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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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飽くなき追求心――3日目、後半のピット

 相変わらず風は吹いているが、前半に比べれば風速が弱まってきて、8Rからは安定板が外された。風が和らいだせいなのか、かなり温かく感じられてきてもいて、このあたりの調整が選手たちを悩ます午後となった。後半レースに出走する面々は、早めに試運転ピットにボートを降ろして、回転数などを確かめている。松井繁、濱野谷憲吾、田中信一郎、8Rを終えた植木通彦など、錚々たる顔ぶれが試運転ピットにずらりと並んでいた。
Img_5415  何か意味があるのかどうかわからないが、同支部同士が長いこと話し込む場面も何度か目撃している。7~8Rあたりだったか、地元の期待を背負う濱野谷憲吾、田中豪、村田修次が、濱野谷と村田のボートのあたりで長々と会話を交わしていた。今節、3人しか送り込むことができなかった地元・東京支部。それだけに、結束も堅くなろうというもので、特にペラグループも同じである田中と村田は、よく一緒にいるところを見かけていた。今日は、大黒柱・濱野谷も加わっての作戦会議。それぞれになかなか好調な戦いを見せているが、この悪天候&気候の変化に、知り尽くした平和島のノウハウを今一度、確認しているのだろうか。
01_0048  ペラ室のほうから、最高の笑顔で鳥飼眞と瓜生正義が並んで歩いてくるのも見かけた。鳥飼は、キリッとした男っぽい顔つきが魅力だが、笑顔がまた素敵すぎる。それにあわせて、瓜生も人の良さそうな笑顔を見せているのだから、こちらも思わず笑顔になろうというもの。その10分後くらいだろうか、ペラ室の奥のほうで鳥飼と植木通彦がにこやかに談笑するのも、遠目ながら発見。好調・福岡勢、麗らかな春の陽射しに気分も高まる、といったところだろうか。(写真は瓜生&植木、ですね。鳥飼ファンの皆様、ごめんなさい)
_u4w0099  ほかでは、三嶌誠司&中岡正彦の香川勢、星野政彦&山本隆幸、向所浩二&魚谷智之の兵庫勢、また支部は違えど同じ東海地区の赤岩善生&井口佳典の組み合わせも見かけている。まあ、同支部や同地区で一緒にいる場面には、今日のみに限らず、しょっちゅう出会うものだけれども、なぜかそれが非常に目立っているように思えた、3日目後半のピットであった。

01_0437  午前中、まだ寒風吹きすさぶ頃に、中村有裕が装着場でモーターを丁寧に点検、調整しているところを見かけていたのだが、陽が傾きかけ、装着場にいるのが辛くなくなった時間帯に、とあることに気付いた。ユーユー、今日は12R1回乗りではないか! レースまでたっぷりと時間があったはずの今日、だというのにユーユーはわざわざキンキンに冷え込む装着場に出てきて、モーターと向き合っていたのだ。午前中の姿に、改めて驚かされた。やっぱり、この人はガムシャラだ! 11R発売中、ユーユーは展示ピットに自身の艇を係留させる前、一周だけ勢いよく水面を走った。戻ってくると、さらに2マークの奥で握り込みの確認。係留した後も、その場で丁寧に丁寧に点検を繰り返し、ずいぶん時間が経ってからようやく、装着場に戻り、そのままほとんど間髪入れずに展示控室に向かっていくのだった。若くして、この妥協なき姿勢。改めて頭が下がる。12Rは惨敗してしまったが、明日から巻き返せ!

2007_0318__296  最後まで作業を続けていたのは、ユーユーだけではない。3R1回乗りで2着、得点率も好位置につけている三嶌誠司も、帰宿バスの一便に乗り込むことなく、モーター調整に励んでいた。平田忠則も5Rで出走は終わっていたのにもかかわらず、さらなる機力向上をはかる。鎌田義も、8Rを終えるとペラ室にこもった。午後の遅い時間帯となり、すっかり閑散となったペラ室で、小気味のよい金属音を発し続ける。やはり、選手のこうした飽くなき追求心は、いつ見ても爽快なものだ。しかも、三嶌にしろ、平田にしろ、鎌田にしろ、決して悲観的な成績というわけでもないのである。気合というのは、いろんな形で顕在化する。競艇においては、静かにモーターやペラと向き合ったときにこそ、強烈にそれが表現されることがある。だから僕も、選手たちのこうした姿を追いかけたくなってしまうのだろう。

Cimg2587  などと言いつつ、明るく朗らかな選手の姿もまた、実に心地いいものである。今節は、田中信一郎がとにかく明るく、今日はJLC解説でおなじみの山本泰照さんとじゃれ合っていた。山本さんは今日からピットレポートを担当されているのだが、緑のカポックを着込みながら、「岡山弁で喋って」とさんざん繰り返している。生放送が始まっても、カメラの後ろ側から盛んに山本さんにちょっかいを出そうとする信一郎。カポックを着終わると、山本さんの肩をポンポンと叩きながら、展示控室へと向かっていった。もちろん、生放送中でしたよ。JLCをご覧だった方、8R出走前のピットレポートに緑のカポックが登場しませんでしたか? 信一郎です、はい。写真はちょいとわかりづらいかもしれませんが、左のほうに緑のカポックをつけてる信一郎がいますよね? 

Img_9070  さて、10Rは一日早い勝負駆け、そりゃあ気になるってもんでしょう、山崎智也。4着に敗れ、明日は1着でも相手待ち。可能性は当然残されてはいるものの、大変な苦境に立たされてしまった。レース後の智也は、なぜか微笑んでいて、山本隆幸や田中豪ともその表情を崩さずにレースを振り返っていた。そんな智也を僕は不思議に思いつつ眺めていたのだが、これまでを思い返してみれば、敗れて笑う智也を何度も見てきたような気がする。ただし、成績好調のときの無邪気にすら見える笑顔ではなく、どこか微妙な笑い方の智也だ。あれは菊地孝平が優勝した05年MB記念の優勝戦後、2着に敗れたというのになぜか「ラッキー! キャハハッ! ラッキー!」とはしゃいでいた智也。去年の総理杯では、予選落ちが決まった瞬間、なんだかやるせなさそうに笑みをこぼしていた智也。そして今日は、透明感あふれる微笑を見せていた智也。もしかしたら、智也は煮えくり返るような悔恨を、笑うことで押さえ込んでいるのかもしれない、と思った。この男、我々が想像するより、その本質はずっと男っぽい。カポックを脱ぎ、控室に戻るときにもいっさい崩れない微笑を見て、僕はそう思ったのだった。(PHOTO/中尾茂幸=鎌田 山田愼二=東京勢、山崎 池上一摩=兵庫勢、福岡勢、中村 黒須田=信一郎 TEXT/黒須田守)


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