この特集について
ボートレース特集 > 準優勝戦 私的回顧
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

準優勝戦 私的回顧

10R こんなことって……

①白井英治(山口)
②田村隆信(徳島)
③原田幸哉(愛知)
④服部幸男(静岡)
⑤石野貴之(大阪)
⑥菊地孝平(静岡)

 誰もが口を揃えて、同じことを言う。
「瓜生と白井が出ている」
 レースを見ている我々もそれはわかってはいたが、一緒に走っている選手がそう言うのだから、説得力は甚大なものとなる。時間軸としてはずっと後のことだが、優出者共同会見で、濱野谷憲吾も松井繁も「二人に比べれば劣っている」と証言しているのだ。モーターの性能差がハッキリしていると言われる現住之江モーター。その二人がともに1号艇に入ったのだから、順当な決着になるものと多くの人が思っていたはずである。
2007_0602_10r_029  ところが……。
 たしかに、スリットでは2号艇の田村隆信、3号艇の原田幸哉がのぞいていた。コンマ20のスタートは、やや物足りないものではある。しかし、超抜パワーは、それくらいの差は1マークまでに帳消しにしてしまう。実際に、1マークを先マイしようとしたのは、その超抜モーターだった。誰もがそのパワーに慄える準備をしていたとき、まるで予測もしていなかったことが起こった。
 白井英治、振り込み。
 急なハンドルを入れすぎたのか、それとも説明不能の事態だったのか。白井の艇は、大きくキャビって180度反対を向き、急激に失速した。ピットでは、悲鳴が上がっていた。
2007_0602_10r_054  その内側を、田村が素晴らしいハンドルワークですり抜けていく。その田村の上にマクリ差しのハンドルを想定していた原田は、白井の艇の前方に乗り上げながらも辛うじてバック水面に出て、事なきを得ている。不運だったのは、外から全速マクリ差しを狙った菊地孝平。描くはずの軌道上に、白井の艇があった。急な減速を強いられて、白井の外を回るしかなかった。同様のことは、服部幸男、石野貴之にも言えた。全員が事故回避のうえでレースを続行させたのだから、さすがのSGレーサーたちであった。
2007_0602_10r_037  ただし、もっとも不運だったのは、やはり白井英治だと言うしかない。強烈で俊敏な旋回力をもつ白井が、まさかのキャビテーション。SG準優の魔力といえば、あまりにせつないし、彼らしからぬ焦りがあったのだとすれば、SGの壁の高さに呆然とするしかない。4月のびわこ周年記念の優勝戦で、白井はやはり1号艇に入り、コンマ54のドカ遅れを喫している。白井に特別レース賞典レースでの白いカポックは鬼門になってしまっているのか……。
 レース後、悔しさを隠せない白井を、鎌田義が気遣っていた。二人は80期、同期生だ。

11R 天才の覚醒、間近

①瓜生正義(福岡)
②濱野谷憲吾(東京)
③魚谷智之(兵庫)
④吉川元浩(兵庫)
⑤湯川浩司(大阪)
⑥山本浩次(岡山)

 目の前で、一方の横綱が敗れ去る瞬間を、瓜生正義はどう見ていただろうか。予選1位。瓜生の長いSG歴で、初めての経験である。無冠の天才と呼ばれ続けて数年。ついに、そのフレーズを捨て去るときが近づいてきた。そんな瓜生にとって、白井の失速は不吉だと言えた。
2007_0602_11r_045  スタート展示がまた、波乱を予感させるものだった。5号艇・湯川浩司の前付け。この男がインを強奪するとは、白井の振り込みと同じくらい、想像しがたかったことである。
 瓜生に触れる前に、この湯川のことだ。前のレースを1着で通過した田村は、銀河系軍団85期の同期。そして、田村も勝利者インタビューで口にしていたが、3カ月前、この住之江で亡くなった坂谷真史さんも、同期生だった。「もっとも結果を出したいレース場のひとつ」、そう田村は言った。あの日もここにいて、ここを地元水面としている湯川も、田村と同じ思いだったはずだ。そうか、12Rの田口節子も同期生だ……。この準優勝戦を、誰よりも大事に、誰よりも特別な意味合いを抱えて戦ったのは、銀河系軍団だったかもしれない。湯川のまさかの前付けは、そう感じさせるものだった。
 本番でも、湯川は果敢にインを奪ってみせた。もうそれだけで、湯川の走りは尊かったと言える。結果は5着だったが、そのことを問う必要はない。彼は間違いなく、その思いを水面に投影し、表現し尽くしたと言える。
2007_0602_11r_015  瓜生の快走にも、同期の物語はあった。湯川がスタ展同様に回りこんだとき、艇を前に出してブロックする動きを見せたのは、魚谷智之だった。瓜生と魚谷は76期の同期生。本栖時代も、デビューしてからも天才と騒がれ続けた瓜生を、魚谷はその背中を見るようにして追いかけてきたはずだ。気がつけば、瓜生が悲願を果たすより先に、魚谷がタイトルホルダーとなっていた。魚谷は、自分が出ないレースでは、瓜生を応援していただろう。この11Rにしても、ワンツーを決められることを望んでいただろう。その理想を打ち破ろうとする者は、排除しなければならない。魚谷の艇の運びは、そう思わせるものだったのである。結果的に、それを押しのけて湯川はインに入ったのだが、魚谷が本当にそう思っていたのだとしたら、それもまた尊いことである。
2007_0602_11r_013  そんなさまざまな思惑は、瓜生の超抜パワーには、もしかしたらあまり関係のないことだったかもしれない。2コースを選んだ瓜生は、コンマ09のトップスタートをしっかりと決めた。湯川がコンマ28と遅れたから、むしろ絶好の展開を瓜生は引き寄せた。そのままターンマークを真っ先に回る。全速で握った分、やや流れる。その内側を濱野谷が差す。一瞬、憲吾スペシャルが突き刺さったように見えたが、今節の瓜生は、というより瓜生の駆る超抜機はここからが違う。2007_0602_11r_018 そのままバックで追いつくというよりは、実はすでに差しを許していないのだ。2マークに近づくごとに、瓜生が前にいることが明らかになる。ふところを大きく開き、そこを他艇に突かせながら、まったく差させない。逃げであれマクリであれ、瓜生に先に回られたら、誰も追いつけない。握った者勝ちの多摩川ではよく見かけるシーンだが、瓜生はそれを住之江でやってのけてしまうのだ。さすがにこのレースの濱野谷はそれでもよく喰らいつき、2マーク先マイを果たしているが、主導権を握った瓜生がそれを差すのは容易なことだった。
 これで、優勝戦の1号艇が決まった。天才が覚醒する瞬間が、いよいよ迫ってきたのだ。イン確保から逃げても。インを獲られてマクっても。先に回ってしまえば、超抜パワーが火を噴く。今日の瓜生を見た人なら、誰もが納得する物言いのはずだ。

12R 節ちゃん、頑張った!

①松井繁(大阪)
②池田浩二(愛知)
③上瀧和則(佐賀)
④田口節子(岡山)
⑤馬袋義則(兵庫)
⑥三嶌誠司(香川)

 進入は136/245。スタート展示も、本番も同じだった。ピット離れで前に出た上瀧和則と三嶌誠司が動き、松井がインを離さない。2号艇ながら前に入られた池田浩二は腹を括ってカドに引き、田口節子と馬袋義則がその外に陣取る。予想しうる並びである。
2007_0602_12r_014  好スタートを決めたのは、センター勢だ。三嶌がコンマ13、池田がコンマ12。先に攻めの態勢に入ったのは、コースが内の分だけ、三嶌だった。上瀧の上を叩いて、松井のふところにグサリと突き刺すマクリ差し。王者はそれを許さずしっかり逃走を決めて、三嶌の野望は潰えたけれども、意欲に溢れるターンであったのは間違いなかった。
2007_0602_12r_017  池田は不運だった。白井ほどではなかったけれども、1マークの手前で上瀧がキャビり、池田の行く手がふさがれた。上瀧は池田に押し出されるようにして、すぐに回復を見せたのだが、池田が再びレバーを握ったときには、松井と三嶌はすでにはるか先を行っていた。勝負は、この時点でついていた。
 ここから視点は田口に移る。上瀧の上を全速でマクっていったのが青いカポックだと気づいたとき、すでに優出の目はかなり薄くなってしまっていたけれども、その健闘ぶりに誰もが熱い視線を浴びせていたのだ。
2007_0602_12r_106  田口のすぐ後ろには上瀧。大先輩というだけでなく、その存在感や威圧感がずば抜けており、実績とキャリアがはるか高みにある、怖い怖い上瀧和則。田口は、そんなモンスターを従えて、あと5コのターンマークを回らねばならなかった。一瞬でも気を抜いたら、あるいは一瞬でも気の迷いが生じたら、上瀧はたちまち、そのスキを咎めるだろう。準優進出すら「信じられない」と語っていた田口にとって、上瀧の強迫的な追撃から逃げるシーンも想像だにしていなかったに違いない。
 そのとき、ピットの水面際には、寺田千恵、横西奏恵。SG優出のエポックメーキングを果たした2人の先輩が、田口の走りを見つめていた。二人ともとっくにレースを終えており、帰宿バスの第一便に乗っていてもよかったのに、こうして最後までピットに残った。これが、田口の背中を押す何より強いパワーだった。もちろん、同期の田村も湯川も井口佳典も丸岡正典もいた。みんな、強大な壁に挑む田口を後押ししていた。
 上瀧の猛追を凌ぎ切って、田口節子3着。きっと、今節もっとも疲れる戦いだっただろう。優出は果たせなかったものの、天晴れな走り。田口よ、胸を張れ。偉業を成し遂げた同性の先輩も、同期も、きっと君を誉めてくれる。

 激しいレース。まさかの悔恨。同期の絆。仲間の愛。第34回笹川賞、あとは6人のガチンコを残すのみ――。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106923/15290406
笹川賞・最終日 【舟券の法則】
昨日はテレビの見すぎで朝の更新になっちゃいました(〃д〃) 人志松本のすべらない話 其之弐ってバカおもろいね〜昨日初めて見たけどごく普通の日常であった面白い出来事だから容易に想像できるから笑えるんだろうね 準優... 続きを読む
受信: 2007/06/03 9:44:07
コメント
コメントを書く




※メールアドレスは外部には公開されません