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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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万谷章、63歳の挑戦⑤

 4着……2R、1号艇の万谷章親ビンは枠を主張してのイン戦。勝てば節間勝率5・80でベスト18も夢ではないポジションに立てる。準優へ、背水のスリットはコンマ17。一目散に先マイを目指したが、コンマ06の瓜生正義に並ぶ間もなくまくられた。4着で4日間の予選シリーズ終了。
_u4w0014_2  ピットに帰還した親ビンはサバサバとした明るい表情だった。支部の後輩・山室展弘が63歳の老体を労わるように、そしてその健闘を讃えるように微笑みながら寄り添う。親ビンもニッコニコの笑顔だ。
「お前のレース(1Rで山室が5カドから一気まくり)見て、ワシも頑張ろう思ったんじゃけどなぁ、あかんかったわぃ」
 それから勝った瓜生に近づき、肩をポンと叩いて祝福する。
「おめでとさん」
 恐縮しつつも照れ笑いを浮かべる瓜生。受験合格を喜び合う親子のようだ。瓜生の周辺に記者とカメラマンが群がると、親ビンはすっと身を引いてヘルメットを脱いだ。
――お疲れさまでした。どうでしたか、11年ぶりのSGの予選は?
 ナハハと照れくさそうに笑う親ビン。
「6着並べんでよかったわ。ワシだけ格下じゃからなぁ、ほんでも6着は取りたくないし、まあ……よかったな。ただ、スタートがなぁ、どうしてもちょっとちょっと遅れてまって……」
 Fを1本持っていることが悔やまれるのだろう。あるいは今節が人生最後のSG、F2覚悟で突っ込んでもいいのでは、という考え方もあるが、親ビンはそんなタイプの男ではない。地道に堅実に、施行者や他の選手に迷惑をかけない。それが何より大事だ、と思っている男なのだ。
 さらに、来年の4月には免許の更新が控えてもいる。64歳になっている親ビンはその時点での引退も考えているという。残り少ない競艇人生、Fを2本持って3カ月間も休むのでは画竜点睛に欠く。通算100Vの可能性も減ってしまう。そんな思いもあるだろう。
2007_0319__170 ――まだ、あと2日あります。節間1勝の目標が残ってますよ!
 伝えると、親ビンはうんうんと声を出して頷いた。
「まだまだやな。難しいけど、明日からも頑張るわ」
 最後に、定番の追い討ちを。
――勝ったら、万歳ですからね。絶対に万歳してくださいね。
 ナハハハ。万谷親ビンは歯を出して笑った。
「やっぱ勝つのは無理じゃあ。勝ったら競艇界が転覆してまうわ」
 節間1勝へ、通算100VへSG予選が終わっても、63歳の挑戦はまだまだ終わらない。親ビンのヘルメットには、こよなく愛するお孫さんのたどたどしい文字が綴られている。

「1とうがんばれ! ゆかり」
「そうりだいじんはいがんばってね☆たつひさ」

万谷章 3・3・3・6・4着 大健闘の末に予選敗退
(Photo/上・池上一摩、下・中尾茂幸、Text/畠山)


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