012_1  チルト+1・5。驚異の伸びを、日刊スポーツは「ハイパー伸び」と表現した。でもこの表現では物足りない。「アルティメット・ゴールデン・スペシャル・ハイパー伸び」と、特撮ヒーローの必殺技のような名前をつけたくなる。そのくらい、矢後剛の伸びは飛び抜けている。大袈裟だがあえていう。モーターボートではなく異次元の乗り物みたいだ、と。 展示でみせた伸びにファンは驚き。6.54のデバサイの展示タイムにどよめく。おそらく同じレースに出走する選手も、ファンと同じような心境だっただろう。そして選手の心境が、不思議な現象を作り出す。
   スタート展示は13564/2だった。矢後の単騎ガマシ濃厚な体勢である。ところが本番では、進入がかわった。矢後はいつものように、ピット離れで遅れ、外に進路をとる。ここで5号艇の菊地孝平がアウト5コースを選択した。
 ここまではよくある話だ。しかし、ほぼ体勢が1346/52に固まったと誰もが思ったとき、おもむろに6号艇の原田幸哉が回りなおした。
 4コースからの回りなおし。しかも大外には矢後がヘバりついているので、6コースには入れず5コースに入ることとなった。あまり見られる光景ではない。
 展示でみせた5対1の進入が、結局134/562の3対3に変化してしまったのだ。 まあ、そんな進入とは一切関係なく、矢後はやや遅れ気味のスタートからギュイーンと伸びて、あっという間にまくり差したわけだが。
 2番手追走の森竜也のモーターも悪くはなかった。しかし矢後に一度先頭に立たれてしまうと、もう巻き返しはきかない。森がターンマークで少し差を詰める。矢後が直線で引き離す。車にたとえるならば、森のモーターがハチロクで、矢後がランエボ。直線スピードでは話にならない。
「風が吹いた分、スタートが遅れた。いまのは展開がむきました」
 4レースの勝利者インタビューで、矢後は語っていた。明日の準優戦、もしスタートが決まったら、今の矢後にとっては、大外など取るに足らないハンデである。

 

 

11レース 『マッチレース』

2006_0623_11r_033   1号艇は西島義則。3日目終了時点での得点率が2位で、今日は2回走りで完走当確だった。それがあろうことか、1走目で選手責任の転覆をしてしまう。その結果、11レースで1着を取らなければ、得点率は6.00を超えられなくなった。「完走当確」から「1着条件」に転落したのだから、条件はかなりキツい。しかしインの鬼が1号艇に座っているのだ。難なく逃げ切って、再び準優出の権利をもぎ取る可能性は高い。
 2号艇は濱野谷憲吾。3日目終了時点で得点率は6位だった。しかし西島が落ちたので、ここで1着を取れば、準優1号艇が回ってくる公算が出てきた。総理杯・笹川賞と低調機に泣かされてきた濱野谷が、やっとマトモなモーターを引いたのだ。ここは絶対に西島を交わして、明日の1号艇を手に入れた。
 今日の早朝「絶対に負けられない戦いがある」としきりにテレビはいっていたが、浜名湖にも絶対に負けれらない戦いがあった。
2006_0623_11r_030  スリット。2コースの濱野谷がコンマ09のトップスタート。1コースの西島はコンマ12。しかし濱野谷は若干アジャストしていた。ターンマークへほぼ同体で突っ込んでいく。西島が逃げる。濱野谷が差す。サイドがかかった濱野谷が、立ち上がりでほんの少しだけリードをとる。しかし西島が再び巻き返す。ラップ状態でバック水面を通過する。勝負はもう、このふたりに絞られた。
 2マーク。こんどは内にいる濱野谷が先マイを打つ。差すのは西島。またもや2艇はほぼ同体。1周2マークは、内にいる西島が先マイ。濱野谷は差す。
 交互に繰り返される、先マイと差しの応酬。伝説のH7年賞金王決定戦のようなマッチレース。前の周回のデジャヴュのようなレース。このデッドヒートには飽きがこない。思わず私は、周回数を忘れてしまった。
 2周2マーク。濱野谷の先マイに対し、西島の艇は思ったほど伸びない。ここでレースが終わった。
 1着になった濱野谷憲吾は、狙い通り準優1号艇を手に入れた。
 2着の西島は得点率が5.83に下がり、万事休すかと思われた。が、12レースで波乱があり、17番目のイスにギリギリすべりこんだ。ありきたりな表現だが、このレースで魅せた気合が準優のイスをおびき寄せた。そうとしか思えないし、そうとしか思わないつもりだ。でないと、この名勝負がもったいない。

(PHOTO・中尾茂幸 TEXT・姫園淀仁)


| 固定リンク | コメント (1) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
コメント

ギャンブルというたとえは実に違和感を感じる。失礼ではないか。どの選手も1つでも上の着をすべてのレースで目指しているはず。そのために考えうる方法を瞬間瞬間で選んでいるだろうにギャンブルとたとえるのはいかがなものか。1着2着をギャンブルの勝者とする意図がわからん。のこりはギャンブルの敗者か?

投稿者: anonymous (2006/06/24 0:41:54)
コメントを書く




※メールアドレスは外部には公開されません