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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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準優戦回顧

10レース『竜』
 目の覚めるようなまくりだった。ありきたりな慣用句で、「それじゃ、オマエは寝てたのか?」とツッコまれそうだ。しかし、この10レースまでは本当に眠っていた。筆者がではない。〝まくり〟が、だ。3日目の8レース以降、のべ25レースの間、まくりが一発も決まっていなかったのだ。名実ともに「目の覚めるようなまくり」とう表現は正しい。

 2006_0624_10r_002 圧倒的な1番人気は、①→②。オール3連対の濱野谷から、好調機を引いた湯川への舟券である。スタートは見えているし、進入で動きそうな選手もいない。優勝戦へ駒を進めるのは、このふたりでゆるぎないようにみえた。
 ピット離れで3号艇の田中信一郎が遅れる。が、大きく回って3コースを取り返し、進入は展示どおりの枠ナリ3対3で固まる。
 各選手がレバーを握る。内2艇のスタートは悪くなかった。濱野谷がコンマ14で、湯川がコンマ15。しかし森竜也のスタートが壮絶すぎた。内3艇より、ちょうど1艇身抜けている。
 たぶんフライングだろうなと思った。それでも森は行った。機力がほかの選手に比べると落ちるため、勝つためにはスタートで抜け出すしかなかった。これまでにSG参戦43回を数えるが、一度も優出したことはなかった。彼は7月からA2に落ちる可能性がある。自称・「最後のSG」を悔いがないよう戦うため、森はスタートを行ったのだ。
2006_0624_10r_007  コンマ03。森のスタートは、ギリギリ入っていた。スリット通過後、ハンドルを左に切ると、すぐに田中を飲み込んだ。次は2コースの湯川を飲み込もうとする。
「誰か止めてくれ~!」
 ①→②を持っているファンから悲鳴があがる。湯川の艇に森が引っかかる。このままブロックされるのか? それとも振り払ってまくりが決まるのか? 結果は後者だった。

 森竜也のまくりは、俗に「ドラゴンまくり」と呼ばれる。竜也という名前が由来なのだろうが、今日のまくりはホンモノの竜のようであった。艇が竜頭、竜尾は艇跡。
「明日は3等までにからんだら(配当が)つくと思うんで」
 勝利者インタビューで語る森。竜はその鳴き声によって、雷雲や嵐を呼び、竜巻となって自由に天空に昇るという。明日の浜名湖。竜は嵐を呼ぶのか。

 

11レース『貫禄』

1番人気は、ダントツで1号艇の辻栄蔵だった。
辻からの2連単オッズは、①→⑤以外のすべてが10倍以下。彼を中心にレースは動くはずだったが、話題は別の方向にむいていた。5号艇〝脅威の伸び足〟矢後と、6号艇〝インの鬼〟西島である。
R ――ノーマルの方がいい人?
「パチ……パチ」
――チルト1.5がいい人?
「パチパチパチパチ!!!!」
 準優戦出場者インタビューでの一幕はすでに書いたが、ファンの望むとおり、矢後はキッチリとチルト1.5で出走してきた。
 ピット離れ。5艇が小回り防止ブイに向かって進むが、矢後だけスタンド側の消波装置沿いに進む。彼の特異な戦略からか、それはひとり裏道を進んでいるかにみえた。
「5通りの進入を考えています」
 そういって会場を沸かせた西島は回りこんで3コースを選択。体勢は126/345で固まった。
 矢後はトップスタートが切りたかった。この最強の伸びを生かすには、他艇の邪魔がないトップスタートが一番。かといって、ほかの5選手もスタートで少しでも遅れると、矢後になで斬りにされしまう。スタートをとにかく行かなければヤバい。
2006_0624_11r_038  スリットは、ほぼ横一線に並んだ。タイミングは内から【03 05 08 10 05 05】。こうなるとインコース辻の優位性は崩れない。1マークを真っ先に回り、そのまま押し切った。
 辻栄蔵の勝利者インタビュー。スタートのことを聞かれると、
「いいスタートでしたね……ホントはドキッとしましたよ」
 と、際どいスタートのことを語っていた。同じコンマ03のスタートながら、インタビューされているときの表情は森と対照的だった。感極まって逆に淡々とした口調になっていた森とは違い、辻はリラックスしていた。
「思った仕上がりにはならなかったんで……」
 エンジンにはまだ納得していない。
 ドキッとしたスタートで、納得いかないエンジンで、あの力強い内容。貫禄であろう。 昨年の賞金王を制した辻が、優勝戦でも貫禄をみせつける。

 

12レース 『地元』

 地元静岡5人衆。大将の服部は準優出できる5.83の得点率ながら1着本数の差で脱落。野長瀬・佐々木は出ないエンジンに苦しみ、菊地は4日目のFに散った。
 唯一予選を突破したのが坪井康晴。得点率はトップで、準優12レースの1号艇。圧倒的に有利な立場であるが、同県選手が脱落してしまったので、自分が頑張らなければいけないプレッシャー。SG優出経験がない緊張感。坪井はそれを克服できるのだろうか。

2006_0624_12r_010  ピット離れで5号艇の池田浩二が遅れるが、そのほかはほぼ同体。小回り防止ブイに到達した時点では、どの選手も動く気配がない。
 ところが、展示では2コースを奪取していた4号艇の倉谷和信が、一気にインを狙って動く。6号艇の西村勝もついていく。
 それでも坪井は1コースを主張した。地元SG・準優のメインレース。ここでインを譲ったら男が廃るといったところだろうか。
 結局、進入は1426/35。イン2艇はやや深め。トップスタートを切ったのは……1・2コースのふたり。坪井と倉谷が真っ先にスリットを通過し、1マークへ向かって艇を伸ばす。坪井が先マイ。誰もまくれず、誰も差せない。この瞬間、地元の若手有望株は、地元SG優勝戦の1号艇を手に入れることに成功した。
 焦点は2着争いに移る。バック水面で、内に④倉谷、外に②作間で併走状態。ややリードしているのは作間だが、これくらいの差は2マークで逆転できる。4番手以下は勝負圏外。SG優勝経験のない2人が、残り1枚の優出切符を争う。
 2マーク。先頭を走る坪井のターンに、倉谷と作間が続く。2マークを制するのはどっちだ!? 倉谷か? 作間か?
R_1  どちらでもなかった。絶望的な4番手を走っていた山崎智也が、奇跡的なターンで2番手に浮上したのだ。
 思わず5月の笹川賞準優を思い出した。あのときも、山崎は1周2マークで奇跡的な逆転を遂げていた。そして今回も、2マークで権利をもぎ取った。この勝負強さはいったい、何だろう。
 2周1マーク。鋭い艇跡でターンマークに突っ込み、再逆転を目ざす作間。しかし不発。これでレースは決まった。1着・坪井。2着・山崎。
 勝利者インタビュー。まるで優勝したかのような拍手が、会場を支配していた。
「(深い進入ではなく)想定内のスタートでした」
 事も無げに、坪井は語る。
 静岡の4人の気持ちを乗せて、明日の16時40分、1号艇は走る。そのときの拍手は、今日のソレよりも大きくなるのは間違いない。

(PHOTO・池上一摩<3枚目6枚目> 中尾茂幸<それ以外> TEXT・姫園淀仁)


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