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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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男の姿――2日目、後半のピット

2007_0829__0249  淡々。前半のピットをそう書いたが、思い起こしてみれば、この言葉はもともと、ある一人の選手の様子について、ひたすら使っていたものである。
 ミスター不動心、山本浩次だ。
 昨年のオーシャンカップ準優FでSGから遠ざかり、笹川賞で復帰したものの、もうひとつ存在感を発揮できなかったこともあって、「山本浩次=淡々」というのをすっかり忘れていた。いや、淡々だからこそ、成績がもうひとつのときは目立ちにくいわけで、今日になって気づくなんていうのは、本当は虫のいい話なのだ。
 でも、やっぱり気になってしまう、山本浩次の2連勝。そして、それでもピットでは変わらず淡々としているのだから、唸らされる。明日も、彼の淡々とした表情に目を惹かれるだろうか。

Cimg3348  係留所には、すでにボートは1艇もない。12R前のことだ。ところが、カポックとヘルメットだけが置かれている。誰のだ? 近寄って見ると、森高一真のものだった。姿を探す。見つけたのは整備室。齊藤仁、田村隆信と話しながら、モーター整備をしているようだった。齊藤も、本体整備に励んでいるようで、情報交換などもしていたのだろうか。おそらく、だ。2007_0829__0597 森高は試運転を終えると、いったんは係留所に戻った。そこにヘルメットとカポックを置き、ゆっくりとリフトに移動し、ピットに戻る。その後は、とるものもとりあえず、整備室に駆け込んで、ヘルメットの存在を忘れるほどに、整備に熱中していた、ということだろう。その姿勢に、森高の本気度がうかがえる。

2007_0829__0639  整備室には、熊谷直樹もいた。これも本体整備の様子だったが、熊谷が整備を終えて、控室に戻ったのは12Rが始まる直前のことである。MB記念ではすでにベテランの部類に入る熊谷が、最後の最後まで本体をいじり、機力向上をはかる。ただ一人、黙々とモーターと向き合う顔つきには、もはや説明不能の凄みを感じずにはいられない。それも、遅い時間帯まで、延々とそれを続けていたのだから、頭も下がるというものだ。12レースが終わると、さっき控室に戻ったばかりなのに、再びリフトまで歩み出て行って、後輩たちのエンジン吊りに加わる。そんな様子もまた、迫力を感じさせるのだから、この人のオーラは本物だ。

2007_0829__0206  整備室の奥のほうで、話し込んでいる二人がいた。仲口博崇と阿波勝哉である。これは珍しい組み合わせ。いったい、何を話していたのかは……整備室のかなり奥のほうなので、残念ながらわからない。ただ、仲口の表情、阿波の態度を見ていると、仲口がチルト3でのレース、あるいは調整法について質問をしていたのは間違いないと思う。読唇術などできないが、明らかに「ああ、そうなんだ」と仲口の唇が動いたのは確認できた。今日、寺田祥が12レースでチルト3度を駆使した。石野貴之、坂口周も実践に移す動きがある。まさか仲口も、か。まあ、使わないとしても、興味はあるのだろうけど。
2007_0829__0027  阿波については、長嶺さんが「阿波は優しいわ~」と感心していた。まだ阿波流には仕上がっていない機力。どうやら、部品を総とっかえしてしまおうか、というプランがあったのだそうだ。しかし、阿波は「それは言い出せませんでした」と長嶺さんに語ったという。つまり、チルト3という“特殊な”戦法を使う自分のために、モーターをいじりすぎるのは申し訳ない、という思いが阿波にはあるらしいのだ。「そんなこと考えんでもええのに……。阿波は優しすぎるわ~」。阿波は、ただ独善的にチルト3を繰り出しているのではない。それが時に他者に迷惑をかけるかもしれないと恐縮しつつ、しかし暴力的、破壊的な伸びを爆発させようとするのだ。それも男の姿。カッコいいと思う。でもアワカツよ、僕も長嶺さんと同意見。SGという舞台ならなおさら、誰に遠慮することなく、大マクリを繰り出すべく、暴れてください!

2007_0829__0299  で、本日チルト3を繰り出した一人、寺田祥。レースを終えてピットに戻ってくると、さすがに目元に苦笑いが浮かんでいた。初めての体験ですからね。どうやらスタートが難しかった模様で、しかしスリット後に内を飲み込む素振りを見せていたから、伸びは充分だったようだ。さらに、回り足もまあまあだったと思うんだけど。なんだか、全身を脱力させてるようにも見えたテラショーに、多くの選手が近寄って、笑いながら声をかけている。「どうだった、どうだった?」って感じでしょうかね。小走りで駆け寄って、もっとも長く話し込んでいたのは坂口周。チルト3を視野に入れているだけに、おおいに興味があったのだろう。テラショーの話も参考に、明日あたり坂口2007_0829__0157 バージョンのチルト3が飛び出すか!?

 さて、今日もポイントを上げられず、絶対絶命の気になる山崎智也。今日は遅くまでペラ調整。笑顔を見せてはいたけれども、当然、胸の奥にはさまざまな思いもあるだろう。10レース2着の湯川浩司が、「コンマ05、叩き込んじゃった~。こ、コワ~」と智也に笑いかけると、穏やかな笑みを見せて、しかしすぐに湯川のもとを離れて、一人になっていた。そんなあたりに、実は自分に苛立つ部分を見たりもしたのけど、考えすぎだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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