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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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最高の男たち!――準優勝戦後半のピット

1img_1387  準優勝戦最初の10レース。勝ったのは加藤峻二で、2着は山口博司だった。
 レース直後から加藤はニッコリ笑っていたが、山口の顔にははっきり憔悴の色が浮かんでいた。ヘルメットを脱げば、ともに汗だくになっていたことも、この熱戦と“熱い結果”を象徴しているようだった。

 この両者は、今節の最年長!!と最年少!でもあるのだから、レース後の共同会見でも、その辺りについてが話題になることが多かった(この記事2枚目の写真は、加藤と、今節では加藤に次ぐ年長者となる金井秀夫=11R・6着とのツーショット)。
2img_9799  とくに加藤の場合は、“GⅠ優出最年長記録”となることもあり、それを指摘されたが、「なんかあるたびにそれを言われるんで」と、顔をほころばせていたものだ。
 対する山口は、自ら「一番の若手と年寄りが1・2着しましたからね」と言って、笑顔を見せている。
 地元・長崎の最年少選手であるため、節間を通してレース前後にやらなければならない仕事も当然多くなるので、「最初はイヤだなと思ってたんですけど、みんな、自分のことは自分でやってくれるんで、楽しいですね」と続けて、レース直後とは一転して、ご機嫌な口調になっていた。
 優勝への意気込みなどを訊かれた際には、加藤は「そういうのは特別ないんですけど、年々チャンスは少なくなっているので、優勝戦乗ったからには……」と素直な気持ちを話している。そして、山口は山口で「そこ(優勝)まではあんまり……。気合いを入れすぎると、いつも赤ランプなんで」と記者を笑わせていたが、それもまた山口らしいところだった。

 とにかく、準優勝戦一発目から“走る人間国宝”と“地元のホープ”が優出を決めたのだから、こちらの興奮も自ずと高まってきたものだ。
3r0013844  ただしである。この結果の陰には、山口と同じく地元・長崎支部に所属する井川正人が、進入において鈴木幸夫の前付けをブロックした一幕が見られていたのも大きかったはずだ。レース後、井川は、同じ歳の鈴木に対して「ごめんね。博司が泣きべそをかいてたから」と謝り、鈴木は「ハハハハ」と苦笑いしている。
 つまり、レース前から山口は、鈴木の前付けを警戒して、弱音に似た言葉を井川に洩らしていたのだろうし(冗談の部分も強いのだろうが……)、そのことが、このブロックにつながっていたわけなのだろう。
 もちろん、井川にしても、「自分が勝つため」の意味も含めて、こうした選択をしていたには違いない。
 3着に敗れたレース直後には、ヘルメットをしていてもハッキリわかるほど悔しそうな顔をしていたし、レース後ずいぶん時間が経ってから再び鈴木と話をしていて、笑いながら別れたあとには、「うう~ん」と唸るように首を傾げていたのだ。
 その後、「惜しかったですね」と声をかけると、また、うう~んと顔をしかめたので、「男気のブロックでした」と続けてみると、「あとから考えると、ああしておけばよかった、こうしておけばよかったって、いろいろ出てくるんですよね」と苦笑していた。
 そんな言葉からも、優出に賭けていた気持ちの強さがわかり、井川の男らしさと優しさ、そして勝負師らしさに、改めて男惚れしたものだ。

4img_1414  11レース。勝ったのは荘林幸輝で、2着は原田順一だ。
 こちらもレース後の表情が実に対照的だった。荘林はレースから引き上げてくるとすぐに他の5選手全員に挨拶に回っていたのに対して、原田は“二本の指”を立ててアピールしながら(何十回もアピールしていた!)、満面の笑顔を記者陣に送っていたのだ。この二本指は、Vサインだったのかもしれないが、指の向きが裏返し(自分向き)になっていたので、「2着! 2着!! やるでしょ、オレも!」とでも言いたかったのではないかと思われる。

 荘林は午前中に、朝は準優のための作業をしないで、スタート特訓後にそれに合わせた微調整をする予定と話してくれていたが、その言葉どおり、特訓後にペラ小屋で作業をしていたので、そうしてきっちり足を仕上げられていたのだろう。
 共同会見でも「いい足してます」「(優勝戦も)1号艇ならこのまま行きます」と話して、「大村は相性のいいところなんで、優勝戦に乗れて嬉しいし、自分では楽しみにしてます」と続けている。
 本人は“運が自分のほうに向いている”とも感じているようなので、1号艇に乗ることになった明日のレースは実に楽しみだ。

5img_9876  今日の8レースが終わったあとには、10レースから12レースまでのスタート特訓が行なわれていたが、原田はそれに参加せず、アリーナから様子を見守っていたので、「特訓に出ない理由はあるんですか?」と訊いてみた。すると、「う~ん」と、どう答えればいいかと悩んだ顔をしたあとに「朝の5Rのあとにしましたんで。それで、だいたいわかりますし、何回やっても何百回やってもいっしょなんですよ」と話してくれた。
 さすがに歴戦のツワモノは違う! 改めてそんなふうにも実感されたが、共同会見でもこの人は「今回は準優にまで乗りたかったんで(優勝戦は)もういいです」「名人戦っていうのは、獲れる人は獲れるけど、獲れない人はいっぱいいるんで、優勝戦に乗れれば十分です」などと言って、記者陣を笑わせ続けていたものだ。
 ただし、荘林が自分に運が向いてきているのを実感しているように、今の原田にも“何かの力”が作用しているようにも思われてならない。それは、NIFTY主宰・黒須田守が送る“祈りのテレパシーの作用”などでは決してないはずだが、この自然体の原田には、何かをやってくれそうな雰囲気がずっとあるのだ。明日の優勝戦で軽視することなどはできないだろう。
 原田は「昨日、準優に乗るため、3着か4着を取れればいいいと思って、回り足を重視していたのがよかったのかもね」とも言っていたが、そうした部分での“風向き”というものは、こうして“結果”につながってくるものなのだ。10Rを勝った加藤にしても、午前中の作業ではずっと「回り足重視」の足を作り、それがプラスに出ている、と話していたが、今の大村には、そうした足が向いているかもしれないのである。

6r0013810  そして12レース。勝ったのは大嶋一也で、2着が小林昌敏だ。こちらの2人は、筆者が見ていた限りでは、それほど長い作業をしている様子はなく、悠然と過ごしていたものだった。
 大嶋は、午後の時間帯に、同県の石川正美の言葉に熱心に耳を傾けながら、ペラ調整をしていた時間があったくらいで、あとは、一人のんびり過ごしている時間が多かった。
 小林にしても、去年の名人戦ではペラと向かい合っている時間が多かったが、今日に限っていえば、そうした時間もほとんど確認されず、時おり悠然とピット内を歩いている姿が見かけられただけだった。
 機力に対してはほとんど問題がなくなっている実力者2人が、勝つべくして勝ったレースだったともいえるのかもしれない。
 共同会見において大嶋は、名人戦を闘っている感想を訊かれ、「しょっちゅう(開催されたり出たりするの)はいいですけど、年一回くらいなら」と笑って答え、この独特のシリーズの中でも、自分らしく過ごせていることを窺わせていたものだ。
 優勝戦のコース取りについてを訊かれると、「3コースでいいです」と答え、誰かが内を狙ってきたときには「入れないと思います」ともキッパリ言い切っている。
「(優勝戦までくれば)もう、(機力云々ではなく)スタートと1マークの判断だけですね」とも言葉を続けている。
 シリーズ開幕前から“大本命”にされていた大嶋は、そうしてどっしりと自分の立ち位置を見つけられているわけなのだ。

7img_1212  小林は共同会見で「抜けた足ではないですけど、乗りやすいと思います」「優出メンバーと比較しても遜色ないと思います」と答えている。そうして足が仕上がっているからこそ、今日一日をあくせくすることなく過ごせていたのだろう。
 優勝に対する意気込みを訊かれると、「外になるので……。内の人が遅れてくれればチャンスはあるんですけどね」と答えていたが、外からのスタートは「わかっています(=見えている)」ということなので、こちらも決して軽視はできない存在である。

 明日の優勝戦は、走る人間国宝もいれば、実力最右翼の選手もいて、地元のホープもいる。SGで優出19回の記録を誇る選手(荘林)もいれば、ダービー王(原田)もいて、伏兵もいる。
 本当に最高のメンバーが揃い、個人的には、優出6ピットのメンバーが埋まっていくたびにSG以上にワクワクしていたものである。
(PHOTO/山田愼二、内池=井川&鈴木+大嶋&石川 TEXT/内池久貴)


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