この特集について
ボートレース特集 > 祝福!――優勝戦後半のピット
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

祝福!――優勝戦後半のピット

1u4w8160  スタート展示前、係留所から少し離れて、一人でふらふら歩いていたり、思いつめた顔で座っていたりした原田幸哉の姿が見かけられたが、その時点ではこの男がレースの鍵を握っているとは思わなかった。
 だが、もしかしたならこの段階で、原田は自分の気持ちを固めていたのかもしれない。
 スタート展示で原田は動いたのだ!
 6枠からインを狙いに行くはずの三嶌誠司をブロックに行ったようにも見えたが、結果的に進入は1256/34になっている。
 この後、“浪速のドン”長嶺豊さんに、原田が動いたのは「自分のためなんでしょうか?」と尋ねてみたが、その際には「それはそうですよ!」と即答されている。
 しかしである。一拍おいて長嶺さんは、「……基本的にはね。……ただ、結果的には瓜生(正義)のためにもなるし、あわよくば自分が、という気持ちもあるでしょう」と続けてくれている。

2u4w7898  昨日の準優勝戦でも、湯川浩司が進入でインを狙いにくると、まるで1枠の瓜生正義を守ろうとするように魚谷智之がブロックに行ったが、それだけ76期の結束は固いのだ。いや、76期の結束は固いというよりも……、横西奏恵が、瓜生が優勝すれば「泣いちゃうかもしれない」とも話していたというように、同期の誰もが、瓜生にSG初Vを飾ってもらいたいと願っていたわけなのである。それは、瓜生という人間が本当に気持ちのいい男であり、誰もが応援したくなるほどの努力家であるためなのには違いない。
 ただ、原田にしても、瓜生の優勝を願う気持ちはあったはずだが、自分自身もレースに挑む以上は、勝ちに行かないわけがない。
 だからこそ、あの進入は“自分の優勝を求めての動”であると同時に、それが叶えられないなら瓜生に優勝してほしいという“願いの動”でもあったのだろう。こうしたことについては、本人がどこまで本音で語ってくれるかはわからないことなので、あくまでこちらの想像ということになってしまうが、そんなふうに思われてならないものである。

 そして迎えた本番――。三嶌はやはりインを狙いに動いたが、原田もまた、引くことはしなかった。外枠の二人がともに動いて、展示以上にもつれる形になったが、結局は、展示と同じ並びになっている。
3u4w7929  レースの詳細については別項に譲るが、瓜生は1コースからコンマ11のスタートを切りながらも、1マークで、2コースの松井繁に差し抜けられてしまう……。その瞬間を振り返って瓜生は、「やっちゃったと思いました」とも言っている。
 1周2マーク。ここでもうひとつのドラマが待っていた。瓜生がこのマークでどう松井を抜くかという決断に迫られているうちに、内から原田が突っ込んできて、松井を弾き飛ばす形になったのだ。ピットにおいては、1周1マークで大阪勢の拍手が起きていたが、この2マークでは、一瞬にして静寂が訪れた。
 その瞬間、“同期の絆はそこまで強いのかか!?”とこちらも絶句されられたものである。だが、ここでもやはり長嶺さんの言葉が思い出される。――基本的には自分のため。しかし、自分が勝てないなら瓜生に勝たせたい――。そんな想いのターンじゃなかったのだろうか。
 リプレイで見直してみると、瓜生を守るためのターンだったというよりも、自分が勝ちに行くターンだったようにも見えてくるのだから難しいところだ。
 ……そして結果は、1着=瓜生、2着=原田で、「同期ワンツー」を決めてみせ、3着には濱野谷憲吾が入り、ここで飛ばされた松井は5着に沈むことになったのだ。

4u4w8384  レース後のピットは、感動と緊張が交差した場所になっていたともいえるだろう。
 瓜生が引き上げてくると、今村暢孝ら九州勢が拍手で迎え、瓜生にとっては“もう一人の師匠”ともいえる存在の上瀧和則が「おめでとう!」と言って、瓜生の頭をヘルメットの上からポンポン叩いた。
 そして、急ぎ足でボートを乗り換えた瓜生がウィニングランに出て行くと、次の瞬間には、松井に対して深々と頭を下げている原田が見かけられたのだ。

5r0014229  しかし、松井にしても、今日一日の表情や動きを見ていた限りは、ここ住之江のタイトルに賭ける気持ちは、SG初優勝を目指した瓜生や、一人の同期のために勝利したいと切望していた田村隆信にも負けないくらいに強かったのだと察せられる。
 そのタイトルを手に入れかけていたときのあの突っ込みだったのだから、すぐに納得できなくても仕方がないことだ。原田に頭を下げられても、無言で頷いただけだったように見えていたし、その後の松井も、しばらくの間は放心しているようだったのだ。
 だが、そこはさすがに王者である。モニターに映し出されるレースのリプレイを見ていたあとに、徐々に納得の表情になっていったのが確認されたし、その後には原田とも何のしこりもないように話をしていたそうなのだ。レース後かなり時間が経って、管理解除になったあとには、返却された携帯電話をチェックしながら、「慰めのメールがいっぱい来とるわ」と記者陣にも笑いかけていた。
 今日一日を通して、原田という男が好きになったが、それとともに松井という男の器の大きさも改めて思い知らされたものだった。

6mg_5685  表彰式の空気を見れば、瓜生という男が同期に愛されているだけでなく、ファンにもどれだけ愛されているかもよくわかる。ホームプールでもないのに、表彰式の会場には祝福の空気が満ちていたのだ。
 とくに感動的だったのは、瓜生が優勝すれば横西が「泣くかもしれない」と話していたということを伝えられたとき、「じゃあ泣いてもらいたいですね」と笑って答えた瓜生が徐々にその目に涙をためていったときだった。ファンからは「泣いてもええぞ!」との大きな声がかけられて、瓜生の目からは涙がこぼれていったのだ。
 同期の絆。
 ファンの想い。
 そうしたものがどれだけ大きいかをよくわかっていたからこそ、流された涙だったのだろう。その様子を見ているこちらまでがついついもらい泣きしそうにもなったほどだった。

7u4w7851  表彰式のあと、瓜生がピットに引き上げてくると、残っている選手たちから再び祝福の声が浴びせられていった(写真はレース前のものだが、岡崎恭裕と峰竜太の二人も最後まで瓜生を待っていた)。そして、上瀧の発した「帰らなあかんから、水神祭を先にするぞ」という声により、異例ともいえる“記者会見前の水神祭”が敢行されたのだ。この模様についてもやはり別項に譲るが、原田や魚谷が、自分のことのように喜んでいたのは書くまでもないだろう。
 おめでとう! 瓜生正義!!
 天才はここについに覚醒したのだ。

 納得の足に仕上げて貪欲にインを狙いに行った三嶌誠司。一人の同期のためにも今日一日を緊張の中で過ごした田村隆信。そして、展示航走が始まるギリギリの段階までペラを叩き続けた濱野谷憲吾……。彼らについてももっと多くを書きたい気もするが、今日のピットリポートを締め括る言葉は、これより他にないはずだ。
 もう一度書く。
 おめでとう! 瓜生正義!!
(PHOTO/池上一摩 +内池=5枚目のみ  TEXT/内池久貴)


| 固定リンク | コメント (2) | トラックバック (2)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106923/15302937
勝利の美酒(*^_^*) 【「競艇」と「恋愛」は両立するのか!?】
僕が優勝したわけではないのですが、瓜生正義の笹川賞制覇を肴にして勝利の美酒をいただいております。今夜はの銘柄は昨日御徒町吉池で購入した蔵元寺田本家の「自然酒 五人娘」。五人娘は千葉県の日本酒で、自然酒というのは... 続きを読む
受信: 2007/06/03 20:27:12
優勝おめでとう 峰竜太選手 芦屋GⅢ新鋭リーグ第8戦 【インターネット競艇実験日記】
芦屋GⅢ新鋭リーク第8戦 優勝戦 ここまでALL3連対の好成績で、優勝戦1号艇を 続きを読む
受信: 2007/06/12 21:20:21
コメント

今回のSGも見ごたえがありました。
瓜生選手SG初優勝おめでとう御座います。優勝戦、1マークを松井選手に差された時「あっまたダメなのかな~」って思いましたが、2マークで幸哉選手が松井選手にぶち当たって・・瓜生選手に女神が微笑んだ瞬間ですね!瓜生選手に運も味方したと思うんですが、76期同期の後押しがあったことを忘れないでいて欲しいです。あの時幸哉選手は自分の為とも瓜生選手の為とも思われるターンをしました。それで松井選手を潰す事が出来たわけです。。。♪ドラマティック・競艇♪とはよく言ったと思います。今節は本当に、ドラマティクでした。

投稿者: うさ子 (2007/06/04 18:33:02)

瓜生選手おめでとう!!
長い間待ち続けたSG制覇でした。
 人には、運命の刻がありますね。
プラスアルファの力が、作用する刻!!
 それは、因果応報でなく必然なのです。
摩訶不思議なことに恵まれることがあります。
 しかし、それも必然です。
多くの人の想いが報われるのです。
 ファンの皆さんの気持ちが、報われるのです。
人は、感動することにより感激を味わいます。 
 今、瓜生選手に風は吹き始めています。

投稿者: ステージチャンプ (2007/06/07 21:55:04)
コメントを書く




※メールアドレスは外部には公開されません