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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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みんな素敵だ――4日目、後半のピット

2006_1026__295   ボーダー6・17、ハイレベルの戦いとなった福岡ダービー。壮絶なレースあり、緊張感がピットを支配した瞬間あり、これぞ勝負駆けといったギリギリのバトル、駆け引き、闘志が見られた。
 だが、しかし。なぜだか後半のピットは、ほのぼのというか、にこやかというか、そんな穏やかなシーンがやけに目についたのだった。それぞれが、結果はともあれ、ひとつの勝負を終えた安堵感からなのだろうか。
 たとえば、10R。2着で予選突破を確実にした上瀧和則が、明るい顔でピットに引き上げると、そこにツツツツッと駆け寄ったのは金子良昭。笑顔で、「ごっめーん!」と上瀧に謝った。すると、上瀧はパーッと笑顔が弾けて、「びしょ濡れになったわー!」。待機行動の際、金子の作った水しぶきが上瀧にかかってしまったらしい。顔を見合わせてガハハと笑い飛ばし、それぞれの片付けに向かった二人。上瀧、濡れさせちゃってごめんよ。いやいや、金子さん、どうってことないっすよ、びしょ濡れだけど。なんだか、見ているこちらも楽しくなってしまうシーンだった。

Nu2r0159  その10数分後、着替えを追えた上瀧は、今節けっこう一緒にいるところを見かける池田浩二と、水際で談笑していた。そこに現われたのは今村暢孝。気づいた上瀧は、悪戯っ子みたいな顔になって、今村を指差して「アーッハッハッハッハッハッハ!」と大爆笑。今村もつられて大爆笑だ。10R、今村は淺田の突進を受けてボートが浮き上がり、あわや転覆という危険な目に遭っていた。なんとか持ちこたえて再発進したのは幸いだったが、もちろん6着。無事故完走で準優当確だったから、その点では問題はなかったのも何よりではあった(得点を落としてしまったのは痛かっただろうが)。で、そんな今村に、上瀧は「アーッハッハッハ」なのである。指差して。だが、今村の表情が一気に緩んだところを見ると、上瀧が大笑いしたおかげで、今村も救われたのだろう。これが上瀧流の優しさ、ということだ。その後、二人は水面を眺めながら、にこやかに談笑していた。なんだか、粋な二人だった。

2006_1026__504  11R、松井繁が見事なイン逃げを決めて、勝負駆けをクリアした。ピットに戻ってきた松井は、嬉しそうな表情というよりは、ホッとしたという感じ。特に笑顔も見せなかった。ヘルプに来た吉川元浩と顔を合わせると、やっと目が笑う。それもどちらかといえば、なんとか予選を突破することができたことへの安堵感のように見えた。
 だが、次の瞬間、松井の笑顔が爆発した。坪井康晴のヘルプに出てきた金子良昭が、ツツツツッと松井に近寄ったのだ。おぉ、また金子さん! なぜか深々とお辞儀して、「ありがとうございました!」。????? 何が? そして、「さすが王者!」。実際は言ってなかったけど、「さすが王者!」の前に「よっ!」とくっつきそうな口調で、松井を激賞したのであった。松井も、笑わずにはおれませんわなあ。ったく、もう、金子さんったら、ひょうきんっすね。松井の笑顔も、実に素敵でした。

2006_1026__117_1  その松井、レース後は実に明るかった。JLC展望番組の準優選手進出インタビューを受けたると、それをやや離れたところから見守っていた顔見知りの女性キャスターたちに「何? (オレの)取材か?」と笑いかける。そして、右手を挙げて、空気を払うような仕草をしながら、「取材拒否やぁ!」。ダハハ、もちろんギャグっす。陽気な王者、魅力的やなあ。女性キャスターたちとしばし談笑したあと、モーターの格納作業のため、整備室に戻っていった松井であった。
 で、12R後、カポック脱ぎ場で着替えていた湯川浩司のもとに、松井がにっこにこで現われた。そして、なんと湯川に平謝り! な、なんじゃ? どうやら、格納作業が長引いて、湯川のボート片付けに駆けつけられなかったようである。競艇の麗しい点である、一丸となっての作業は、先輩後輩、実績などによっての例外はいっさいない。王者であっても、後輩の手助けをするわけだ。それができなかったことに対して、松井のこの姿勢。ちょっと感動した。もちろん、湯川はかえって恐縮してましたが。

Cimg1590 「今村ぁ~」。帰宿バスの第一便でピットを後にしようとしていた今村豊を、長嶺豊さんが呼び止める声が聞こえた。にこにこっと足を止めた今村、そこから笑顔満開のトークが始まった。勝負駆け失敗は残念だったけれども、レース後はいつもの陽気な今村豊。というか、今節は初めて、こんな今村を見たような気がするなあ。今村が笑っていると、なぜか嬉しい。明日からも、頑張ってくださいね!

2006_1026__635  さて、予選第1位は、得点率8・50の中村有裕となった。11Rの1着が効いたのだ。12R後、控室に戻ろうとするユーユーに「中村さん、予選1位っすよ!」と話しかけると、「ええっ、ホンマですか?」。まさか自分が予選トップだとは、まったく想像もしていなかったようである。心から驚いた顔を見せたユーユー、僕が状況を簡単に説明すると、もういちど「ホンマに?」と目を丸くした。
 たぶん、これが中村有裕らしさなのだと思う。MB記念でSGウィナーとなっても、何も変わらない。その表彰式でも口にしていた「ガムシャラ」は、どんな立場に置かれようとも、彼の心に根ざす基本スタンスなのだ。だから、予選順位に関係なくガムシャラに走る。SGウィナーだから予選1位も当然、なんてもちろん思わない。11Rの1着だって、予選順位1位を意識してもぎ取ったのではなく、ただただ目の前のレースで勝つことだけを考えて、ガムシャラに走った結果なのだ。11R終了後も、整備室で一心不乱にモーターを磨き上げていたが、これもデビュー以来変わらない、相棒へのいたわりなのだろう。
「まあ、頑張ります!」、そう言って控え室へと戻っていったユーユー。明日も、優出がどうとか意識することなく、ガムシャラに勝ちにいくだろう。

2006_1026__721  さてさて、見事に予選突破してみせて気になる山崎智也。勝利者インタビューでは、「10年ぶりくらいに、レース後も試運転します」と言っていたが、残念ながら更新作業や別の仕事を片付けてなければならなかったため、それを確認することはできなかった。僕がピットを訪れたときは、マイペースに時を過ごし、ピットには仲間のボート片付けに出てくるくらいしか、顔を見せなかった。で、10R後だったか、原田幸哉と肩を組んで、控室に戻るシーンを発見。おぉ、相変わらずの仲良しコンビです。なにやら内緒話でもするかのように、声を潜めて話す原田に、智也は静かに笑いながら耳を傾けていました。でもね、智也が第一便バスで帰宿したあと、幸哉が魚谷と同じように肩を組んでいるのを見ちゃいましたよ、智也選手。あー、浮気だ、浮気……って、違いますね、はい。仲良きことは美しき哉。原田は無念のボーダー次点だったが、明日は智也(と魚谷)を応援してやってください。智也も、優出めざして頑張れ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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