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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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優勝戦私的回顧

_u4w0114_2  一生の間に、どれだけ0.01秒という時間を意識することがあるのだろう。

 私は「コンマ01の電撃スタート!」なんていう表現をよく使う。でも正直なところ、0.01秒と0.02秒の違いなど肉眼ではわからない。ただスリット写真をあとから見て、しかも数字が書き込んであるから、それが0.01秒であるとわかるだけだ。
 もちろん、自分の人生で0.01秒を意識することなんてないし、自分の人生から0.01秒が失われたとしても、一生の間にする瞬きの回数が1回減るくらいなものである。 

2007_0321__030  午前中は低かった気温が、午後になるとグングン上がってきた。優勝戦が近づくにつれ、追い風も強くなってきた。有利になることを「風が向く」というが、本当に植木に風は向いていた。背に風速5mの風を受け、まさに順風満帆。のはずだった。

 スリットは横一線で全艇が通過する。
 1マークを植木がしっかりと回った瞬間、なんだかゴニョゴニョと歯切れの悪い実況が耳に入った。対岸の大型ビジョンには植木の艇がアップになって映っているが、「スタート正常」の文字はどこにもない。そのまま2マーク手前まで進んだとき、アナウンスが入った。

植木通彦  +0.01
濱野谷憲吾  0.00

2007_0321__039  勝者と敗者の間にあった時間。わずか0.01秒。

 0.01秒だけ速くスリットを通過してしまった植木が失ったものは、優勝賞金の4000万円、むこう1年間のSG出場権……。返還金額は17億4522万7700円。

 競艇なのだから、あらたまって書くようなものではないのはわかっている。コンマ01でも出ればフライングだし、タッチスタートでも入れば万事OKだ。
2007_0321__052  ただ植木が失ったものが大きすぎて、レースを見ていてもいまひとつ焦点が定まらなかった。いつまでも消えない場内のどよめきが、耳に入ってきた。

 2マークを回り、はるか400m先の掲示板に上がった①の文字を見たとき、植木は何を思ったのだろう。艇の中に伏せていた体を起こして、スタンドにむかってお辞儀をしたとき、いったい何を考えていたのだろうか。なんだかレースよりも、そっちのほうが気になってしまった。

2007_0321__070  優勝した濱野谷の決まり手は「恵まれ」。でも、単に恵まれたわけではない。

 タッチスタートを入れてきた精神力もさすがだし、なによりバック水面では3番手を追走していたのだ。1周2マークで植木に追いつこうと握って流れた吉田を見逃さず、ターンマークを中心にしたコンパクトスイングのような差しで2番手争いに浮上する。

「1周2マークを回って(フライング艇の掲示板に)3がついていなかったので、あとは気を抜かずにしっかりターンマークを回りました」
 レース後、濱野谷は述懐している。
 つまり「フライングかもしれない」と思いながらも、冷静にバック水面を追走して、しかも吉田が流れたのを見逃さずサイドがかけた差しを入れたわけだ。

_u4w01035  濱野谷のSG優勝は6年前の01年賞金王シリーズ以来。あのころの濱野谷は「とにかく握って回る」という〝熱〟を帯びたイメージが強かった。だが今節の濱野谷から感じたイメージは〝静〟。熱がなくなったわけではなく、熱のまわりを冷たい何かがコーティングして一回り大きくなったような感じだ。

 悲願の地元SGを制した濱野谷と、復活の烽火を上げるタイトルを手元まで手繰り寄せながら崩れ落ちた植木。濱野谷は初SGを取った思い出の地〝福岡〟賞金王決定戦の特急券を手に入れて、植木は地元〝福岡〟賞金王決定戦の出場権利を失った。

ふたりを分けた時間は、0.01秒。

(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/姫園淀仁)


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