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ボートレース特集 > 気合、勝負駆け――4日目、前半のピット
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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 ボートレース特集

気合、勝負駆け――4日目、前半のピット

2007_0419__748 「勇ちゃん、ごめん!」
「おぉ、締められたなあ、あははは」
 4R終了直後、刀根辰治が平野勇志に、スリット後に絞っていったことを詫びていた。4コーススローの平野はやや凹んで、5カドの刀根がその上を叩いた形だ。
「絞ったはいいけど、5番(松野京吾)とガチンコになっちゃって」
「うんうん」
 果敢にマクろうとした刀根だったが、それより先に松野がターンマークに突入しようとしていたのだ。迷惑かけたのに、勝てなくて……そんな“仁義”を切っていたわけだ。刀根を平野は責めようとしてはいなかった。それどころか、にこにこと笑っていたのだから、「レースだもの、そういうことだってある」と、こちらも“仁義”を切ったのだろう。二人は同期生という親しさもあるわけだが、それ以上に、戦い終わればノーサイド、の精神が選手たちにある。チャンスとあらば、ギリギリであろうとも、そこに突っ込むのが競艇選手。長い時間をそうやって過ごしてきた彼らなのだ。
 刀根と平野は、勝負駆けの権利をすでに失っていた。そんなことは関係なく、勝ちに行き、激しいレースを繰り広げる。勝負が懸かっている選手たちであれば、なおさら厳しく勝利を目指すのは当然だ。

2007_0419__400  3R前だっただろうか、高山秀則が検査員室の壁にもたれて、ペラをじっと凝視していた。ほとんど身動きもせず、ひたすらペラを見つめる。よく見れば、ペラを小刻みに動かしているから、おそらく光の当て具合によって、微妙な部分を確かめているのだろう。それにしても、ただペラの羽根のみに集中している高山の神々しさはどうだ。誰も声をかけられないほど、ピリピリしているわけではない。事実、刀根辰治に声をかけられて、少しの間ペラから目を離し、刀根と談笑したりもしていた。それでも、またペラに視線を戻すと、再び不動の男へと変身する。4着2本なんて条件は、この人にかかれば楽勝だとしか思えない。
2007_0419__284    整備場の真ん前に置かれていたボートは、古谷猛。ここにボートがある場合、多くは整備室に姿が見えるものだが、古谷の姿はどこにも見当たらない。ペラ室かとも思ったが、モーターにはペラが装着されていて、そういうわけでもなさそうだ。古谷、どこへ行っちゃったんだろ……。と思っていたら、水面のほうから小走りにやって来る古谷。ボートのところまで来ると、「ヨシッ!」と小さく呟いた。そして、ボートを押して、リフトのほうへ。着水してからは、淡々とした表情で回転をチェックしていた。「ヨシッ!」の気合、印象的だった。
2007_0419__497  古谷と入れ替わるように、河合良夫が装着場に姿を表わす。ペラを手に、ややうつむき加減で、ゆっくりゆっくりと歩を進めている。開会式での元気いっぱいな河合とは裏腹に、ピットでの河合は気合を腹の底に溜めて、物静かな雰囲気。笑顔はそう多くは見ることはできない。今日の河合は、そんな通常モードを闘争心モードに切り替えた感じ。何より、その一歩一歩丁寧に踏みしめるかのような足取りに、気合が表現されているように思えた。1着条件の勝負駆け、果たしてその気合が結果につながるかどうか。
Cimg2769  2Rを戦い終えたばかりの久間繁が、ボートからモーターを外した。架台に乗せて、そのまま整備場へ。一節間、とにかく整備をし続けている久間は、さらに手を入れようとしているのだ。モーターから外したのはリードバルブ。整備室に持ち込んで、高山秀則(あら、いつの間に)の隣で調整を始めた。2R4着で、後半は1着条件の勝負駆けとなった。1勝4着4本という久間にとって、厳しい条件には違いない。しかし、決して諦めることなく、とことんまでモーターをいじりまくる。この思いが届けばいいなあ、そう思わせられる久間の姿勢だった。
Cimg2774  勝負駆けに失敗してしまった者もいる。ドリームメンバーである新良一規はついに、1着を1本も取れずに、厳しい立場に追い込まれてしまった。今日は1着条件、しかし2着。ピットに戻ってきた新良は、さすがに首をひねっていた。出迎えた小林昌敏らも、顔つきは冴えない。5カドから、素晴らしいスタートを切って、マクる態勢は作ったのだ。しかし、どうやら追い風がダッシュ艇にとっては仇となって、内に伸び返されてしまったらしい。追い風が、逆に勝負駆けの向かい風となってしまった皮肉。それでも、レース後はすぐに機歴簿を確認に行ったのだから、これぞSGウィナーだ。

Cimg2773  さて、我らが気になる大西英一。3着2本の勝負駆けに臨む今日、1走目は4着。後半は2着が必要になってしまった。レース後、カポック脱ぎ場に追いかけていったのだが、出走選手たちとレースを振り返りはしていたものの、去年のような快活さは見せていなかった。去年の大西とは何かが違う、今年の大村名人戦。だったらなおさら、タンヤオ脱却の1着が見たい。後半は1号艇、逃げ切りを!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=後半3枚 TEXT/黒須田守)


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