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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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新鮮ピット――初日、前半のピット

 蒲郡のピットは、若干特殊である。
 まず、対岸に位置している。2マークの奥がもっとも多いパターンで、対岸にあるタイプは他には福岡しか知らない。ところが、出走ピットは2マーク奥の通常パターン。選手はレースや展示のたびに、ピットからけっこうな距離を移動するわけだ。
Cimg3316  で、ピット自体も非常に細長い。ボートリフトは、ちょうと角っこのところにあって、ペラ室や整備室はその奥。だというのに、選手控室は反対の隅っこ――えっと、蒲郡の水面をJLCなどで見たことある人は、薄緑色の屋根が対岸左手奥にだーーーっと見えますよね。その向かっていちばん右端の奥、そこに選手の控室がある。つまり、控室は右端、整備室などは左端、そんでもって、たとえば試運転から戻ってきた選手がどちらに向かうのか、これがなかなか読みづらかったりする、のである。選手控室寄りのあたりで森高一真が試運転から戻ってきたのを目の端で確認をし、しかし他の選手の動きをじーっと見ていると、ふとすぐそばに森高がどっかどかとした足取りで、近づいていたりする。整備室ではなく、控室に向かおうとしていたのだ。あ、おはようございます、と慌てて挨拶をすると、なぜかメンチを切ってくる森高。それを見ていた田村隆信が、隣でニコニコしていたりして。という具合に、取材方法にまだ慣れることのできない、蒲郡ピットなのだ。
 整備室を覗くのも、なかなかひと苦労。奥のほうに選手がわらわらと集まっていて、ギアケースを整備しているらしいことはわかるのだが、僕と選手の間にはガラスが3枚ほど。間に喫煙室があって、それを通して眺めるのは、なかなか選手の確認がとりづらい。鎌田義がギアケースを調整しているのはわかったが、それは白井英治とおそろいの星条旗柄の乗艇着を着ていたからだ(これがなかなか派手なんです)。
Cimg3292  で、もうひとつの入口のほうから覗いてみる。あ、三嶌誠司が本体整備をしている。と、見入っていたら、ドアがしゃーっと開いてしまった。あら、自動ドアでしたか。恐縮しつつ、横を見ると、そこはペラ室。満員御礼の状況が一目で見渡せるこのペラ室は、全面ガラス張り。だから、整備室を覗いている僕が、選手たちから丸見えの状況だ。ま、集中してペラを叩いている選手たちは、こんなハゲデヴには目もくれないんですけどね。でも、ちょっと恥ずかしくなって、すぐにその場を離れたのだった。うーむ。やっぱりまだ慣れてませんねえ。あ、そうそう。係留所が装着場からめっちゃ近いのも珍しくて、こんなに近くで写真を撮れたりするんですよ。だからかえって、選手に気を遣っちゃったりして。
Cimg3298  さて、もうひとつ特殊なのは、記者席の位置。先ほどの薄緑色の屋根、その切れたところに二階建ての建物があるのがわかりますかね? その二階が記者席なのであります。つまり、2マークが目の前なんですね。しかも、対岸から見渡すという、普通ならありえないシチュエーション。レースももちろん興味深いが、試運転もなかなか面白い。足合わせの場合、2人の選手がちょうどレバーを落とすあたりだから、「ありがとうございました~」と挨拶する様子が目の前で見られるのだ。山崎智也と赤岩善生の足合わせでは、智也が右手を高々とあげて、「どもっ!」てな感じ。松井繁と熊谷直樹の足合わせでは、松井が熊谷に軽く右手を挙げていて、あれ、後輩なのにずいぶんな挨拶じゃん、とか思ったりして。いやいや、それがお互いに許されるほど、長い間ともにSGで戦い、気心を許しあう間柄だということだ。なるほどねえ。Cimg3305 あ、この位置からは、待機行動もいつもと違って見えましたね。阿波勝哉が目の前を通過していったのは、普段は「いつもどおり、いっちばん奥まで行ってるよ~」とか笑ってることからすると、正反対なわけですから。

Cimg3312  さて、そんなピットに慣れるべく、朝(午後イチ)からうろうろしていたわけだが、1Rでさっそく歓喜の瞬間を目にすることとなった。山崎哲司、SG初陣にして水神祭! 進入で都築正治にインを取られそうになり、スタートではやや後手を踏みはしたが、意地の先マイで1着! おめでとう! しかし。
 ピットに戻ってきたテツには、笑顔はなかった。喜びを爆発させるふうもなく、少し首を傾げるようなところもあった。それはまさに、コース取り、スタートに反省点があったからのようだった。でも、ちゃんと先マイしたじゃない! そう言うと、「差されてもおかしくないターンだったし……」。とにかく反省反省、反省!のテツなのだ。「まだまだですね」、そう言うテツに、「師匠(中尾カメラマン)にも伝えておくから!」と言うと、やっと笑顔が出た。着替えを終えると、すでに次走へと気持ちを切り替えたのか、すっきりした表情も見せていて、うむ、このあたり勝負師としての気持ちをしっかり持っている男だと、改めて感心したぞ。この勢いで、突っ走れ、テツ!

Cimg3315  2Rには、阿波勝哉が出走。6コースから得意の伸び足を見せ、豪快にマクっていったものの、まだ足は完全ではないのだろう、平石和男、中村有裕の差しを許してしまった。まだ1マークまでに内を飲み込み切る足はないから、これからさらなる調整をつんでいくことだろう。
 レース後は、6着まで着を落としてしまったこともあって、ややうつむき加減に見えたものの、熊谷直樹が笑いかけると、阿波も笑顔。苦笑いという感じにも見えたが、しかし熊谷の心遣いがしっかりと届いていたようだった。「ああなったら、しょうがねえよな」「そうっすね」、そんな感じの会話だったのだろうか。ともかく、本領発揮はこれからだ!

Cimg3303  さて、慣れないピットでも気になる山崎智也。ぼけーっと水面を眺めていたら、それが智也のボートのすぐ近くだったようだ。こちらに近づいてくる足音に気づき、振り向くと、智也ではないか。おはようございます! そう挨拶をすると、智也はニコニコニコッと笑って、おはよっす! むむ? 智也は常に気持ちよく挨拶を返してくれる人ではあるが、こんなに笑顔で返してきたことは、少なくとも最近はなかったぞ。これが何を意味するのか、やっぱり気になって仕方ないのであった。(黒須田守)


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