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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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サムライたちの表情――4日目、後半のピット

2007_0831__0026  12R。バックで、外に今垣光太郎、内に池田浩二で併走となった。こうした場合、SGクラスなら内が断然有利。池田が1等、今垣が2等で態勢が固まるかと思われた。しかし、2マークで池田が大きく流れた! 差した今垣が前に出る。これでほぼ決着はついた。1着・今垣、2着・池田。今垣は2着では準優が危なかっただけに、幸運な1着とも言えた。
 ピットに戻ってきた池田は、出迎えに対してはまず苦笑い。しかし、上瀧和則が声をかけにくると、途端に表情がなくなった。そして、悔しさが滲み出てきたのである。おそらく、上瀧は慰めの言葉をかけたのだろう。それに対して、ヘルメットを脱いだ池田は、首を捻って応えていた。上瀧が、ふっと微笑む。それは、失敗を悔いてみせる後輩がかわいくて仕方がない、という感じのスマイルだった。同じレースを走った瓜生正義が近寄ってくると、再び苦笑いを見せてはいたが、しかし気分が晴れた様子は少しもなかった。
2007_0831__0116  一方、今垣光太郎は……なんとまあ、こちらも思い切り渋面を作っていた。池田から少し遅れて、控室へと戻ろうとした今垣は、僕と目が合った瞬間、悔しそうな風情で思い切り顔をしかめてみせたのだ。もし、それが2着に敗れた後だったら、「やっちゃいました」と翻訳できただろう。しかし、今垣は逆転で1着をもぎ取ったのだ。準優のピットも、奪い取ったのだ。だというのに、その表情。おそらくは、納得のいかない機力と、それがゆえのスッキリと勝ち切ったとは言えないレースへの不満が、その表情の答えだと思う。
 勝者も、敗者も、同じ顔をすることがある。勝負というものは、まったくもって奥が深い。

2007_0831__0038  池田に笑みを見せていた上瀧和則の動きが、ちょっとだけ気になった。あ、ちょっと待った。動き、ではないな。上瀧の行動というか……いや、動いていないんだよなあ……ようするに、意外な場所に長く留まる上瀧を見つけて、首を傾げてしまったのだ。
 上瀧がいた場所は、整備室に隣接した喫煙室。ここは、整備中あるいはペラ叩き中の選手が、休憩をする際に使用する場所であり、そうでない場合はたいてい、ピット奥の選手控室にいるというのが彼らの行動である。そりゃあ、リラックスしたいときには、仕事がすぐそばにある場所よりは、のんびりとできる控室のほうが適しているに決まっている。
 だというのに、上瀧は喫煙室にいたのだ。ちらちらと様子をうかがってみると、整備をしている様子はない。もちろん、出走するレースはすでに終わっている。普通ならば、控室にいるはずなのだ。それなのに、上瀧は喫煙室でじっとしている。他には誰もいない。ただ上瀧だけが、喫煙室のソファに座って、動かないのだ。
 勝負師は、時に孤独を求めるものなのか。実を言えば、上瀧はボーダーライン上にいて、11Rや12Rの結果次第では次点に終わる可能性があった(結果的に18位で予選通過となった)。もしかして、あのときの上瀧は、運命の宣告を一人、待っていたのか。それを受け入れる覚悟を胸に携えながら。だとするなら、この男はやっぱり、サムライだ。

2007_0831__0435  準優突破が確定したあとに、気づくのは遅きに失するというものであろう。川﨑智幸が、実にいい雰囲気なのだ。それを認識したのは、JLCの準優進出選手のインタビュー収録を見て、だったから、本当に遅い。もっと早く気づくべきだろ、ほんとに。
 どんな雰囲気かというと、他の準優組よりも、はるかに肩の力が抜けているのである。長嶺豊さんとも、時に爆笑を交えながら、談笑しており、これが明日に大一番を控えている選手か、とまで思えてしまう。それくらいにリラックスしており、まさしく百戦錬磨の渋さを発見してしまうのだ。あれだな、うん、ここまで気づかなかったのは、まさしく初日から同じような雰囲気だったからだろう。予選道中はどうしても、愛知勢の気合とかに目が行ってしまうから。まあ、言い訳でしかないが、明日の川﨑には要注意だ。思えば、川﨑と上瀧は、60期の同期生。サムライのあり方は、人それぞれということか。

2007_0830__0048  笠原亮も、いい雰囲気だぞ。彼は、負ければ素直に悔しがり、勝っても反省を忘れない。また、好調のときには声が弾み、不調に喘いでいるときには自嘲気味の言葉を発したりもする。まさしくピュアな男だし、また調子の良し悪しが表に表われやすい男ともいえる。もちろん、それは彼の強さのヒミツだ。
 9R、今節2本目のマクリ一撃で、2勝目をあげた笠原。実に見事なレースぶりで、アシは完全に仕上がったようだ。レース後、「カッコよかったっす!」とすれ違いざまに声をかけると、笠原は照れたように、しかししっかりとした表情で、ニッコリと笑って頭を下げた。もし機力やレースぶりに手応えがなかったら、笠原はきっと「たまたまです」とか言っただろうから、この笑顔は明らかに、好調の証。A2落ちの屈辱も浴びた笠原だが、完全復調と見てよさそうだ。

2007_0831__0636  7R、ヒヤリとするシーンがあった。菊地孝平と西島義則が2周1マークでもつれ、菊地の頭上を西島の艇が通過するような形になったのである。グラチャンで、やはり西島と上瀧がもつれたシーンと酷似した2艇の交錯。あのときの上瀧は、ケガを負っている。
 ピットには、いつもと変わらぬ菊地がいた。まずはホッとする。明日の出走も問題ないようで、早々と準優進出選手としてのコメントを出してもいた。だが、やはり気になる。控室へ戻ろうとする菊地を、つかまえた。
「大丈夫っす! バッチリっす!」
 まずは元気一杯に応えた。これで完全にひと安心。しかし、続く言葉は、僕を震えさせた。
「マジで、死ぬかと思った……」
 それほどまでに、危険な場面だったのか……。そう言った菊地は、おそらく僕の前に何人にも聞かれたのだろう、ちょっとばかり「それを言わせないでくださいよ」とでも言いたげな苛立ちを浮かべていた。「だから、ツイてましたね」、そう菊地は笑ったが、僕にはとても笑うことなどできなかった。気分を入れ替えて、明日頑張って、そういうのが精一杯。我々には、ただただ無事にレースを終えることを祈るしかない……。

2007_0831__0060  2・3着条件だった今日、3・3着。わずかなところで、山崎哲司は準優進出を逃してしまった。
「やっぱり、昨日、だよなあ。こうなるもんだよなあ……」
 昨日、とは、先頭を走りながら坂口周に逆転を許し、2着に敗れたレースだ。あれが1着だったら、準優に届いていたのだから、間違いなく逆転されたことが運命を分けた。それが「自分の失敗だった」のだから、後悔はなおさら大きい。
 しかし、今節でテツは間違いなく、大きな糧を得た。
「自分のペラをもっと信じるべきだったなあ……。池田さんのペラが出てるんで、それを参考にさせてもらったりしたんだけど、でもここ(蒲郡)のお盆開催で使ったペラを煮詰めて煮詰めてやればよかったんですよね。自分で、あれが限界だと思ってしまったから……」
「やっぱり、経験が足りなかったんですよ。SGに出てる人は、本当にバランス良くて、調整を見つけるのが早い。うん、やっぱりこんなにバタバタしてちゃ、いかんのですよねえ」
 テツはたいしたヤツだ、と思った。予選を終えてすぐに、こうして自分と向き合い、何が足りなかったのかを具体的に表現することができる。それはまぎれもない、強者の資質なのだ。けっこう逞しいヤツだなあ。今節、中尾“師匠”茂幸カメラマンとの関係もあって、何度か話はしたけれども、今日、初めてそう思った。もしかしたら次のダービーで、いきなりさらに強いテツを見られるかもしれない。

2007_0831__0295  さて、結局這ったままで予選を終えてしまった気になる山崎智也。後半はほとんど、姿を見かけることはなかった。賞金王の勝負駆けと言われて臨んだ今節。結果を出すことはできなかった。だが、ここで終わる智也ではないことは、競艇ファンの皆さんのほうがご存知のはず。明日も、明後日も、気にさせてもらいます。気を落とさずに、がんばれ智也!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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 差し!まくり!逃げ!この夏、夜空に炸裂!蒲郡SGモーターボート記念の主役と目された水上の侍六人衆は松井繁・濱野谷憲吾・原田幸哉・辻栄蔵のドリーム戦メンバー4人に山崎智也・今垣光太郎を加えた6人ですが、3日目の時点で得点率3.50に終わった山崎智也が早くも予選落ち...... 続きを読む
受信: 2007/08/31 23:54:16
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