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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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ひたすら幸せ――名人戦、前検のピット

Cimg2638  H記者の記事によれば、全員でのべ40万走、ですか。凄すぎる。しかも、ただいたずらにレース数をこなしてきた面々ではないだけに、返す返すも素晴らしい。
 それだけの経験を積み上げてきたのだから、GⅠだろうと何だろうと、特別なことなどする必要はない。ひたすら繰り返してきた作業を、今回も粛々とするだけだ。特別な気合、とでもいうものはあるだろうが、浮き足立ったり普段と違うことをやろうとしたりする人たちではない。前検だって、もう何百回も行なってきたのだ。自分のスタイルに従って、やるべきことをやる。そんな仕事人たちが、52名もそこにいる。ハッキリ言って、素敵な空間だった。(写真、いちばん手前のバンダナが気になる大西英一選手です)

Cimg2641  装着を終えると、ほとんどの艇が着水した。装着場に残っている艇は数えるほど。早い段階から、思い思いに試運転や回転数チェックなどを行なっていたわけだ。これも、彼らがキャリアの中で身につけたスタイル、だろう。前検4班の山内直人が、係留所で黙々とモーターの調整に励んでいると、隣の係留所で原由紀夫が遠めにも言葉少なに山内とコミュニケーションをとっているのが目に入った。何度も戦いの場で顔を合わせ、しのぎを削ってきた戦友同士。水面に出れば、多くの言葉は必要ないのだろう。彼らの刻んできた歴史が、そんなところにも、不意に顔を出したりする。
Cimg2642  前検航走が始まり、まず1班が水面へと飛び出していく。3回のスタート練習、1周の周回展示が終わると、係留所にいた面々も次々とボートリフトへと早足で向かっていく。まあ、これはどんなレースでも見られる光景ではあるが、そんな日常的な場面からも、なんだか貫禄を感じたりする。普段ならそこには必ず若者がテキパキと率先して動き回るシーンが見られるのだが、今回はすべてが歴戦の強者ばかり。モーターを置く架台を準備しているのが河合良夫や村上信二だったりするのを見ると、やはりちょっとした驚きを感じずにはいられない。もちろん、そんな動きも彼らにとっては、何百回も何千回も繰り返してきたものにすぎないのだが。

2007_0416__262 前検航走を終えた選手たちが、整備場でモーターと向き合い始めた。単なる格納前の点検だけを行なう者、早くも整備の手をつけ始める者、さまざまだ。加藤峻二が、なにやら原田順一と笑顔で会話を交わしている。そこに村田瑞穂、金井秀夫も加わって、渋い笑顔の四重奏となった。ズバリ、カッコいい! 仕事の場で、あんなに素晴らしい笑顔を魅せられるのは、やはり年輪のなせる業。自分もあんなおじさんになりたい、とそう思う。
Cimg2656  加藤の後ろを通って、古谷猛が整備用テーブルのある部屋に飛び込んでいった。まずは機歴簿を真剣にチェック。それを終えると、すぐにテーブルに陣取って、リードバルブの調整を始めた。けっこう長い時間、リードバルブとにらめっこしていると、金井秀夫、高山秀則、河合良夫、友永健策、桑原淳一らが隣に座って、やはりリードバルブを調整し始める。装着場からは彼らの背中を眺める格好となるのだが、たくましい背中だ。いや、競艇選手は本来は小柄な者が多いわけで、巨体を持て余している僕と比べれば、むしろ華奢な部類に入るはずなのだが、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきた男の背中は、大きく見えるものだ。彼らは、背中でも戦いの歴史を語れる男たちなのである。

 もういちど、整備場に目を移すと、おや、西島洋一が電気系統を交換しようとしているのか、その一式の部分を外し始めた。整備士さんが駆け寄って、西島はアドバイスを受けながら、作業に励む。今日は、強風が吹き荒れ、水面はうねりまくっていて、「練習にならん」とぼやく選手もいるくらいの荒れ水面なのだが、そんななかでも足りない部分を早くも見つけたのか。
2007_0416__528  ふと整備室を見ると、佐久間理が早くも本体を外して持ち込んで、ピストンを外し始めた。慣れた手つきで素早く外すあたりも、キャリアの深さを思い知らされる。2つのピストンを手に整備室を出た佐久間は、いったん洗浄した後、部品室のほうへと駆け込んでいった。取材陣は立ち入ることができないエリアゆえ、遠目に眺めるだけで精一杯だったが、どうやら交換用のピストンを物色している模様。ピストン交換、だろうか。

2007_0416__535  装着場では、関忠志と鈴木幸夫のツーショットを発見。笑顔で何事かを話し合うと、ガハハハと笑い合って、それぞれの作業へと戻っていった。徹底イン屋同士の情報交換、だったのだろうか。同じレースを走れば、激しくインを取り合うであろう二人。しかし、陸に上がれば、同じ匂いを持つ同志でもある二人。きっと、彼らにしかわからない、特別な言語がそこにあったはずだ。あ、関、今度は松田雅文さんと談笑している。これもまた、イン屋同士の会話だ。
2007_0416__517  二人の横を、ダッシュで通り過ぎていったのは、おお、SGカッパだ。大嶋一也である。今日、SGカッパを着ていたのは、大嶋と高山秀則の二人だけ。そのうちの一人、大嶋は1班で前検航走を終えると、ひたすらピット内を走り回っていたのだから、なんだか不思議なものを目にしたような気になった。登番は下から5番目、今年が名人戦初出場。誰よりも働きまくるのは当然なのだろうが、それがSGカッパを着た大嶋なのだから、こちらとしては貴重なシーンを目撃したような気になろうというもの。大嶋ほどのキャリアであっても、ここに入れば新兵。やっぱり名人戦は、恐るべき舞台だ。

 つらつらと書き連ねてきたが、これらの場面を眺めていた僕は、ただただひたすら幸福であった。何気ない動きかもしれない。特別なオーラがそこにあったわけでもない。だが、黙っていても漂ってくる“本物の男たち”が発散する空気は、それを感じた者を幸せな気分にする。もう何度でも言うが、これもまた年輪のなせる業だ。幾多の試練を経験し、逃げずに立ち向かって乗り越えてきた者たち。激しい勝利への渇望を抱き続け、そのぶつかり合いに身を委ね続けてきた戦士たち。彼らにしか生み出すことのできない、幸せな空気がそこにある。競艇名人戦とは、そんな舞台で繰り広げられる、いぶし銀のバトルなのだ。

2007_0416__242  前検終了後、今日はさらに幸せな空気が立ち込めた。北原友次、長嶺豊、安岐真人、黒明良光、中道善博、鈴木弓子。あえて敬称略で呼ばせていただいたが、この6人がカポックと勝負服に身を包んで、ピットに現われたのだ。明日の10R発売中に行なわれる「競艇殿堂エキシビションレース」の出場者6名が、明日のレースを前に“前検”を行なったのである。
 いやあ、感動しました! やっぱり彼らは勝負服がよく似合う!(写真は左から北原、長嶺、鈴木、黒明、安岐、中道。枠番は仮のもので、本番は公開抽選で決定します)久しぶりに見た長嶺さんや安岐さんや中道さんの勝負服姿に、腹の底から興奮が噴出してくる。中道さんは、池上カメラマンにヘルメットを渡して、「変わってくれ」なんて照れていたけれども、やっぱりなんとなく嬉しそうな面持ち。鈴木弓子さんの勝負服姿は、初めてお目にかかりましたが、いやはや、美貌は健在です。あ、ご主人である鈴木幸夫の表情を見るのを忘れてしまった!
 数周の試運転(中道さんは1周で帰ってきちゃいましたが)、3回のスタート練習を見ていたら、もう、ほんと、たまらなく幸せな気持ちになってきた。だって、今、そこで、北原や長嶺や安岐や黒明や中道や鈴木が、走ってるんですよ! 実際に舟券を握って熱狂しつつ見ていたスーパースターたちが、水面を疾走しているんです! まあ、この荒れ水面だけに、かなりおっかなびっくりではあったけれども(笑)。鈴木さんは18年ぶりにボートに乗るそうだから、それも当然でしょう。Cimg2667 そんな彼らを、今節出場選手たちが“アリーナ”(大村のピット内にある、水面に面した広いスペース。新鋭王座の記事も参照してください)に出てきて、楽しさ半分心配半分で見つめていた。加藤峻二はイの一番に出てきていましたが、そう、北原友次は同期生ですね。北原は陸に上がってきて「爽快爽快」と笑っていたが、いやはや、どちらも凄すぎます。
 本当に幸せな名人戦、そして明日のエキシビションレース。やっぱり、匠たちの祭典は最高なのだ!(PHOTO/中尾茂幸=加藤、佐久間、関、大嶋、殿堂選手たち 黒須田 TEXT/黒須田守)


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