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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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12R前は穏やかに――4日目、後半のピット

 12Rが実に脂っこいメンバーだったため、準優勝戦ベスト18のメンバーは11R終了時点でおおむね決まっていた(池田浩二が大敗した場合のみ、入れ替わりがありそうだった)。そのせいか、今日はピット内の空気が落ち着くのが、いつもの勝負駆けデーより早かったような気がする。その11Rこそ、やや緊張感が漂っていたが、それが終わって、勝負駆け成功メンバーの周辺でいったん空気がざわついた後は、ゆっくりゆっくりと時間が過ぎていく。
Cimg2864_1  そんなピットに、岡崎恭裕&峰竜太が現われた。二人とも、リラックスしたふうに談笑しつつ。予選は終わった。今日の仕事もほとんど残されていない。一息つける時間帯である。試運転係留所の脇に差し掛かった二人の顔が、さらにほころぶ。そして、「係留所を飛び越えながら、向こうまで走り切れるか(ボートリフトまではけっこう長いぞ)」にチャレンジし始めた。だはは、何をやってるんでしょうか。助走がつけられないので、これがなかなか大変。2つ3つ飛び越えると、もうその先は飛べない。二人とも何度かチャレンジしてみるが、最高は3つ。うーん、飛び切れないかあ……と、ついつい二人のやんちゃな遊びに見入ってしまった。そのとき、「落ちろ~~~!」と声がかかる。振り向けば、長嶺豊さん。結局、二人とも“一人水神祭”となってしまう事態は避けられたが、「ほんっと、仲ええの~」と長嶺師匠が笑うのも当然なくらい、若者コンビの姿は微笑ましかった。
 ようするに、これが12R前のピットの空気を象徴していたということだ。

2007_0601__095  その前の、少しのざわつき。その空気を作った代表格は、やはり田口節子だった。SGに出場した女子選手は多くても、準優に駒を進められた選手は以外に少ない。何しろ、これが笹川賞8年連続8度目の出場だった海野ゆかりでさえ、いまだ予選突破を果たせていないのだ(でも、今回の笹川賞、ナイスファイトだったと思うぞ!)。その偉業を、SG2度目の出場であり、現時点では女子SG出場者最年少であり、つい数ヶ月前までは負傷による長期欠場を強いられていた田口が、実現させたのだ。誰もが色めき立って当然だと思う。
 11Rは5着で6・00だったから、勝負駆けとしてはそれほど厳しくはなかったけれども、これを4着でクリアして、ベスト18は確定。さすがに、ピット帰還後は笑顔を見せていた田口である。田口は、BOATBoy6月号の巻頭インタビューで、ひたすら不安感を口にしていた。長期欠場が明けて間もなく、来期からはB1降級という状況の中、想像もしていなかったSG出場、戸惑いは当然だし、自信をもって臨めというのが無理な話である。しかし、彼女は己の力でそれを打ち破ってみせた。これはスゴイことである! 
 レース後は、TVインタビューなども数件掛け持ちし、ただただ笑顔でいたけれども、明日はプレッシャーが彼女を襲うかもしれない。しかし、はじめから負けてもともとだったではないか。悔いなき戦いをするためにも、何も考えずに正面からぶつかってほしい。頑張れ、節ちゃん!

2007_0601__453  一方、勝負駆け失敗に、露骨に悔しさを滲ませていたのは、倉谷和信である。6号艇での出走であり、しかも条件は「1着」。前付けに動いたとしても、相当深い進入を覚悟しない限り、インまでは入れてくれなさそうなメンバー構成。ハナから厳しい戦いだったのは、承知していたはずだ。しかし、そんなことで準優を諦める競艇選手など、一人もいない。ましてや、ガッツボンと呼ばれる闘将・倉谷が、勝負を投げていようはずがないのである。
 レース後の倉谷は、ヘルメットをかぶったまま、早足で控室へと戻っていった。ヘルメット越しに見える瞳は、まるでレース前のようにギラついていて、その悔恨の大きさを物語っていた。地元笹川賞、選手代表というポジションであろうと、「大阪勢は3人準優出、よかったね」などと思えるはずがない。今晩、宿舎に戻れば、そんな気持ちになることもあるだろうが、戦いの後にそんな心境になれるはずがないのだ。
 悔しさを静かに、しかし強烈に爆発させている倉谷が、本当にカッコいいと思った。これが、畏敬すべき競艇選手の姿なのだと、僕は信じる。

2007_0601__102  11Rの2着で、瓜生正義が予選1位を確定させた! その時点で2位だった上瀧和則が1着をとっても、瓜生の得点には届かなかったのだ。つまり、瓜生がもし準優を勝ちあがれば、優勝戦1号艇も確定。インがめちゃくちゃ強い住之江のSGで、超抜のモーターを背負って1号艇! 来た、本当に来た。無冠の天才という、ありがたくない仇名をぐちゃぐちゃにぶった斬って捨て去れるかもしれない時が、ついに来たのだ。本物の天才であることを示す時が、本当に来たのかもしれないのですよ! これが興奮せずにいられようか。
 と言いながらも、ピットでの瓜生を見ると、本当に普段と変わらないのだから、昨日も書いたが、これが最大の武器であり、同時に爆発できない理由でもあるだろう。もちろん、明日はまた変わる可能性がある。いや、変わっていてほしい。プレッシャーに打ち震える瓜生を見てみたいし、それを乗り越えられるだけの男であるはずだ。いや、明日もまったく変わらないかもしれない。それはそれで、力を発揮する状態であると、好意的に受け取りたい。ともかく、レース後の瓜生には「予選1位!」と沸き立つ様子はまるで見られないし、それもまたすごいことだと思うしかないのだ。まあ、間違いなく、僕のほうが浮かれてるよなあ……。

Cimg2866  12R直前、先ほど仲良く戯れていた岡崎恭裕と峰が、ボートリフトの縁に向かい合って座っているのを発見した。そこに、池上カメラマンが割り込んで、ともに話し込み始めた。うぬぬ、若い二人をたぶらかすつもりだな、けしからんぞ……とそーっと近寄っていくと……この続きは別稿を設けよう。ここで僕は、二人のスーパールーキーのスター性に改めて感心することとなる。

2007_0601__700  さて、やはり現スーパースターとして二人の若きスターの壁にならねばならない気になる山崎智也。ピンピンの厳しい勝負駆けは失敗、残念ながら2節続けてのSG予選落ちとなってしまった。ただ、午後の遅い時間帯にはすでに切り替えはすんでいたようで、選手仲間や関係者と突き抜けた笑顔で話し込んでいる智也を見かけている。明日は気楽に、しかし予選道中の鬱憤を晴らすべく、スーパースターらしい走りを期待したいものだ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=岡崎と峰 TEXT=黒須田守)


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