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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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戦いを待つ男たち

1r0013400  静かな朝。そんな印象が強い午前中のピットだった。
 とはいっても、選手の動きが少なかったわけではない。準優勝戦メンバーを中心に、いつものSG準優勝戦の朝よりも、作業をしている選手の人数は多かったと思う。
 それでも、ピリピリしたようなムードは感じられず、全体として「落ち着いた空気」になっている気がしたのである。やさしい春の日差しのせいかもしれないが、選手それぞれが闘志を内に秘めており、外に向けては発散していないように受け止められたのだ。
 とくに飯島昌弘がそんな印象を強くしていたのかもしれない。1R前にピットに行くと、装着場の隅で、いたわるようにボートを拭いている姿が見かけられたのだ。よく目にする光景ではあるのだが、その作業は本当に長く、2R前には陽の当たる場所にボートを移し、さらにボートを拭き続けていたのである。
 これだけ丹念にボートを拭いている選手はなかなか珍しい。整備面では、手を出すところがない段階に来ているということではないのだろうか。

2u4w0010  整備室でも、1R前から選手は見かけられた。ギヤケースに手を入れていたのが松井繁で、本体を整備していたのが三嶌誠司と鳥飼眞だ。それぞれに慌てているような感じはなかったが、黙々と作業を進めているため、強い集中力を感じられたものである。
 とくに三嶌は、初日から本体に手をつけていながら、ここにきて、まだこうした整備を続けているのだから頭が下がる。
 それでもやはり、その様子は自然体そのもので、2R後の引き上げ時などには植木通彦と楽しげに話をしていた。

3u4w0045  その植木もまた、ピットの空気を落ち着いたものに変えていた一人といえよう。最初に見かけたのはJLC解説者の清水克一さんと立ち話をしているところだったが、植木は時おり見せていた笑みは実にすがすがしいものだった。昨年の競艇王CC優勝戦の朝にも植木と清水さんが30分近い長話しているところを見かけているが、そのときと変わらずリラックスできているようだった。
 JLCのインタビューを受けているときなどは、その話し振りは淡々としていたが、取材中にも時おり浮かべられていた笑みは実に自然なもので、久しぶりに主役の座についている現在の状況に対しても、気負いはまるでないようだった。

4u4w0053  安田政彦、井口佳典らは早い段階でボートを水面に下ろしていたが、その動きには慌しさはまるで感じられなかった。
 魚谷智之は、山崎智也となにやら楽しいそうに話していたし、鎌田義はいつもと変わらず肩で風を切るようにピットを闊歩していながらも、顔なじみの記者などに声をかけられれば、男惚れするような爽やかな笑みを見せていた。
 濱野谷憲吾や田中豪は、「さすがにホーム」といった落ち着きでペラ小屋での調整を続けている時間が長かった。吉田弘文、瓜生正義ら好調九州勢も、2R後に深川真二の手伝いのために出てきているところを見かけられたが、「ここは博多?」と錯覚させられるほど、伸びやかなムードを醸し出していたものだ。
 また、装着場で熱心にモーターをチェックしていたのが市川哲也だったが、そのまなざしはどこまでも“まっすぐ”で、表情だけでいえば、今朝見た選手のなかでももっとも惹きつけられるものがあったほどだ。
 解説の清水さんに対しても、「(足の)雰囲気が良くなってきている」と話していたので、期待したいところである。

5r0013430b  また、2R後には寺田千恵が平田忠則に話しかけているところが見かけられた。こう書けばテラッチに怒られるのは間違いないところだが、なにやら母親が息子に対して激励しているようにも見え、平田は「ありがとうございます」と腰を折って、礼を言っていた。
“テラッチ通”(?)のK記者によれば、テラッチは平田に対して、「あんまり気負いすぎて、フライングを切ったりしちゃダメよ」みたいなことを話していたのだという。
 で、これが、いらぬ老婆心だったかといえば、そうではなかったようだ。平田はたしかに気負いすぎていたことを素直に認め、それを諭してくれたテラッチに礼を言ったのだという。
 SG準優勝戦――。「常連」と呼べる選手はいる一方で、それが「数少ないチャンス」となっている選手がいるのは当然である。
 気負いと集中力は紙一重。植木たち銘柄級の選手たちの貫禄にあふれたレースぶりも楽しみだが、明日を掴もうとしているこうした選手たちの奮闘も楽しみでならない。
(PHOTO/池上一摩+内池=1&5枚目 TEXT/内池久貴)


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