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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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勝負駆けを前に――3日目、後半のピット

2006_1025_01_262  8R後、淺田千亜希の水神祭の取材のためピットを訪れると、もっとも歓んでいたのは、やはりというか何というか、横西奏恵だった。同県の女子選手を祝う儀式なのだから、そりゃあ横西がいなければお話にならない。そして、笑顔が爆発していて当然である。やっぱり、奏恵の笑顔って、ええなあ……。そんな横西は、明日2着2本条件の勝負駆けである。MB記念では予選最終日を待たずして、準優への望みは絶たれていたが、今回はやや厳しい条件とはいえ、ベスト18に十分届く位置にいる。しかも明日は1R1号艇、チャンス! 明日は、総理杯で落としてきたものを拾いに行く機会を得ることができるのか。足は悪くない、頑張れ!

2006_1025_01_361  この人は、いつだって静かに闘志を燃やしている。新美恵一だ。ピットでの表情は一見、極限のクールさをたたえているように見える。いつだって冷静に、いつだってマイペースに、物事を運んでいるとしか思えなかったりもする。しかし、新美は時として燃え盛る炎をレースで見せる。おそらく、魂を内に秘めて粛然と見せるタイプなのだろう。だからこそ、乗ったとき、あるいはここ一番の新美は怖い。明日は2・3着の勝負駆け。水面に彼の魂が立ち上るだろうか。

2006_1025_01_166  西村勝は、仲間とともいるときは輝く笑顔を見せるが、レース前などの気合がこもる場面では、獣を射るような鋭い視線を見せることもある。目が合わなくても、そんな表情を垣間見せる西村には震えるほどの迫力を感じる。イメージには合わないかもしれないが、闘将としての一面を持っていると思えるのだ。そんな西村がもっとも出現する局面は、やはり勝負駆けなどの「ここ一番」であろう。4日目、西村は1着勝負! 登場は2R。6号艇である。たしかに不利な枠だが、だからこそ狙ってみたい魅力に、西村は溢れている。

2006_1025_01_420  まさかこの男が、後のない戦いを強いられることになろうとは。松井繁である。ピットで見る限り、雰囲気はオーシャンカップやMB記念とそう変わるわけではない。今日も整備に没頭する姿を見かけてはいて、足にはまだ不満がたくさんあるのだろうが、オーラ自体は王者のそれを今節も発散しているのだ。それだけに、予選28位、明日は2・3着の勝負駆けというのが、やや意外な気がしてならない。明日は7R6号艇と11R1号艇。長嶺豊師匠によると、「勝負駆けで1号艇と6号艇をもらう場合、1走目が1号艇のほうが走りやすいんや。2走目に向けて、計算が立ちやすいからな」とのこと。その伝でいえば、松井は厳しい順番を与えられてしまったわけだが、それを何としてでも跳ね返そうとするのが王者の王者たるゆえんのはず。明日は、ギラギラした王者の魂が見られるものと信じる。

2006_1025_01_238  一方で、今日、1日早い終戦を迎えてしまった者もいる。12R前、ピットの片隅にたたずんでいると、菊地孝平が笑みと渋面をミックスしたような表情で現われた。苦笑いといったら軽すぎる。苦悩といったら重すぎる。悔しさを滲ませながら、しかし笑顔を作ろうとする、そんな顔つき。「ダメでした」、菊地はそう小さい声で言って、また同じように笑った。最近、この稿には菊地が頻繁に登場しているが、彼はいつも声をかけてくれるので、出てくる回数が増えるのも仕方ないのである。そして、どんなときでも、まずは笑顔を作る。今節のように不調なときでも。優勝戦を控えているときでも。僕は、それを心からの笑顔だとは思っていない。さまざまにうごめく感情を、菊地は笑顔で包み込むことのできる男だと思うのだ。だから、きっと今日の彼の心は悔しさばかりが支配していたはずだ。それでも笑った菊地に「明日からも!」と返したら、その後に続く言葉を理解してくれたのか、すーっと優しい表情になって、菊地はうなずいた。まだ戦いが終わったわけではない、そう思い直して明日を見据えたかのような表情だった。

2006_1026__490  太田和美も、準優への望みをつなぐことができなかった一人である。それでも彼は、ペラを叩く。飽くことなく、ペラを叩き続ける。予選突破は厳しかろうと、あと3日間のレースで勝つために、ペラを仕上げようとしているのだ。これが、SG4Vの強者の姿である。で、太田、かなり熱心にペラ叩きをしていて、ガツンガツンと強烈に木槌を振るっていた。隣で調整していた江口晃生が、そんな太田を見て「そんなに叩くのは、家でやれよ」だって(笑)。もちろん江口はニコニコ顔です。たしかに、レース場での調整というには、かなり激しいペラ叩きでした。そのやり取りを見ていた金子良昭が、太田を指差してガハハと笑う。厳しい仕事場のなかにある、微笑ましいワンシーンでした。

2006_1026__347  さて、前半で6着に敗れてしまい、すわ、総理杯以来の予選落ちか……と気になる山崎智也。後半11Rは見事に1着! 明日は3着条件の勝負駆けとなり、希望をつないでいる。長嶺師匠によると「何が何でも(アタマを)獲るつもりだった、って言うてたで」と、レース後に語っていたそうである。「それでしっかり決めてみせるんやから、カッコええよなあ」。はい、長嶺師匠、僕もそう思います。明日も長嶺師匠(と僕)を唸らせるレースを見せてくれると信じます。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守) 


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