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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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聖戦目前!――賞金王決定戦ファイナル前半のピット

 朝の公開インタビュー直後にピットに行くと、決定戦メンバーで作業をしていたのは、「順位決定戦組」の川﨑智幸、中澤和志、三嶌誠司らだった。その作業はそれほど長々続いたわけではないが、その後にペラ小屋に入った濱野谷憲吾の作業は長かった。これはSGでは毎回のことで、たとえ優勝戦に乗れなくても、当日のペラ小屋にもっとも長くいたのは濱野谷ではないか、と思われることは珍しくない。こうした濱野谷の姿勢にはいつもいつも頭が下がるものだ。

1r0011686_1  公開インタビュー直後だったからというだけではなく、「決定戦組」は、午前中の作業はあまりしないのかとも予想されたが、その動き出しは意外に早かった。
 最初に作業を始めたのは瓜生正義だ。公開インタビューから戻ってきたあと、JLCの取材を受けると、その後すぐにペラを取り外して、そのままペラ小屋へ……。そして、同県の鳥飼眞のもとへ行き、互いのペラを見せ合うようにしながら、その後はずっとペラ調整の作業をしていたのだ。
 この作業は濱野谷以上に長く、1R前から始めていながら、筆者がピットを後にした12時前にもまだこれを続けていたのだ。
 公開インタビューでは「足は悪くないけど、乗り心地が良くない」「プロペラが合ってない」と話したうえで、「今日の作業はプロペラぐらい」とも続けていたが、“ぐらい”などというレベルではなく、今日一日はとことんプロペラと向き合っていくものとも予想された。

2img_9016_1  他選手の動き出しは、1Rが終わったあとだった。ピットのモニターで原田幸哉と並んでレースを見ていたのが魚谷智之で、引き上げの手伝いをしたあと、ボートとエンジンの各所をチェック。これは検査を受けるためのものだったが、検査でOKが出たあとにはペラを外して、ペラ小屋での作業を始めている。ただし、公開インタビューでは「やり残したことはない」とも言っていただけに、これは微調整の範囲と考えていいだろう。
 ちなみに書いておけば、今日のピットは、いい天気でありながらも、冷たい風が時々吹いてきて、取材をしていて肌寒い感覚もあるので、これから午後にかけて、ほとんどの選手が、気候に合わせたペラの微調整を行なうものとも予想される。
 この魚谷は、原田と話していたときや、女性キャスターと話していたときなどに、何度も「いい笑顔」を見せており、ダービーを制した時と変らぬくらいにいい雰囲気になっている。

3img_9023_1  1R後の引き上げで、悠々と現われたのが松井繁だ。ひとりで歩いているときは、ゆったりした足取りで風格にあふれているが、こちらも魚谷同様、実にリラックスしているようにも受け止められた。同期の服部幸男と話しているときには最高の笑顔を見せていたし、弟子の山本隆幸とは、遠目で見れば掛け合い漫才のような印象も受ける談笑をしていた。
 その後の松井は、やはり検査のために、魚谷から数メートル離れたところで、ボートとエンジンの各所をチェックしていたが、いざ作業に臨めば、カメラマンがどれだけ集まってきても、「ゾーン」に入っているような表情になるのが凄いところだ。この雰囲気もまた、オーシャンカップ優勝戦当日のそれに似ており、なんとも好感触である。
 この後、ペラ小屋で再び山本と談笑していたが(筆者が確認した範囲では、ペラ調整そのものはしていなかった)、その際には「優勝したら……」と話しているのが耳に入った。前後の文脈はまるで聞き取れなかったのだが、この段階で、松井の口から「優勝」という言葉が、笑いながら漏らされたということには大きな意味があるともいえるのではないだろうか。

4img_0312_1  1Rの引き上げには坪井康晴も出てきていたが、魚谷や松井とは対照的に、片付け作業をしながらも、何か考え事をしているような表情になっているようにも見られたものだ。
 公開インタビューでは「自分の中で納得できるまで調整をしていきます」とも話していたが、その言葉に偽りはない。瓜生と変らず、ペラ小屋での長い作業を続けていたのだ。
 午前中の感触でいえば、ファイナル6選手の中で「なんとかしたい」という気持ちをもっとも強く持ち、作業をしているのがこの坪井であるようにも受け止められた。
 お昼前には早くも試運転に出て行ったが、これは早朝訓練を除けば、決定戦組のなかではもっとも早いものだった。

5img_0331_1  山崎智也は、1R終了後、少し時間を空けてJLCの取材を受けていたとき、はじめてその顔が確認された。
 時おり、笑みを見せてはいたものの、一見不機嫌なようにも見えるのは智也独特の表情といえるだろう。MAXまで集中力を高めているのだろうと思われるときに、こんな表情になっていることが時々あるのだ。これもまた、智也独特のゾーンへの入り方ともいえるのかもしれない。
 その後はペラ小屋の隅に行き(智也をペラ小屋で見るときは、隅っこにいることが多い気がする)、調整を開始した。かなり力強くハンマーを振るっている姿も見かけられたので、微調整の範囲を超えたペラ調整だともいえるだろう。

6img_9066_1  ここまでの5人にくらべて、驚くほど何もしていなかったのが中村有裕だ。
 これまでのSG優勝戦当日には、誰より早く作業を始めて、一日中続けていることが多かった有裕なので、この“何もしないぶり”は、逆に不気味だ。もちろん、午後にも何もしないわけはないのだろうが、公開インタビューで「今日はほとんど何もしないと思います」と言っていたように、調整面では手をつけるところがない段階にまで来ているのだろう。
 レース後の引き上げなどでは、何度か姿が見られたが、作業の行き帰りの歩みは力強く、その瞳は遠くを見据えているようにもなっていた。
 今年一番の超新星ともいえるミラクルボーイ有裕は、本当に“普段着の精神状態”で初出場の賞金王決定戦ファイナルに臨めるのかもしれない。

 少し肌寒いながらも、心地よい緊張感が漂う住之江のピット――。そこにいるだけで、取材をしているこちらの気持ちも自然に高揚してくる。聖戦のファンファーレは、間もなく鳴らされる。
(PHOTO/山田愼二+内池=瓜生 TEXT/内池久貴)


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