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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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賞金王への思い――賞金王決定戦、トライアル3日目後半のピット

_u4w0084  なんだか気が抜けた……。12Rが終わって、ベスト6が確定した瞬間、なぜかわからないが、気が抜けてしまったのだ。いや、理由はわかっている。ベスト6と、順位決定戦回りになってしまった6人の間にあるクッキリとした縁取りのある明暗に、圧倒されているのだろう。すでにご存知だろうと思うが、新年からSG優先出場権は「賞金王決定戦・優勝戦出場選手」と規定が改訂されている。つまり、今日の戦いは来年のSG切符を奪い合う戦いでもあったのだ。しかし、選手たちがそんなことを考えて戦っていたとは思わない。彼らはただただ勝利のため、黄金のヘルメット奪取の権利を獲得するため、全身全霊の戦いを繰り広げた。その結果、天国と地獄が残酷なまでに姿を現わした。ハッキリ言って、だから面白いのだ、賞金王決定戦は。歓喜と落胆が同居し、重苦しい空気を作り出すからこそ凄いのだ、賞金王決定戦は。この緊張感こそ、勝負の、競艇の、賞金王決定戦の魅力(舟券の魅力もそういうものですよね)。だから、本当の大勝負は明日だというのに、究極のコントラストに酔わされたかのように、気が抜けてしまったのだと思う。7位以下の選手については、今日は書くまい。ひとつだけ言えるとするなら、坪井と同点の20ポイントを獲得しながら、着順点で次点となった三嶌誠司に思いを馳せた瞬間こそ、気が抜けた決定的なポイントだった。3着なら次点となることはわかっていた、という。それだけに、三嶌がどんな思いで3周を走ったかと考えると、いたたまれない気分になった。取材者としては失格かもしれないけど、三嶌の表情を見ることから逃げた……。それは、他の5名についても同じだった。申し訳ないが、お許し願いたい。

_u4w0185  おそらく、選手たちは自身の得点状況を頭に入れながら戦っていたのだと思う。11Rを3着に敗れた坪井康晴がヘルメットを脱いだ瞬間、これまで見たことのない、屈辱に歪んだ顔が現われた。今節だけに限らない。取材してきたSGのピットでは一度も見たことのない、坪井康晴の悔恨にまみれた表情。3着で20点、ボーダーを21点とすれば1点届かず、だからこそ坪井は2番手を走っていた中村有裕を最後まで追いかけた。逆転できなかったことは、ベスト6からこぼれることを意味する。それを坪井は誰よりもわかっていたから、つい本音が露わになったのだと思う。
 12Rの結果で、坪井はベスト6に滑り込んだ。いちどは諦めていたものが、転がり込んできたのだ(これも、もちろん事前にわかっていたものと思われる)。報道陣に囲まれた坪井は、11R後とは正反対の明るい表情で、にこにこと笑っていた。僕には、ちょっとだけ苦笑も混じっていたような気もするけど、それがスパイスとなって、さらにいい笑顔になっていたのは間違いないことだった。明日、坪井はどんな顔を見せてくれるのか。今日は賞金王決定戦の明暗をたった一人で表現してみせただけに、明日の表情が楽しみで仕方ないのだ。

_u4w0091  中村有裕は、11R2着で22点。これでほぼ当確となった。12Rの結果次第では、落ちる可能性がわずかにあったが、それはもうユーユーには手の届かない領域のこと。レース後は比較的淡々と、モーター格納作業に取り掛かっていた。そんなユーユーを見ながら、長嶺豊さんは「初出場なのに、たいしたもんや」と感心していた。たしかになあ、今節のユーユーは通常のSGとまったく変わらないように見えたし、レース後も同様だ。なかなかできることでないのは間違いない。年間でもっとも震える舞台になるはずの賞金王決定戦ファイナルでも、それができたとしたら本当にすごいことだ。こちらもまた、表情が楽しみな一人である。

2006_1222_02_064  昨日の段階で当確マークのついていた魚谷智之は、11Rを4着に敗れて、しかしもちろん優勝戦進出は問題なし。だが、やはり敗れたこと自体が悔しいのだろう。おっかしいなあ、とばかりに首を傾げた。それでこそ競艇選手、それでこそベスト12戦士、と僕は魚谷に大拍手を送りたくなった。ただし、今日は今節もっともリラックスして臨めたそうである。メンタルトレーニングの成果なのだろうが、もうひとつ、今日は大敗が許されていたことも忘れてはならない。もちろん、魚谷はそんな気持ちで臨んでいない。先述したとおり、4着で思い切り悔しがった魚谷なのだ。だが、「日に日に、(精神的に)良くなってる」という言葉が、ちょっとだけ引っかかった。なぜなら、明日は今日までの精神状態などチャラになってもおかしくない日だからだ。きっと魚谷なら、それを克服して登場してくれると思うけれども。

2006_1222_02_105  12Rをきっちり2着でまとめた瓜生正義は、やっぱり天才だと思う。3~6号艇が厳しい勝負駆けという状況は、ともすれば渾身の攻撃に飲み込まれてしまう可能性もある、ということだ。そして、実際にダッシュ勢がスタートを踏み込んだ。隣の三嶌誠司はヘコんだ。一気に内めがけてダッシュ勢が攻め込んでくる状況だったのだ。だが、瓜生のターンは実に冷静に思えた。2着を確保して、ピットに引き上げてきても、実に淡々とした笑顔を見せたあたりも、クールさを感じさせた。彼が突き抜けられないのは、時にこうした点にあるのではないかとも思えたりするのだが、賞金王決定戦という舞台では、逆に強みになることもあるのではないか、とも今日は思えた。この天才ぶりがどちらに転ぶか、これもまた注目せずにはおれないポイントである。

2006_1222_01_674   さて、あくまでもピットで見る限り、とお断りしておくが、賞金王決定戦ファイナルの最大の見所は、松井繁vs山崎智也だと思う。機力に関しては、松井が圧倒的に優勢である。枠順も、ポールポジションをゲットした松井に分がある。だが、賞金王決定戦を戦う魂という点において、この二人が圧倒的に抜けているように僕には思えるのだ。
 まず、松井繁は明らかにスペシャルな雰囲気にある、というのは再三書いていることだが、12Rを逃げ切ってもなお、そのオーラを保ったままであった。結果的に1号艇をゲットしたことや、機力に不安がないことは、嬉しいことには違いないだろうが、しかしレースが終わった直後の表情は、「こんなもんで満足してたまるか」と言っているようにしか思えなかった。
 共同会見での受け答えも、たとえばダービーやオーシャンカップとは明らかに違う。不機嫌に思われるくらいにトーンを上げず、表情も厳しいのだ。あれだけご機嫌に見えていた松井は、今節どこにもいない。トライアル2勝、優勝戦1号艇が決まってもそれは変わらないのだから、松井は間違いなく、心を武装させて、ここに臨んでいるのだ。これが王者だ、と言うより、王者がここまで特別な仕上げを魂に施している。それが、何よりもすごいことだと思う。
 そして僕は、こうも思う。こんな松井繁が見たかった。強くて怖い松井が見たかった。笑顔の松井も、それはそれは魅力的だが、近寄りがたいオーラを撒き散らしている松井もまた、最高なのである。賞金王決定戦という舞台でそれが見られたことは、本当に幸せだ。そして、これが明日という日を最高に輝かせる。機力も仕上がっただろうが、それ以上に、魂が仕上がった松井繁。負けるはずがない、とまで思わせる状態に、今の松井はあるのである。
_u4w0153  一方の智也である。第2戦までの智也は、苦戦していた、と思う。だが、ピットで智也の激しい動きは、あまり見ることがなかった。ところが今日、勝負が懸かった場面ではきっちりと勝てる仕上げをしてくる。松井らに比べれば、まだまだ苦しい足色ではあるが、少なくとも第3戦をしっかり逃げ切れるだけのパワーには到達させたのだ。こうした、ここ一番の気合こそが、実は智也らしさそのものだと思う。
 さらに智也は、今節は普段ほど笑顔を見せていない。ここ最近の智也は、去年や今年前半に見てきた智也とは、明らかに違う雰囲気を感じさせてきた。それは何度か書いた通りだ。僕は勝手に、それを「賞金王決定戦モード」と実は名づけていた。BOATBoyでインタビューをしたとき、彼はハッキリと賞金王への思いを口にしていた。それを今年、本気で獲りに行こうとしているのではないか。そう思い込んでいたのだ。そして、その賞金王決定戦を迎えた今節の智也は、さらにそのムードを強めているのである。
 ようするに、こういうことだ。賞金王決定戦というものをハッキリと意識し、強く強く戴冠を求め、そのためのメンタリティを確固として作り上げている二人。それが松井繁と山崎智也だと、僕は思うのだ。
 最後にモノを言うのは、この魂なのではないか。たしかに、12人全員が、それぞれこのスーパーレースの雰囲気を醸し出してはいた。しかし、その輪郭までをもクッキリと見せ付けてきたのは、松井と智也なのだ(あと上瀧も……)。その二人が揃って第3戦を勝利し、優勝戦に臨む。松井繁vs山崎智也。賞金王に懸ける思いがもっとも強い二人の真っ向勝負こそが最大の見所だと言うゆえんは、ここにある。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田守)


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★☆★ 第1位 ★☆★ 勝負レース 3R、6R、10R、12R 今節すでにモチ代は稼いだ。 明日は大きなプレゼントが欲しい。 続きを読む
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