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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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賞金王決定戦 私的回顧

 今年のSG戦線は世代交代の年だった。
 中澤の総理杯SG初優勝にはじまり、グラチャンは様々なプレッシャーを乗り越えて坪井康晴が勝つ。夏の終わりのMB記念はがむしゃらな中村有裕が取り、ダービーでは出世魚・魚谷智之がトラウマを克服した。
「デビューから追っかけていた選手が、賞金王決定戦の舞台に出てくれた」
 という人も、かなり多いはずだ。あなたの好きなスター選手は、賞金王決定戦を走っていただろうか?

2006_1224__054_1  中村有裕を応援していた人。舟券はハズれても、すっごく興奮したのではないだろうか? あのスタートには、中村の心がこめられていた。
 インに陣取る松井繁は、技術・エンジンともに磐石の態勢。弱点を突くには誰かがスタートを張り込んで、最強のネコに鈴を付けに行くしかない。それは誰か? 中村有裕ファンなら、真っ先に「電撃Sが身上のユーユーなら行ってくれる」と考えたはずだ。
 5コースの中村はファンの思いに応えるように、思いっきり踏み込んだ。スタートタイミングはコンマ05。フライング持ちやSG斡旋停止など、ネガティブな条件をアタマから振り払うように。とにかく期待に応えるため、がむしゃらにスタートを決める。そんな思いが伝わってくるスタートを魅せてくれた。
 結局、まくり切ることはできなかったんだけど、ファンならあのスタートを肴に酒が何杯も呑める気がする。まぁ、正直なところ、まくり切って、黄金のヘルメットをかぶってくれれば一番良かったのだろうけど。

 

2006_1224__057  スリット通過後、約0.8艇身出ている中村を、強引にブロックしたのが瓜生正義だ。
瓜生正義を応援していた人。2着の目もあった3着だったので、舟券がどうなったかはわからない。でも、あのスリット後の抵抗を見て、さらに瓜生が好きになったのではないだろうか。
 だって中村を行かせて、差しに構えてもよかったのだ。(結果論だが)そのほうが、中村と松井がヤリ合う形が想定できるので、絶好の差し場ができたかもしれない。しかしそれでも、瓜生はブロックすることを選択した。
「絶対に勝ちたいレースは、他力に頼るのではなく自分でなんとかする!」
そんな決意が聞こえてくるような受け止め方だった。
 しかも1マークを鋭いターンで回って2番手浮上。ファンならあれだけでお腹いっぱい!……になるかどうかはわからないが、瓜生の真摯な姿勢がみえた気がした。

 

2006_1224__023_1  魚谷智之を応援していた人は、やや消化不良かもしれない。スリット後に絞る中村と瓜生に、2コースにいた魚谷は飲み込まれてしまったのだから。
「松井を上回るスタートを決めて2コースからまくる!」
「松井のターンに鋭角差しを決めて突き抜ける」
 こんな展開を想定していたファンなら、ターンマークにたどり着く前に、夢がついえてしまったことだろう。
 でも。たとえ優勝の目がないとはいえ、すべてのターンマークでひとつでも上を目指して走る魚谷の姿は、網膜に焼きついたはずだ。この「ひとつでも上」は魚谷の持ち味。そもそもダービーの準優だって、諦めずに3番手を追走していたがゆえ、1着が転がり込んできて優出できたわけだし。
 魚谷は、いまもっとも勢いがある選手だけに、来年もこの舞台に上る可能性は大。楽しみは来年にとっておくということで――。

2006_1224__117  坪井康晴を応援していた人は、2着でも満足しているのではないだろうか。圧倒的に不利な6号艇にもかかわらず、選手インタビューで語っていた「展開を作るには6コースは遠いが、展開がむけば突くことができる」を体現したのだから。
 しかもスタートはコンマ07。仕掛ける瓜生を見ながら、ハンドルを入れて3番手。そして2マークを先マイして2番手に。優勝こそできなかったが、ケチのつけようがない内容である。
 つぎは展開を作れる枠と足がつくれるように。その名を同じくする、将棋の永世名人・大山康晴のように、常に磐石の態勢がつくれるように――。

 

2006_1224__030  世代交代が進んだゆえ、
「昔から応援していた選手が賞金王決定戦に乗れなくて、少し寂しい」
 という思いもつ人もいることだろう。でも決定戦がはじまるまで、06年の賞金ランキングトップだった山崎智也は、しっかりと決定戦に乗ってきた。

 山崎智也を応援していた人は、残念がっているにちがいない。中村のまくり&抵抗する瓜生に、あっという間に飲み込まれてしまったのだから。今回のエンジンでは、あの展開になってしまうと、もう出番がない。
 でも今年、とくに今年の前半は山崎智也の年だった。そもそも一枚落ちる今回の足でも、トライアルを3位通過できるだけのテクニックをもっているわけだ。当然、来年も主役を張るひとりとなる。
 まぁ、わざわざ書くまでもないか。「当たり前だ!」とファンに怒られるかもしれない。

 

 
2006_1224__074  そして、松井繁を応援していた人。おめでとう!
 まさに王者の競艇だった。宣言どおり、コンマ10ジャストのスタートを決めて、1マークを先マイ。そのあとは、どんどん後続を突き放し、レースタイムは1分45秒1。2着を3秒ちかくぶっちぎって、先頭でゴールイン。どこにも付け入るスキなんてない。
 抽選で引き当てた意中の5号機を、完璧なまでに仕上げた。優勝戦の展示タイムは、6秒42。出足は早く、回り足は鋭く、伸びも強烈、ピット離れも問題なし。なんだか、ひとりだけ違う規格、違う排気量のエンジンを使っているようであった。
 松井を信じたファンの耳にも、こんな声は聞こえてきただろう。
「松井の優勝戦1号艇? 出遅れるんじゃないか?」
 この声は結局のところ「枠・機力・技術ともに一番の松井がアタマだと配当が安い。だから何か不安材料はないか?」と考えた者の妄言であることを、松井は立証した。
 最後のターンマークを回りゴール線でスタンドにむかってペコリとおじぎをする松井。これは自分を信じてくれたファン、あのフライングから今年の賞金王を獲るまで応援し続けてくれたファンに対するお礼の会釈だったのだろう。
「この優勝で一回り大きくなった。もうひとつ上を目指します」
 優勝者インタビューで語る松井。王者といっても、玉座でドッカリと胡坐をかいているわけではない。来年もさらにスケールの大きい王となるため、水面を走り続ける。

 今年1年間の競艇に、松井がでっかいピリオドを打ったた。また1週間もすれば、あらたな長い文脈が綴られはじめる。
 来年、福岡でピリオドを打つのは誰になるのだろうか。
 応援した選手が決定戦を走っていた人も、シリーズを走っていた人も、はたまたどちらにも出ることができなかった人も、来年も好きな選手を追い続けてほしい。

一年間ありがとうございました。よいお年を。


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コメント

ファンには失礼ですが、あのスリット後の抵抗と2Mのまずい差しで瓜生を好きになった人は少ないかと思います。

投稿者: ラリーズクラブ (2006/12/25 0:38:53)

瓜生は嫌いではないですが、
自分もあの瓜生の1Mと2Mのターンはいただけないですね。
特に1Mはツケマイにいって2M勝負に持ち込んでほしかった。
競艇ファンとしてあそこで攻めなきゃレースはおもしろくないです。
1号艇に強敵がいるだけに、何もせずに1着が決まったことが残念。

投稿者: ウィングス (2006/12/25 15:53:54)

いつも楽しみに読ませてもらってます。
選手へのあたたかい思いが伝わる、やさしい記事ですね。
もう少し、厳しい意見があってもいいような・・・
私は松井選手のファンで、今回の優勝は本当に嬉しかったです。
記事と同じく、毎回写真も楽しみですが、
せっかく賞金王とったのに、ウイニングラン、表彰式の写真がないのがとても残念です!
オーシャンの時は、よい写真満載だったのですが。
お忙しいとは思いますが、ひとつの意見と受け取ってください。
来月のボートボーイを楽しみにしています。

投稿者: natts (2006/12/27 0:30:16)
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