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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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手応え――初日、後半のピット

2007_0529__506  ん? 装着場の奥のほうに見えるは倉谷和信選手。なんだか長い棒を振り回しているように見えるが、何だろうか? ということで、つかつかと倉谷のほうに歩いていったら、途中でバッタリ、菊地孝平と出会った。いつも笑顔で挨拶や会話を交わしてくれる菊地だけに、こちらの顔も自然と緩む。すると、菊地がいつもとは少し違う風情でニヤリと笑った。ん? これは何かあるぞ。足は自然と、菊地のほうにすすすーっと方向転換だ。
 顔をさらにほころばせて、菊地は開口一番、言った。
「今節はやりますよ~」
 おぉっ。これはもしかして、絶好調宣言!
「今節は、いつもとは手応えが違う。自分の中でのイメージですけどね。優勝戦や準優勝戦に出たとしても、センターからでもいける手応えです」
 そう語り出したときには、真剣な表情になっていた。笑顔でちょっとおどけながら心中をあらわにし、真剣な顔つきに変化して具体的な内容を話す。これは、菊地の本音モードだ。モーターのパワーには不安はなく、今日の4Rは4着だったが、これは調整が合い切らずにレースを迎えてしまったものだとのこと。その後の調整でバッチリ仕上がったそうで、これが気合のこもった言葉につながっているのだ。ちなみに、昨日の前検で使ったペラは完全な伸び型仕様で、6コースになりそうなときなどに使う可能性はあるけれども、今後は今日仕上げたペラでのレースとなりそう。ともかく、明日からの菊地は手応え万全でレースに臨む。「やりますよ~」の言葉を信じたい。あ、でも「これは内緒ですよ~」と人差し指を口にあてて笑っていたので、皆さん、このお話は内緒ということでひとつ(笑)。今回の菊地の渾身走は、忍法ひそやか大作戦(?)なのだ。

Cimg2816  で、菊地とすっかり話し込んでから、「そうそう、倉谷選手は?」と急いで装着場奥に向かうと、おぉ、まだ棒を振り回してます。何かと思えば、ゴルフスイング。艇運職員さんに、スイングのアドバイスをしているところだったのだ。バックスイングでいったん止めて、腕の角度などを説明し、ゆっくり振り下ろしてスイングの軌道を解説する。住之江のピットでは、松井繁や太田和美が艇運職員さんの控室で過ごしているのをよく見かけるのだが、地元勢と職員さんの間に固い信頼関係が築かれているんでしょうね。ちなみに、時間帯は12R前。自分の作業を終えた倉谷、自分の仕事を終えたあとのコーヒーブレイク、ってところだったのでしょう。

2007_0529__612  菊地と同様に、「足は良くなった」とキッパリ語ったのは、横西奏恵だ。引いたエンジンは4月に山崎智也が優勝した素性機で、長嶺豊さん情報によれば「智也が、今節も引きたかった言うとったわ」というほどのもの。しかし、今日はゴンロクで、苦しいレースぶりが気になっていた。顔を合わせて声をかけたときには、思わず「残念な成績でしたが……」としかめっ面になってしまった僕だったのだ。ところが、奏恵ちゃん、ニッコリ笑って、「調整して、良くなったんですよ」。ま、マジっすか?「前半は調整が何にもわからない段階でレースになってしまって、でも調整したら良くなったんですよね」と、ちょっと弾んだ声を出した。長嶺さんも頑張ってほしいって言ってましたよ~、と伝えると、さらにニッコリ。「頑張りますよ~!」。うぐぐっ、かわいいなあ、奏恵ちゃんは……てなことはともかく、明日は2日も早い勝負駆け、カッコいい走りを期待してますよ!

2007_0529__114  一方、気になる動きを見せていたのは、田中信一郎だ。H記者が東の横綱に指名した機力、ピットで見せている雰囲気――なんだか目を奪われて仕方がないほどの、眩しいオーラを放っているのだ――からして、今節はかなりやってくれそうな気配を感じていた。11Rも、服部幸男に逃げ切られたものの、イン絶対王朝のような今日の住之江で3コースから2着を確保したのだから、上々の初戦だったはずだ。ところが、着替えを終えた信一郎は、整備室に飛び込んで本体をいじり始めたのである。作業時間はもうほとんど残されていないから、大急ぎでの整備となったわけで、それでも明日に回さず今日動いたのは、よほど気になることがあったということだろう。12R後に整備室を覗くと、もう姿もモーターも消えていたが、明日の信一郎にはちょっと注目してみたい。

2007_0529__460  11Rといえば、引き上げてきた田村隆信の悔しそうな顔が印象に残った。6号艇4着は、良くはないがすごく悪くもない成績と言えるはずだが、道中3番手の局面がありながら、池田浩二の全速ツケマイに逆転を許してしまっていたから、笑って帰ってこれるわけはなかった。ふと思い返すと、これまでのピット原稿で田村のことに触れたことは、意外と少なかったような気がする。SG覇者であり、SG常連であり、だからSGのピットでは何度も顔を合わせている田村なのに(ついでに言えば、森高一真が僕をからかうときなど、よく隣にいたりしたものだ)、どういうわけだか、田村に特別な注意を払ったことが少ないように思うのだ。理由は簡単なことで、田村は感情の起伏をそれほど強く露わにするタイプではないし、大一番を前にしても淡々と振舞うことができるし、大きく目立つ動きをしてみせるようなこともあまりないからだ。本当は、これってスゴイことなのである。あの若さでやりこなせる芸当ではないし、それが田村の強さの一要素であることも間違いないはずだ。だが、そんな田村が今日、明らかに悔しさを隠そうとしなかった。その後は、何度もモニターに見入ってレースをチェックしていたが、それもまた悔恨がさせていたことだろう。勝手な言い分かもしれないが、こんな田村を見たかった。天才レーサーが見せる感情は、たまらなく魅力的だからだ。明日は勝って大笑顔の田村が見たいぞ。

2007_0529__356  12Rドリーム戦。昨年の賞金王決定戦優勝戦と1人が入れ替わっただけで同じメンバー構成となった。リベンジマッチとも言えたこのレース、終わってみれば松井繁が返り討ちに斬って取る結果となったのだった。3着・瓜生正義、6着・中村有裕までが同じ着順。4着だった魚谷智之は2着、5着だった山崎智也が4着と少しだけ着を上げたが、まあそんなことは偶然の領域のお話だろう。ともかく、レース後の松井は実に堂々としていた。去年の12月、歓喜に沸いていた彼とはまた違った、存在自体があまりにも巨大に屹立している、といった感じの王者像。まるで、勝って当然といったたたずまいで、圧倒的なオーラを立ち上らせていた。JLCの勝利者インタビューで、しかし苦しさも感じていたと語っていた内容は、本音だろうとは思う。だが、その苦しささえ力に変えたとしか思えないほどに、松井は大きく大きく見えた。本当は、僕の半分以下しか体重がないんですよ、彼は。身長だって、僕のほうが大きい。なのに、間近で見た松井は、実にでっかかった。やっぱり、この人の存在感は現在の艇界最大ではないだろうか。

2007_0529__232  さて、ドリームは残念ながら4着の気になる山崎智也。1周1マーク、松井の上を握って攻めたのは、何かの決意の表われだったのか。レース後は、意外とさばさばした感じで、暗い表情は見せていなかった。もっとも、総理杯のときに書いたが、これが智也の本音を表わしているかどうかは微妙なところで、明日以降の様子も気にする必要はある。レースを見る限り、まだまだ調整の余地はありそうで、明日も忙しく動き回っているような予感がするのだが。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=倉谷 TEXT/黒須田守)


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