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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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優勝戦私的回顧

2007_0128__029 優勝戦

①出畑 孝典 87期・福岡
②三井所尊春 88期・佐賀
③江夏 満  89期・福岡
④大峯 豊  92期・山口
⑤石野 貴之 90期・大阪
⑥山本 修一 86期・岡山

「大村のインは日本一強い」
 今年の新鋭王座決定戦は、この言葉に沿いながら進んでいた。初日からバシバシと決まるイン逃げ。一方、まくりは外に流れてなかなか決まらない。普段は「進入不問、ダッシュ上等」のレースをしている新鋭たちも、6コースでは勝負にならないので、進入からもつれるレースが多かった。それはそれで面白いのだが、従来とは少々おもむきが違う新鋭王座決定戦だったように思う。

 左手に落ちそうになる夕陽を見ながら、ファイナリスト6名が乗艇する。風は弱まったが、あいかわらず舞っている。場所によっては追い風、場所によっては向かい風、といった感じだ。
2007_0128_12r_014  ファンファーレが鳴り、放たれた矢のように伸びていく艇があった。緑のカポック――山本修一だ。本人は「取れて4コースくらいまでかな」とコメントしていたが、一気に内4艇を飲み込む乾坤一擲のピット離れを成功させる。小回り防止ブイを回って、取ろうと思えばインまで取れそうな体勢に、枠なりや1236/45あたりを想定していたほとんどのファンに衝撃が走る。6がらみの舟券は軒並み高配当。ざわつくスタンドから、
「6なんて持ってねぇ~よ!」
 という悲鳴のような声が上がった。
 2マークを真っ先に回った山本だが、艇をそのままスタンド方向へ向けて流す。出畑が艇を向けるのを確認してから、助走距離が充分にある2コースを悠然と選択した。三井所は3コースに追い出され。スタート特訓でスローを重点的に練習していた江夏は、仕方がないといった感じで4カドを選択。5コースが大峯で、6コースが石野。山本が振り上げた拳は、つまらない予定調和をブチ壊し、レースの行方を盛り上げる。
 大時計が回る。ダッシュ3艇がうなりをあげて、つぎに内3艇が水しぶきを上げる。3秒前、2秒前、1秒前……。

2007_0128_12r_021 「外だ!」
 江夏のスタートが素晴らしい! と、思わず錯覚したが、よくみると三井所が1艇身以上立ち遅れていたので、そう見えたようだ。江夏がカドからグングンと伸びていく。2コースの山本も好発から伸びる。大外の石野もいい。

 2コースから伸びる山本は、1マーク手前で早々にまくりに構えた。インを突き放すべく、思いっきり握って、出畑のかなり上を回った。一方、カドから伸びた江夏は、山本の動きを確認した上で、出畑と山本の間に活路を求めた。

 

2007_0128_12r_031   出畑が江夏を張りにいく。2艇は失速。外を回った山本が流れ気味ながらも、まくり切ることに成功した。ここまで1着が1本もない選手が、バック入り口で先頭に立ったのだ。 自分でコースを奪って、自分でまくりに行ってレースを作って、バック先頭。完勝だ。そう、本当なら完勝だったはずなのだ。だが、出畑と江夏がやりあって開いたインに、青い小さな恐怖――大峯豊、怪物24号機を飼いならす男――が、飛び込んできていた。小さな恐怖は、あっというまに大きくなって、勝利を確信した山本に襲い掛かる。スリット裏では同体になって、2マーク手前では大峯が山本に半艇身ほど差をつける。
 2マークを先取りしたのは大峯。つけて回ろうとした山本だったが、暴力的な足をもつ24号機とは勝負にならなかった。1周2マーク、ラストチャンスで掴みかけたタイトルは、無情にも山本の手のひらからこぼれ落ちた。

 

2007_0128_12r_036  バック水面だけで新鋭王座のタイトルを奪い去った大峯。しかし彼にも恐怖が襲い掛かっていた。本人は「プレッシャーを感じないタイプ」とコメントしていたが、先頭に立って「初優勝」「GⅠ制覇」を意識したはずだ。その意識が、2周1マークでキャビテーションという形になって出てしまう。山本から奪ったタイトルは、大峯の手のひらからもこぼれ落ちてしまう。

 

2007_0128_12r_061  第21代新鋭王座に輝いたのは、大阪の石野貴之。競艇王国といわれる大阪から、史上初の新鋭王座が誕生した。
 山本がつき、大峯がこねた、新鋭王座のタイトル。石野が最後に食ったわけだが、座りしままに食ったわけではない。
 まず、大峯がキャビった2周1マーク。石野は、
「大峯は初優勝がかかっているから、ターンマークをハズすかもしれない」
 と考えながら、差しを入れたという。
 わたしは選手でないのでわからない。でもガムシャラにレースをしているときに、そんなことが思い浮かぶものなのだろうか。もし「大峯は初優勝」という思いが浮かばなければ、大峯の内から強引に突っ込んでいたかもしれない。そうなると(タラレバだが)石野の優勝はなかったはずだ。ターンマーク手前で外に切り返せた冷静さ。これが石野の勝因だった。

2007_0128_12r_126  もうすぐ陽が落ちる大村水面。ウイニングランをする石野を見ながら、隣にいる記者がつぶやいた。
「大村のインは日本一強い? 誰が言ったんだ!?」
 1着は6コースの石野。2着は5コースの大峯。いや。散々繰り返し言っているのは我々マスコミだし、実際に今年の新鋭王座決定戦は、この言葉に沿いながら進んでいた。しかし、最後の最後にどんでん返しが待っていた。

競艇はコースごとに有利不利がある競技だ。でもコースがすべてではない。インが強いと言われた大村新鋭王座決定戦、石野貴之はあたりまえの事実を、あらためて教えてくれたような気がした。

(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/姫園淀仁)


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