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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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絆。 ――準優勝戦後半のピット

1u4w7400 準優勝戦最初の10R。1コースから3コースまで微妙なスタートタイミングの勝負となったが、ターンマークが近づいてくると、ピットでは「逃げたかな?」という選手の声が聞かれた。
 しかし……、それが一転! 溜め息というか悲鳴に変わってしまったのだ。1号艇=白井英治が振り込んでしまい、ターンマークを前にして、くるりと艇が 回ってしまうような形になったのだから、競艇という競技では何が起きるかわからない。
「かすった感じはしましたけどね」
 大事故にもつながりかねない展開の中、白井を交わして先頭でターンマークを回ったのは田村隆信だった。公開インタビューの席でも、この場面を振り返る際には言葉数が少なくなっていたのも仕方がないだろう。
 このレース後、田村が語ったのは、一人の同期のことである。名前ははっきりと出してはいなかったはずだが、今年、この住之江で亡くなった坂谷真史選手のことであるには違いない。“彼”が「1マーク付近で見ているはず」なので、「ナニしとんや、と言われないようなレースをしたい」というのである。
 11レースで5枠から前付けでインを奪った湯川浩司にしても、田村と似た想いがあったのだろう。とにかく結束が固い85期である。総理杯における井口佳典もそうだったが、“友”のために結果を出したいと願っている気持ちが、ピットにいても、ひしひしと伝わってくるのである。

2u4w7389  このレースで2着に入った原田幸哉は、異常はなかったという田村と違って、1マークでボートを少し壊したということだ。そのため、道中はかなり乗りにくかったとのことだが、「明日には影響がなさそう」と言っている。
 ただし、ポーカーフェイスの原田は「(SGなどは)獲れるときに獲ればいいと思っています」と前置きしたうえで、「今回(のモーター)は絶対獲ってやるという感じでもないんで」と付け加えている。
 今節では他に絶対的なパワーを誇るモーターが存在しているからそんな言葉も出たのだろう。だが原田は、「満足いく仕上がりにはなっています」「ファンに喜んでもらえるようなレースをしたい」とも言っている。そんな男が気持ちをゆるめたレースをするようなことはないはずだ。

3u4w7381  10R後には、とにかく白井から目が離せなかった。住之江競艇場では、レースから選手たちが引き上げてくる場所が取材ゾーンから離れた場所にあるので、駆け寄った選手たち間でどんな言葉が交わされていたのかはわからないのだが、重い足取りで引き上げてきて、すぐにはコメントを出すこともなく整備室へと入っていた白井の表情には痛々しいものがあったのだ。悔しさを噛みしめ、懸命に“前”を向いて歩いていたのだが、整備室で腰を下ろしたあとには、さすがに消沈している様子が窺われたものだった。
 その後も、同期の鎌田義などがずっと励まし、付き添うようにしていたが、なかなかその顔は上がらなかった。
 それでもだ。12R前にふと気が付くと、鎌田義と並んでペラ小屋でペラを叩いている様子が見かけられ、その顔には、無理やり浮かべているわけではない気持ちのいい笑みがあったのだ。
 結束が固いのは85期に限ったことではない。
 同期というのはいいものだな――。
 あらためてそう思ったし、以前から気になっていた鎌田義の“男前さ”にも惚れ直したものだった。

4u4w7489  11R。こちらは5枠の湯川浩司が1コースに入り、進入から厳しい展開となったが、白井とともにどちらがエース機かを争う存在である瓜生正義が見事に勝利を飾った。
 レース後には、原田&横西奏恵といった同期と、岡崎恭裕&峰竜太といった九州勢が拍手で出迎えている。同じレースで闘い、湯川浩司の前付けをブロックしようともしていた魚谷智之(こちらも同期)もまた、瓜生とがっちり握手を交わした。
「今日こそは頼むで! 手裏剣ターンでな」
 総理杯の優勝戦の朝、優勝戦を控えている瓜生に対して、魚谷がそう言っていたのも思い出される。
 抜群の安定感でSG優出を量産しながらも、タイトルを獲りきれなかった“天才”が、ついに『SG優勝戦の1号艇』を奪取したのだ。レースのあと、かなり時間が経ったあとに原田が「明日は頑張れよ!」と声をかけていたが(瓜生はちゃんと「お前もだろ!」と突っ込んでいた。……「お前もな!」じゃなかったところがちょっと惜しい)、天才のSG初制覇が俄然、現実味を帯びてきたのだ。
 共同会見などでも「プレッシャーはあります」と本音を隠さなかった瓜生だが、「明日こそ、1コースから行きたい」と記者たちを笑わせるだけの余裕も見られている。同じレースに出る原田はともかくとして、心強い仲間たちが傍にいるのだから、緊張しすぎた状態でレースを迎えるようなことはないだろう。

5u4w7555  このレースで2着に入ったのは濱野谷憲吾だ。今日もギリギリの時間帯までペラ小屋に籠もっていたが、「今日のペラは合わなかった」とも素直に話している。また、「二の足で(瓜生に)伸びられた」「(瓜生の足には)劣ります」とも話していたが、その表情は少しも暗くなかった。
 明日は“かかりもよく、伸びもいいけど、ピット離れが悪いペラ”を使うこともあり、ダッシュからレースに臨もうとも決めている様子だ。
 進入からもつれそうな気配もあるだけに、こうした割り切りのできている選手が怖い存在になってくるのは間違いない。

6u4w7153  12Rを勝ったのは松井繁だ。こちらも地元だけあり、レース後は大きな拍手で迎えられていた(白井の同期であると同時に、松井と仲がいい鎌田義がとりわけデカイ音を鳴らしていた気もする。ある意味、大活躍の鎌田義である)。
 松井もまた、モーターについて訊かれると「日によって違うんで……」と好感触の言葉を口にはしなかったが、こと雰囲気に関していえば、スバ抜けたものがある。今日などにしても、一日を通してあまり姿が見かけられなかったのだが、時おり歩いているところを発見したりすると、昨年末の賞金王と同じような空気が感じられたのである。同じ場所だからということだけではなく、顔つきがそうなのだ。パッと見ではかなりのプレッシャーがのしかかっているようにも見えるのだが、ギリギリのところで集中力を高めているのだろう顔である。自分のレース前には鎌田義とともに白井を励ましているところも見かけられたのだから、メンタル部分のコントロールはしっかりできている。
 今年の目標として「SG3勝」を挙げている“王者”である。モーターに差があることは「最初から覚悟していた」と話したうえで、「優勝するためにやるだけです!」と、力強く共同会見を締め括った。

7r0014123  いろいろな気持ちや思惑が絡み合ってきそうな明日の優勝戦をさらに気が抜けないものにしそうな存在が、このレースで2着に入った三嶌誠司である。なにせ、共同会見において、明日の進入についてを訊かれると、「行くのは一艇(自分)だけだと思っているんで」ときっぱり!
 ここ住之江では6コースからでは勝負になりづらいことを説明したうえで、「負けてもともとで行かんと」とも話している。また、そう言っておきながらも、「どの深さからでも一艇身(ST=0.15)全力のスタートを切れる自信はあります」と言い切るのだから、まったくもって油断がならないわけである。
 これまでのSGにおいては、レース前にストレッチをしていたり正座をしていたりといった様々な精神集中のスタイルを見せている三嶌だが、今日はピットの水面際で、他のレースをじっと見ている姿が何度か見かけられている。松井もそうだが、この人の心の強さというか、メンタル部分のコントロール能力には凄いものがあるのだから、やはり怖い存在といえるだろう。

 1枠にエース機をひっさげた未完の天才が入っていながらも、まるで行方が読めない優勝戦――。明日もまた、ピットの様子や進入から目が離せない一日になりそうである。
(PHOTO/池上一摩 +内池=三嶌のみ  TEXT/内池久貴)


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コメント

優勝戦、楽しみですね。

投稿者: コッシー (2007/06/02 21:09:10)
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