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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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苛酷な舞台――賞金王決定戦、トライアル2日目後半のピット

 まだ、たった2回しか走っていない。昨日と今日、1走ずつレースをしただけなのだ。しかし、早くもトライアル戦線は終着点の姿を現わし始めてきた。たとえば中澤和志は、2走9点。ボーダーを21点とすれば、トライアル最終走で1着を獲ったとしても届かない計算になる。レース後の中澤はわりと淡々としてはいたけれども、そして明日の結果次第では1着で届く可能性だってあるけれども、この現実を快く受け入れられたはずがない。賞金王決定戦は、一面で苛酷な舞台である。

2006_1222_01_702   一方、魚谷智之と松井繁は、ボーダー21点なら当確である。魚谷は12Rを2着、松井は同3着。このポイントアップで、ベスト6の座をほぼ確定的なものにしたのだ。魚谷は、昨日ほどの笑顔は見せていなかったが、それでも顔が光っている。一方、松井は何よりもまず敗れたことが苛立たしいのか、厳しい表情を見せていた。得点争いの前に、勝負に敗れたという許しがたい現実がある。それを露わにするのもまた、王者らしいといえた。ただ、ここ最近のSGよりもずっと、闘志の炎を燃やしているのもまた確か。今日は、ちょっとピリピリしているような様子も見かけられて、これが明日どう作用するかは、今のところは何とも言いがたい。

2006_1222_01_299  前記3名以外の9選手は、明日はヒリヒリしながら一日を送らねばならない。15点から13点に7名が入るという大混戦。12点の濱野谷憲吾、11点の川﨑智幸にしても、大きな差があるわけではない。
 ただし、やはり後者2名は、かなり厳しい勝負駆けと言える。川﨑は、1着条件。明日は12R5号艇と、やや不利な枠順に入ってしまったことが痛い。今日の8R前後だったと思うが、ピットに入った瞬間に、川﨑がモーターを装着している姿が目に飛び込んできた。前半の試運転の後、やはり再整備に取り掛かっていたのだ。レース前の部品交換発表を見て、ぶっ飛んだ。ほぼ総とっかえの大手術を川﨑は施していただから、驚くしかないだろう。今日一日、川﨑は時間をかけてモーターを別モノにすべく頑張ってきた。そして……絶好の1号艇を活かすことも、努力の実を結ばせることも、できなかった。それでもクールに見える川﨑は、明日、どんな動きを見せ、どんな表情で過ごすのだろうか。
 濱野谷は、明らかにいつもと違う空気を感じさせた。ガツガツした闘志が濱野谷のなかに芽生えたか……そうも思えたのだが、結果を見ると、機力に不満を抱いていたということだったのかもしれない。思うように仕上がらないモーターに、苛立っていたかもしれない、ということだ。明日は12R3号艇、3着に入った初戦と同じ枠順で、さらなるランクアップをはかりたいところだが……。

2006_1222_02_146   混戦になったのは、昨日の明暗が今日はひっくり返るケースがあったということである。初戦は2着だった中村有裕が、2戦目は6着に敗れた。逆に、初戦シンガリの坪井康晴が2戦目で2着と巻き返した。好発進後のつまずきに、ユーユーは露骨に顔をしかめる。今日大敗していれば終戦を迎えかねなかった坪井は、どこか安堵の空気を感じる。中村も坪井も、初出場の若手だというのに、これまでのSGと変わらぬ様子で過ごしているのだが、しかし賞金王決定戦の魔は、結果という形で彼らに迫り来る。ベスト6への試練の一日となる明日、彼らはどう乗り切ってみせるのだろうか。
 初戦5着の瓜生正義は、2戦目では見事に逃げ切ってみせた。エース機が、触れ込みどおりの働きをみせたわけである。ただ、瓜生としてはまだ安心はできそうにない。今日はコースの利もあったわけで、12R2号艇の3戦目は決して予断を許すことのできぬ戦いになるはずだからだ。気負ったところは見せない瓜生だが、果たしてそれが明日もキープできるかどうかは、相棒の動き次第といったところだろう。
 初戦6着のディフェンディング・チャンピオン、辻栄蔵は11Rを見事に1着! こちらも巻き返しを見せている。これで、去年のように流れを掴んだかもしれず、辻も自然と表情が柔らかくなる。モーター抽選では3走連続の4号艇を引いて、苦笑い交じりではあったが、自分でウケていた(笑)。これは、むしろ好材料ではないのか? なぜなら、4号艇からのレースぶりを、この2日間で体験しているからだ。連覇が近づいた、3走連続ブルーのカポック、かもしれないのである。

2006_1222_01_436 さて、辻の項でも少し触れたが、賞金王決定戦トライアル2、3戦目は抽選で枠順が決定する。今日も12R終了後に、競技棟会議室で抽選が行なわれている。
 2日続けての中間着順だというのに、上瀧和則は笑顔を見せていた。レース後にも笑っていた上瀧は、もしかしたら究極のリラックスを心に抱けているのかもしれない。ま、普段のSGでのモーター抽選でも、場の空気を和ませているのは、もっぱら上瀧ではあるのだが。で、上瀧が引いたのは、なんと6号艇。緑色の玉(いつものガラポンに、6色の玉を入れて、ガラガラポンと回します)を見た瞬間、ガクッとうなだれてみせて、「終わっとる……」と自嘲ぎみに笑っていた。しかぁし! あなたに6号艇はむしろ、絶好の前付け艇番ではないのか!? 黙って6コースなんて絶対にありえないのだから、これも上瀧の心理戦術だと僕は思うぞ。ジョーの戦いはすでに始まっている。
 抽選会に向かう際、三嶌誠司とばったり出くわした。「クロちゃん、ありがとう!」といきなり言われましたが、えっと、僕、何もしてませんよ(笑)。11R、3周1マークで山崎智也を逆転して3着、その追い上げは見事だった。しかし、「すごいレースでしたね」と話しかけて、あっ……!と思った。「すいません、3着ですごいも何も……」。三嶌は、その瞬間に顔をしかめた。「うん、でもこれで明日が楽しみになったからね」。うーむ、まだ競艇選手への話しかけ方が慣れてないなあ、俺……。それでも、「明日はいい枠を取って、何としてもベスト6へ!」と言うと、三嶌は両手で拳を作って、「よしっ、1を引くぞ! うん、1を引いてくるから!」と力強く笑って、抽選会へと向かっていった。で、結果はというと……あぁ、緑のボールが……。僕も取材しながら、ガックリとうなだれてしまった。俺、余計なこと言ったんだろうか……。でも、むしろ思い切ったレースができる艇番だと割り切って、明日は爽快な走りを見せてもらいたいです。
2006_1222_01_294  最後に、その三嶌に逆転されてしまった気になる山崎智也。レース後はさすがに悔しさがアリアリ。そして、それを押し隠そうと冷静さを保っていたから、なおさらツラさが身に迫って見えた。モーター抽選にもクールに臨み、白い玉が出ても表情を変えることなく、一言も発しないまま、会場を後にしている(祈るようにガラポンを回し、白い玉が出た瞬間、小さくガッツポーズをして、ヨシッ!と呟いた松井とは対照的だった)。智也の胸の奥では、闘志がすごいことになっていると見たぞ。明日は智也の真骨頂が見られるはずだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田守)


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