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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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全日本選手権 優勝戦回顧

2006_1029__248① 松井 繁 (大阪)
② 吉川 元浩(兵庫)
③ 魚谷 智之(兵庫)
④ 中村 有裕(滋賀)
⑤ 重野 哲之(静岡)
⑥ 坪井 康晴(静岡)

「48年ぶりの次は、46年ぶりか」
 記者席からポツリ、ポツリと声が漏れた。水面では、魚谷がウイニングランをしている。スタンドから声援が飛び、拍手が起きる。手を振る魚谷の表情は、満面の笑み。左手から差す夕日が、水面と魚谷を白く映した。

0011  スリット。1コースの松井繁が、他艇よりも1艇身遅れる。優勝戦出場者インタビューで、「スタートはコンマ01!…………プラス09くらい」 と場内を盛り上げたというのに、本番では「コンマ01プラス35」のスタートをして、悪い意味で場内を盛り上げてしまう。優勝戦メンバーで唯一複数SGタイトルを持つベテランは、自らの手で守るべき牙城を崩してしまった。

 出遅れるベテランを後目に、トップスタートを決めたのは5コースの重野哲之。連日書いているように、SG初出場初優出のフレッシュな若者だ。節一モーターの32号機はダテじゃない。内4艇に襲い掛かかるタイミングを虎視眈々と狙っている。

 スタート順位は2番手だったが、4カド中村有裕の出足も良かった。スリット通過後にグイッと伸びる足は、MB記念の準優戦を彷彿させた。「これがカドの役目」とばかりに、一気に内の艇をまくりにいこうとする。
 が、カド受け3コースの魚谷智之も伸びている。絞ろうとする中村を許さず、ターンマーク手前でガッチリと受け止めた。

2006_1029__144    絶好の展開になったのが、2コースの吉川元浩。インが出遅れていて、3コース・同県の魚谷がカベになっているのだから、1マークを正確にターンすれば、おのずとタイトルが転がり込んでくる。
 そして1マーク。吉川は、しっかりと松井をまくり切った。内に差し場はない。外を回すと届かない。
 唯一のスペースは、松井と吉川の間の狭い隙間だけ。ここを突いたのが、魚谷。ズバッという音が聞こえてきそうなマクリ差しは、綺麗に入った。この瞬間、34歳の後輩が手にいれかけていたタイトルを、30歳の先輩が奪い去った。

2006_1029__155  原田幸哉、瓜生正義、横西奏恵などを排出した、当たり期・76期出身の魚谷。本栖時代から将来を嘱望されている選手だったという。しかし、出世には思いのほか時間がかかった。デビュー3年目からGⅠには斡旋されていたが、制したのはデビュー10年目の地区選手権だった。04年の浜名湖グラチャンでSG初優出を果たした。しかしフライングに散った。遠回りはした。だが魚谷は、いままさに水を得た。

「地元じゃないのに、なんでこんなに沸いているんだろう?」
 隣にいた記者がいった。たしかに、ウイニングラン時にスタンドから聞こえてくた拍手と声援は、地元選手が優勝したように凄かった。並ばずに払い戻しができるくらいの超大穴だったというのに。
2006_1029__173  私の結論は「新興勢力が素晴らしい競走をしたからこその拍手であり声援ではないか」である。
 狭いスペースを一気に突き抜け栄冠を掴んだ魚谷だけではない。重野のダンプを凌ぎ切り2着を死守した吉川。SG初優出のプレッシャーに負けずトップスタートを決めた重野。カドがやるべき仕事を果たした中村。冷静な競走を展開して3着になった坪井――。

 ベテランが作ってきた時代を、若手が打ち壊し、新たなる時代を作る。そうやって歴史は動いてきた。
 私見だが、どんな競技も若手が台頭してくる時期がもっとも面白い。

 競艇は、やはり、今がその季節のようだ。

《Photo:池上一摩(2枚目) 中尾茂幸(残り全部) Text :姫園淀仁》 


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