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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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今日のベスト・パフォーマンス・2日目

 今日2日目はイン選手が8勝とあって、やや淡白なレースが多かったのですが、それでも水上・水面下で様々なドラマが起こっておりました。まず第3位は、「意外性のカタマリ」ともいうべきこの方に!
 
灘の生一本、変幻自在の酔拳が炸裂!

2006_0621_9r_068  ふら~りふらふら、進入からスリットから何をやらかすのか見当も付かないのが安田政彦という選手。もちろん不発も多いのですが、今日はそんな「酔拳」がまんまとツボにはまりましたね。
 まずは3レース。6号艇の服部幸男が前付けに来ると、3号艇の安田は「ほい、どうぞ~」という調子でのんびりと明け渡し、4コースから服部をジャスト2艇身置き去りにして一気にまくりきってしまいました。不思議なことです。地元の大将にしてS勘が抜群の服部が、スリットでコンマ39。進入で入れ替わるときに服部に酒を勧めて「ま、座りなはれ」と肩でももんだような……とにかく、そんなへんてこりんな想像までさせるようなお人なんですよ、安田は。ちなみに、このレースの3連単は59820円でした。
 でもって2走目の9レース、5号艇。今度は6号艇の上瀧が前付けに出ると、ふらふら~っと上瀧にくっ付いて行ったかと思うと途中で失速して、実に半端な4コースのカド受けに……「や、安田さん、どんな作戦だったんスか?」とくらくら眩暈がするような進入でした。そして、またしてもトップSからまくりの態勢に入ります。そうはさせじと内で抵抗する智也。「じゃ、いいか」と減速する安田。
 その途端、何の接触もなくインの市川が艇を大きく振り込み、その上に智也や太田和美の艇が重なりそうになるという大アクシデントが……減速していた安田は、のんびりと事故現場の内側を素通りしていましたね。ま、これは間違いなく偶然なんですけど、安田の千鳥足のような飄々としたプレーに、周囲の選手まで酔っ払ってしまうような、そんな空気は持っているのですよ。ちなみに、このレースの3連単は60570円でした。
 2レース合わせて12万円……この大穴の立役者は安田でした。ほんっとに、不思議なんですから。さすがにポン酒の本場、兵庫で育った男。見ているファンまで悪酔いさせる?酔拳ぶりは、明日以降も注意が必要ですぞ~~ウイィ、ヒック。

 第2位は、酒とは無縁の義侠あふれる男気で酔わせてくれたこの若者に贈りましょうか。

2R/孝平、泣いてカポックを着る!

2006_0621_01_046  2Rの1号艇だった「服部一家の大政」こと、菊地孝平。見事でしたね。他艇より半艇身は早いコンマ08のロケットスタートから、影をも踏ませぬ仁王立ちの逃げ。昨日も書きましたが、これが地元の意地ってヤツですよ。
 で、レース後のインタビューで菊地は平然とこう言い放ちましたね。
「コンマ08ですか、もっと早いかと思ってました」
 つ、つまり、菊地孝平はコンマ05あたりを狙ってスリットを通過したのです。さすが大政、ちょっとやそっとのタッチSをやらかしてもビビるような漢(おとこ)じゃござんせん。「ふ~ん、08だったのか」みたいな精悍な顔に、私は心底シビれました、はい。
 で、さらに!このレースにはもうひとつ涙なくては語れない任侠裏話があるのです。午後、ピットから戻ってきたK記者がしみじみと語りはじめました。
K「今日の朝って、ファンサービスでドリーム選手たちの出迎えがあったじゃないっスか。でも、そこには地元・菊地孝平の姿はなかったんです」
私「ん、寝坊ですかな?」
K(丸くてでかい顔を真っ赤に染めて)「違いますよ!! 今日は2レースの出走じゃないっスか。でも、まだモーターは仕上がっていない。でね、水面でファンに迷惑をかけちゃいけないって、泣く泣く断ったらしんです」
私「ほほう、さすが大政ですな。でも、孝平に会えなかったファンはさぞかしガッカリしたでしょうね」
K「そこなんですよ! 孝平はね、断るときにこう言ったんです。『明日もあさっても出迎えます。だから、今日だけは休ませてください』って!! ど、どうですか!?」
2006_0621_8r_013  私はもう涙が喉やら鼻やらに詰まって、言葉を返せませんでした。ファンの財布のために出迎えよりも整備を選び、その償いとして出なくてもいい3、4日目の出迎えを引き受けたと……ファンの心のために……! そしてレースではコンマ08の超ウルトラ気合い逃げなんです。これまた地元ファンの声援に応えるために!! 菊地孝平、あんたって人は!!!! 
 どうぞ皆さん、泣いてください。そして惚れてください、孝平という漢(おとこ)に。 ついでに、もうひとつ書いておきます。今日の夕方、菊地孝平はK記者(『BOATBOY』の編集長でもあるのですな)に書きたてホヤホヤの『B・B』用のナマ原稿を手渡しました。整備やらファンのためやら、忙しい合間を縫って、手書きの原稿を書いてくれたのですよ。しかも内容も手抜きのない素晴らしい文面でした。嗚呼、この義理堅さ! 私、これから菊地孝平を「平成の大政」と呼ばせていただきます! ちなみにこの原稿は『B・B』8月号に掲載されますので、ぜひご一読くださいね(←ちゃっかり宣伝かよ!)

 そして、大政に触れた以上は、親分にも登場してもらわねば! 今日のベストパフォーマンスは、気合い一本で逆転の1着をもぎ取ったこの方に捧げましょう。

10R/引き波2本を蹴散らす清水次郎長差し!!

2006_0621_01_085  この10レースは、朝から楽しみにしていたのですよ。1号艇が地元の大将・服部幸男。3号艇には節イチパワー間違いなしの湯川浩司。コースの利か、パワーの利か。地元の意地か、新鋭の大胆さか……いったい、どちらが先着するのだろうか?と。
 で、本番は私の期待と興奮を十分に満足させるものでした。インの服部がコンマ18、そして5カドを選んだ湯川がコンマ17。超抜61号機の「キュイ~ンパワー」でスリットから抜け出した湯川が、服部を先に回して豪快にまくり差しました。服部は服部で、華麗なインモンキーで対抗します。バックでは1艇身差で、内の湯川がリード。で、その間に割って入るように追撃するのが池上裕次。
 もちろん、この態勢では内の湯川が圧倒的優位。自慢のパワーでぐいぐい引き離し、2マークを先取りしようとしました。そこに、不利な形勢から捨て身で突っ込んで行ったのが池上です。湯川はその池上を抱き込むようにして、メッチャ豪快に2マークをブン回しました。あるいは池上の突進を恐れてターンマークを外したのかもしれません。でも、私の目には、「ムフフ~、見たか、61号機の実力をををを!!」みたいな、ゴキゲンな超高速モンキーに見えました。昨日も書いた「最も危険な遊戯」ターン!
 そのとき、地元の雄・服部幸男はどうしたか。服部は2マーク手前で外に膨らんで十分なマイシロを取り、全速でブン回す湯川を横目で見つつ、さらに突進した池上をやり過ごしてから、満を持してブイすれすれを真っ直ぐに差し込んだのです。普通、2艇を待ってからの差しは届きません。タイミングが大幅に遅れる上に、2本の引き波によって減速を余儀なくされますから。
2006_0621_01_116  しかし、服部の艇はこの2本の引き波を蹴散らすようにして、力強く前進しました。流れる池上を瞬時に交わし、ターンマークを外した湯川の内側にピタリと取り付きます。ここで、勝負ありましたね。いくらパワー上位の湯川でも、浜名湖の水面を知り尽くした男にインサイドを取られては、なす術なし。その後も接戦が続きましたが、服部は湯川を常に引き波の上に乗せておりました。
 まあ、あの1周2マークで湯川がもっと慎重に回っていれば、服部の待機差しは届かなかったでしょう。ここ数年の服部はそんなケースが多く、ターンマークで差すたびに着を落とす光景を何度も目撃しています。
「どうした、服部!? あの強すぎるほど強かった服部はどこへ行ったんだ!?」
 と、地団太を踏んでいるファンもいることでしょう。実は私もそのひとりなのですが、今日の鋭角かつ俊敏なハンドルを見る限り、「服部はほぼ復調した」と確信することができました。服部のターンを鈍くさせた最大の原因は、2年前の右腕の大怪我なんです。服部自身「まだ60%……おそらく100%完治することはないと思う」と教えてくれました。ハンドルを切るたびに軋むような痛みが走るし、それ以前に力が入らないのだと。
 でも、今日のターンはそんな痛みを、意地とプライドと気力で打破したのです。この気迫がある限り、ズルズルと後退する服部の情けない姿を見ることはないでしょう。服部はやってくれます。賞金王から10年近い時を経て、強すぎる服部が帰ってきたのです!
 ちなみに、怪我のことも含めて服部のことを書いた私の拙文が、『BOATBOY』の8月号に掲載されます。興味のある方は読んでくださいね(←結局は宣伝かよ)。(PHOTO/中尾茂幸、TEXT/畠山)


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