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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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初夏のメッカ――笹川賞、前検のピット

 住之江ピットに足を踏み入れて、ちょっとした違和感を覚えてしまった。これまで、ここに立ったのは2度とも賞金王決定戦。一昨年は厳しい寒さに震えながら、昨年は口々に暖冬の恩恵をこぼしながら。いずれにしても、住之江ピットといえば、冬、なのだ。ところが、今日の住之江ピットは、いや~~~、爽快! 五月晴れのなか、爽やかな風を感じながら、選手たちが行き交うのを眺める。なんだか不思議な気分になろうというものだ。
2007_0528__408  ボーっとしてたら、「クロちゃんっ!」。三嶌誠司が、いつものように、笑いながら声をかけてくれた。こうして三嶌さんと挨拶を交わすのが恒例になったなあ、とこれまた不思議な感覚に陥る。三嶌は今回、噂のオバケモーター17号機を引いた。「いいエンジン、引きましたね!」と言ったら、三嶌はニヤリと笑いながら、小声で「な?」と言って、うんうんとうなずいた。感触も良好の様子だぞ。

2007_0528__263  三嶌が去っていって、またまたボーッとしていると(←取材しろよ)、今度は中野次郎が「こんにちはっ!」と駆け足でやって来る。いや、もちろん僕の元に駆け寄ってきたわけではなく、自分のボートが置いてあるところに走って移動していたわけだが、その表情と声の張りを見ると、気分は上々の様子だ。そういえば、次郎と会うのは、ずいぶんと久しぶりのような気がするなあ。と、記憶を辿ると、1月の唐津周年ではなかったか。その前は、まさにここ、昨年暮れの住之江だ。去年はほとんど毎月、顔を合わせていたような感覚だが、今年の次郎はこれがSG出発点。一皮剥けた中野次郎を見せるのはこれからだ。
2007_0528__285_1  ペラ室のほうまで移動して、またまたボーっとしていると(←だから、取材しろって)、菊地孝平がペラ室から出てきて、プロペラを光にかざし始めた。その真剣な目つきに、思わず声をかけるのがはばかられ、会釈だけしてその場を離れる。やや遠くから観察すると、2枚のペラを交互に見つめて、最後に小さくうなずいていた。ひとまず納得したのだろうか。その数分後、気づけば整備室で格納作業に入っていた菊地孝平、試運転を見る限り、足は良さそうだし、精神的にも落ち着いた様子、近況好調ぶりを発揮できそうな感じだ。次郎同様、去年はSGでは必ず顔を合わせていた彼も、今年のSG緒戦となるのが笹川賞。やっぱりこの人がいなくちゃ、寂しいですよね。

2007_0528__458  ピット内を縦横無尽に走りまくる影があった。こんな姿を見せるは、もちろん新兵。降ろしたてのSGスーツに身を包んだ、峰竜太であった。うん、似合ってますよ、ミネリュー! となると、もう一人の新兵、岡崎恭裕は……やっぱり走ってます。ともに九州地区ということで、一緒にいるところもずいぶん見かけた今日だったが、先輩のお手伝いだけしていればいいわけではないのが、最若手たち。もし定点観測していれば、いちばん数多く姿を見かけたのが二人だったはずで、それくらい彼らは右へ左へ駆けずりまわっていたのである。あ、岡崎は自前のレーシングスーツを着ていたなあ。明日あたりはSGスーツ姿を見られるだろうか。

2007_0528__461  で、二人の仕事は雑用ばかりではなく、自分たちの前検作業もあるわけで、彼らにとっては初のSG前検でもあるわけだ。もっとも登番が若いから当然9班(前検は1~9班に分けられて、ドリーム戦出場選手以外は登番順)に入ったわけだが、ここに再展示となった松井繁が加わった。早くもSGで王者と対決!……って、対決じゃないっすね、はい。しかし、SGの醍醐味を早くも味わうことができたのではないだろうか。前検を終えて、仲良く並んで戻ってきた二人だが、岡崎が渋面を作っていたのが気になった。たしかにモーター勝率は低いのだが……。

 ドリーム戦出場選手の様子を、共同会見でのコメントも含めて、簡単に。
①松井繁(大阪)
2007_0528__513  モーターの締めるべき部分を一点締めていなかったということで、再展示になった松井だが、これは特に問題なさそう。モーターは勝率以上の動きだったということで、会見での表情は明るく見えた。ピットでは、濱村芳宏や鎌田義らと談笑しているところを見かけており、今日のところは余裕綽々。終始リラックスしているように思えた。
 そんな王者のキーワードは「あとはペラ」。GW開催で使った1枚と新ペラ2枚で臨んでいる今節、「新ペラで行く可能性も充分あるという感じだと思いますね」と、なぜか単純な事象に言葉を多く費やしたのが気になった。逆に言えば、ペラが定まれば、王者モードに入るであろう。
②気になる山崎智也(群馬)
 4月の一般戦で優勝を飾っている智也だが、今回はそのときに比べて苦しそうな手応えのようだ。「今節は本体をやるかもしれないですね」とも言っていたから、それほど泣きは入れていなかったものの、実際は厳しい現状ということかもしれない。とは言いながらも、今日の作業はわりと早めに切り上げたようで、8班が前検航走をしている頃には、着替えてのんびりと歩いている彼を見かけている。
 そんな智也のキーワードは「いつも通り」。会見で何度かこの言葉を繰り返したのだ。だからこそ、僕には逆に「いつも通り」じゃないように思えるのだが、気のせいだろうか。やはり今節の智也も、ここ最近では「いつも通り」のスペシャルな気合を携えていると見た。
③濱野谷憲吾(東京)
2007_0528__208  たぶん、もっとも肩の力が抜けているのは、この男しかいないだろう。やはり、総理杯優勝は、今年の後半を戦っていくうえで、大きな大きな精神的アドバンテージとなるはずである。前検後、智也とツーショットで引き上げてきていたが、二人とも笑みをたたえていたものの、憲吾の笑みのほうがずっと突き抜けているように思える。機力のほうも、伸びが上々とのことで、これを活かしたセッティングにしたいとのこと。
 そんな憲吾のキーワードは「気を引き締め直して」。別に総理杯後の彼が緩んでいたとはまったく思えないけれども、憲吾は自己と向き合った結果、そう考えたようだ。機力、気力ともに、充実一途の濱野谷憲吾。SG連覇も充分にありそうか!?

④中村有裕(滋賀)
 今年に入ってから、いまひとつパッとしたところのない、ユーユー。それを訊ねられると、「予定通りです」。は? 調子落ちが予定通り? そのココロは、「いつか悪くなると思ってたんで」。つまり、昨年後半の好調がいつまでも続くわけはない、必ずバイオリズムが悪くなるときが来る、とユーユーはあの快進撃の頃から考えていたようなのだ。そして今は、じっと耐える時だということも認識しているのだろう。すごいなあ。なかなかできる考え方じゃないぞ。ということは、もちろん再び「ユーユー・タイム」が来ることも間違いないのだ。そのスタートが、今節だったとしてもおかしくはないだろう。
 そんなユーユーのキーワードは、「夢のようです」。笹川賞ドリーム選出を、たった一言、そう表現した。ちょっと棒読みで(笑)。ユーユーのこういう発言、一見、本音のように思えなかったりもするのだが、本当の本当に本音だったりもする。そして、こういう謙虚さが、ユーユーの原動力にもなりうるのだ。

⑤魚谷智之(兵庫)
2007_0528__221  この人の勢いと充実ぶりは、もはや説明の必要はないでしょう。会見では、質問ひとつひとつにキビキビとした解答を示していっていて、実に力強さを感じさせる語調なのだが、ピットで見かけるときには同期や兵庫勢と最高の魚ちゃんスマイルを見せてもいる。メンタルトレーニングで強者のハートを手に入れた彼は、戦いに臨むときの精神の高揚させ方を完全に掴んだのだろう。彼が苦戦する姿、まったく想像できないんですけど。
 そんな魚谷のキーワードは「ファンの声援に応えたい」。去年の笹川賞には、2票差で出場できなかったのである。ところが、今年は一気にドリーム出場。昨年ダービー制覇以来の成長というか変化を如実に表わしている事象であるが、それ以上に魚谷はファンの気分と思いを誰よりも感じ取っているであろう。これはもちろん、強力な武器を手に入れたということである。

⑥瓜生正義(福岡)
 コースを問われて、「枠で」と言った。まあ、このメンバーなら6コースも仕方ないだろうが、そろそろ遮二無二動く瓜生を見てみたいと思うのは僕だけだろうか。とはいえ、6コースでも怖いのが瓜生という男。ピットでのいつもと変わらぬ素振りを見ていると、この安定感こそが瓜生の強みだろうと改めて痛感した次第だ。こういう強さは、実は意外と身につけづらいものだったりする。
 そんな瓜生のキーワードは「全部空回り」。機歴は悪くないはずなのだが、とにかく全部が空回りしていたというのだ。ギアケースを見てみるとのことだが、明日はこの空回りが直っているかどうか。空回りというのはもちろんネガティブな要素だが、ひとつ歯車が噛み合うと、一気にすべてが好転する可能性も秘めている。そのすべを、もちろん瓜生は持っているはずである。

2007_0528__497  さあ、笹川賞が始まる! 初夏の住之江決戦が始まる!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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