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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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ドラマチック勝負駆け――4日目、後半のピット

Cimg0961  ドーンドーンドーン。東のほうから聞こえてくる爆発音。今日は、小倉方面から若松に架けられた若戸大橋の花火大会だそうである。11R頃に打ち上げられ始めた花火は、ピットからもしっかり見ることができた。ちょうどボート引き上げに出てきた選手たちが、一通り作業を終えると、足を止めて見入っている。職員さんも、報道陣も、思わず花火が上がった方面を見上げて、動けなくなる。綺麗ですなあ…………「ほら、クロちゃんが上がっとるで」。?????? 俺が花火? 振り返ると、森高一真が僕の肩に手を置いて、悪戯っぽく笑っていた。そばにいた重成一人、田村隆信が思わず吹き出す。ま、またですかぁ、森高さーん!Cimg0944  でもね、森高さん、僕、本当に“黒”ちゃんなんですよ。取材章を見せると、森高、「うわっ、ほんまにクロちゃんやっ!」とビックリ。田村も、むしろ感心した様子で驚いていた。うはははは、どーだっ! まいったか! そのあとは、「クロちゃん、どこ泊まってるの? 小倉? うわっ、キャバクラ行きまくっとるやろっ!」などと、延々からかわれタイム。森高さん、行くわけないじゃないっすかぁ。舟券負けまくってるし…………って、勝負駆けの日に何をしとるんでしょうか。私、すっかり森高一真にオモチャにされておりますです、はい。

2006_0728_01_082  そんなことはどうでもいい。そう、今日は悲喜こもごもの勝負駆けデーなのだ。朝から勝負の懸かった選手たちがビシビシと条件をクリアする快走を見せて、ボーダーはぐいぐいと上がっていった。8Rに登場した植木通彦は、1マークで後手を踏みながらも、意地の激走で2着を死守し、6・00まで得点率を引き上げたのだが、その時点ですでに、通常なら予選を十分クリアできるその数字が、かなり苦しいものになっていた。9R以降、上位勢が次々と失敗しなければ、植木の地元オーシャンは終戦を迎える。そしてそれが、かなり可能性の薄い希望であることは、全体の情勢を見れば明らかだった。2006_0728_02_076 結果は果たして、無念の20位……。浜名湖で実況を務めている工藤浩伸さんの肩にもたれて泣き真似をする植木の姿を見れば、もう切り替えはできているようにも見えるが、12R後の植木はどこかやるせない表情で、帰宿のバスへと歩いていった。

2006_0728_02_124  残酷なように見えたのは、11Rだ。この時点で、田村隆信の6・17が19位。18位は市川哲也の6・20で、ボーダーはここまで上がっていた。1R6号艇を、鬼気迫る前付けで1着クリアして、勝負駆けを成功させたはずの田村だったのに、時間が経つにつれていつしか、ベスト18の枠から弾き出されていたのである。ところが、11Rでまさかの事態が起こる。予選6位につけていた瀬尾達也が、シンガリに敗れて、得点率を6・17まで落としてしまったのだ。両者を比較すると、田村が節間3勝、瀬尾が2勝。着順点で田村が逆転! 土壇場で、田村は18位に滑り込んだのである。しかし……瀬尾と田村は同じ徳島支部なのである。ピットに戻る瀬尾を出迎えるのは、後輩である田村の仕事なのだ。先輩の挫折が、後輩にとっては幸運となる。Cimg0954 瀬尾のボートに入った水を掃除機で吸い取りながら、田村はまったく嬉しそうな表情を見せることはなかった。ホッとした気持ちを実感しながらも、それを表に出すことはできない。田村にとってみれば、むしろ辛い時間かもしれなかった。結果的には、12Rで失敗した選手が出たために、瀬尾が18位で準優ギリギリセーフ! 宿舎では、きっと笑い合える瀬尾と田村だと思う。

Cimg0979  その12Rで失敗したのは、田村のひとつ上にランクされていた市川哲也である。予選前半は快調に飛ばしながら、昨日から調子を落としてしまって、出走前の段階で16位。3着で6・17、ひとまず田村や瀬尾と並んだのだが……道中、中村有裕にかわされて4着。ついに6点を割るところまで落ち込んでしまったのだった。
 ピットに引き上げてきた市川には、表情がなかった。辻栄蔵ら後輩がボート片付けを引き受け、その指示を出しているときにも、無表情である。悔しさを露わにするのでもなく、苦笑いでレースを振り返るのでもなく、ただただ顔色を変えずにいる市川。つまりそれは、最大級の悔恨の表情なのである。ひたすら自分を責め、走馬灯のように駆け巡っているはずのレースでのさまざまなシーンをなんとか押さえ込もうとする、哀しみの表情なのだ。西島義則、辻ら広島勢も、そんな空気を察知してか、声を失っている。いたたまれない、レース後の風景だった。市川、明日もあさっても、これからもガンバレ! リベンジの機会はきっとすぐにやって来る!

2006_0728_02_002  もちろん、歓びの表情もたくさん見られる、勝負駆けデー。まだ日が高いうちからピットに張り付いていた山田愼二カメラマンによると、松井繁が非常にご機嫌だったそうである。前半の3着で、ぐっと楽になった12Rの勝負駆け。1号艇でもあり、またレース後の勝利選手インタビューでも語っていた通り、足も抜群に仕上がっていたから、メドは立ったという確信を持っていたのだろう。その予感どおりに、12Rを逃げ切った松井。レース後の松井からは、喜びとともに、新たな気合オーラがじわっと立ち上っていた。王者モード、全開! そういうことだと思う。機力はもちろん、メンタリティも完全に仕上がった! 12Rの勝利で、松井は王者の魂のインストールを完了したのだと思う。この状態になった松井は怖いぞ!

2006_0728_01_207  先述した植木の2着、その前を走っていたのは、同県の鳥飼眞である。1着で6・33、予選を見事にクリアした。この結果はまさに大きな大きな分水嶺となっていて、もし順位が逆だったら、得点もまるっきり入れ替わって、植木が準優へ、鳥飼が予選落ち、であった。まさにでっかいでっかい勝利を得て、鳥飼は爽やかな笑顔をレース後に見せていた。日が落ちてから、JLCの展望インタビューに登場していたのだが、そばで見ていた長嶺豊師匠に祝福されて、顔がくしゃりとほころんだ。嬉しいといわなくとも、目が、頬が、口元が、そう叫んでいる。もちろんこれがゴールではなく、明日はさらなる気合を込めなければならないのだが、ひとまず心から笑えばいい。その男っぽい笑顔は、最高に輝いていた。

2006_0728_02_117 勝負駆けドラマの一幕。9Rでようやく勝利をあげた今垣光太郎は、しかし10点を得てもとうてい予選クリアに及ばない状況にあった。そもそも、ピットではあまり笑う姿を見かけることのない彼だが、この勝利でもやはり笑わない。というより、笑えないといったほうが正確のようだった。これも山田愼二カメラマンの目撃談なのだが、「こんなに落ち込んだことはない」とレース前に松井らにこぼしていたそうなのだ。素性のいいエンジンを引き当てながら、その爆発力をまるで引き出せないままに終わってしまった予選道中。「ファンにも申し訳ないし……」。誰よりもファンの存在も重く捉えている今垣にとって、これ以上ない最悪の結果を出してしまったオーシャンカップなのだ。
 BOATBoy7月号で今垣は、自分を変えようとしている、そんな意味のことを語った。その課程は、彼にとって苦しいことばかりが待ち受けていた。誰もが、今の彼を不調だと思う、そんな成績が続いてしまっているのだ。そのピークが、このオーシャンカップなのか。今日の1着が、好転の契機であると、僕は信じたい。オーシャンカップはまだ終わっていない。あと2日、最高の今垣光太郎を見せてくれ! 準優には出られないけれども、明日はその走りを熱く見守りたいと思った。

2006_0728_02_043  さて、7R4着条件の勝負駆けを、見事に1着でクリア! 気づけば準優2号艇ゲット! うぉぉぉぉ!と気になる山崎智也。レースを終えると、グラチャンでもつけていた大きなヘッドフォンを肩にかける姿で、ピットに現われた。このヘッドフォンは、耳につけると外の音がいっさい遮断されて、雑音に集中力を乱されることのない優れものだそうである。そう、智也は早くも精神統一モードに入った! 弱めの機力で苦しんだ予選道中、終わってみれば予選5位という好成績につけた智也。間違いなく、すべてが上向いていると言っていいだろう。優勝した笹川賞から3連続SG優出も、おおいに期待できるぞ! 明日の智也も、もちろん気になることが決定!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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受信: 2006/07/28 23:30:59
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