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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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どしゃ降りの中で…… ――優勝戦前半のピット

1r0013864  生憎……というには生憎すぎるほどの天気になってしまった大村競艇場。
 それでも、「朝一番のスタート特訓」が行なわれている9時半頃にピットに行くと、装着場の片隅で入念にボートの各所をチェックしている荘林幸輝の姿が見かけられた。
 荘林に続いて装着場に現われたのは、御大・加藤峻二だ。加藤がボートにモーターを着けようとすると、無言で荘林がそれを手伝い、加藤が礼を言う。そのすぐあとには原田順一がボートにモーターを着け、やはり荘林がそれを手伝った。
 朝早い始動だったが、これは基本的に検査を受けるための作業のようだった。
 山口博司は、整備室で、整備員と相談しながらモーターに手を入れていたが、他の選手はそうした動きを見せる様子はなかったのである(小林昌敏の姿は、こちらが確認した範囲では見かけられなかった)。
 朝一番のスタート特訓に参加した優出メンバーは、この山口と大嶋一也の2人だけだったが、こうした天気の中で慌てて調整をしても、それが結果に結びつきにくいという考えがあるからなのだろう。

2r0013897  いちど記者室に戻り、1レース前にもう一度ピットに行くと、作業をしている優出メンバーは誰も見当たらなくなっていた。
 昨日までなら、レースが始まれば、選手たちが水面際のアリーナ席に観戦に出ていたが、当然、そんな選手も一人もいない。アリーナ席の奥の屋根がある部分(選手控室前)の下で、数人の選手が遠目でレースを見守っているだけだったのだ。
 装着場には、ボートが整然と並べられ、作業をしている選手は、優出メンバーに限らず極端に少なく、「重い空気」がピットを支配していた。
 昨日は風邪気味と言っていた大西英一が待機ピットで入念に回転数チェックをしていたり、井川正人がペラ小屋にこもって調整に精を出していたり……、今節は苦しい闘いが強いられている新井敏司がモーターと格闘している様子などは見かけられたが、それはあくまで少数派の姿で、ピット内は本当にシーンと静まりかえっていたのである。その場にいると、こちらの気持ちまでが滅入ってくるほどだった。

3r0013898  2レースが始まろうとしていたとき、屋根の下のベンチに原田の姿が見かけられたので、「この天気で調整はどうですか?」と確認してみると、「しますよ」と即答してくれた。
 そして、「雨も降らないと、水が足りなくなりますからねえ。雨もまた楽しいですよ」とニッコリ笑ってくれたのだ。そんな言葉と笑顔によって、こちらの気持ちも少しだけ晴れてきた。
 原田は調整について、「今、(ボートを)下ろしてもアレなんで、特訓に出てからやりますよ」と話してくれたが、優出メンバーのほとんどは同じ考えなのだと思われる。

4img_1465  2レースのあとには荘林、大嶋、山口らがエンジン吊りの手伝いに出てきていたので、その後、荘林にも「この天気ではやはり調整が必要になってきそうですか?」と確認してみた。
 すると、「そうですね。5Rと8Rで特訓に出るつもりなんで、その感じでプロペラを調整します」とのことだった。
「その日になって、走ってみないと、わからないですからね。(ここまでくれば)もう自分との闘いだから、スタートだけです。……特訓で練習しますよ」と続けてくれている。
 エンジン吊りの際には、荘林はできるだけ多くの手伝いをこなそうとしているようにピット内を駆け回っていたのだから、精神面でいえば、本当にいい状態で優勝戦を迎えられそうな気配である(写真は、その後にボートを水面に下ろしたところ/言葉どおり、5R後に特訓に出ている)。

5img_9950  ちなみに書いておけば、前後の話の流れはわからなかったが、このエンジン吊りのあとに大嶋は、同県の河合良夫に対して「オレが何をやってもホメられん」と言って笑いかけていた(大嶋の写真は、5R発売中に行なわれた「優出選手インタビュー」に出る前にプロペラを着けているところ)。
 もちろん、冗談であるには違いないが、“若き雄”大嶋にとっては、この名人戦のピットに対してなんらかの違和感があるとはいえるのかもしれない。

 とにかく気になるのは空模様だが……、ちょうど荘林との話が終わったすぐあと、装着場の屋根を叩く雨の音がまた強くなってきたので、荘林は「これじゃ、カッパを着ないと……」と笑って、控室のほうへと向かっていった。
 その後、3レースが始まる直前には、雷が鳴り響き、稲光までが暗い空にフラッシュしていたのだから、決戦の日の天気としては悲しすぎる。さらに4レースが始まるときには視界もあやしくなるほどの雨になり、レース開始が少し遅れたほどなのだ。
 生憎……というには生憎すぎるほどの雨がうらめしい。
 しかし、4レースが始まる頃には、少しだけ空が明るくなってきた。
“最高のメンバー”が揃った優勝戦なのだから、このまま天気が回復していくことが祈られる。
 そして選手たちには、事故のない健闘を期待したいものだ。もちろん、優勝戦に出る6人に限らず、すべての選手に対しての願いである。
(PHOTO/山田愼二=4~5枚目、内池=1~3枚目 TEXT/内池久貴)


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