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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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ピリピリ勝負駆け――5日目、前半のピット

2007_1123_0001  前検日に競艇場入りした際、当確者も含めて52名全員が、賞金王決定戦を意識していたはずである。しかし今日、その意識を持ち続けられる者は半分以下に減ってしまった。湯川浩司、瓜生正義、松井繁の当確組を除いた準優進出者15名+胃をキリキリさせながら結果を待つ三嶌誠司&池田浩二の17名。三嶌と池田にしても、自力ではどうにもできないところにいるわけだから、実質15名だけが特別な思いを抱いて、ここにいる。
 もちろん、実際のところ、賞金王決定戦を強く意識して、一日を過ごしているわけではなかろう。準優勝戦という、一節の中の最大の剣が峰を勝ち抜くことだけが、15名の関心事に違いない。勝てば賞金王、そんなことを考えて作業をしている者は、少なくとも前半のピットにはいないと思う。だが、意識の水面下に12コのピットが存在していることも、間違いのないことである。それが無意識のなかの意識だからこそ、今日の戦いに臨む気合に特別な力強さが生まれるのだと思う。
2007_1123_0036  準優に残れなかった者が今日戦うのは、単なる敗者戦ではない。5日前には強く意識していたはずの舞台を、意識から消して戦う、いわば12ピット争いの敗者戦でもある。つまり、今日のピットはどこか特異な空間となっている。普段の5日目以上に、心中に抱く思いに差のある5日目なのだ。
 妙にピリピリしているように感じられた前半のピット。準優組がピリピリしているのは当然とはいえ、敗者戦組もそうであるように思えたのは、そういったことが理由だったのか。レースが終わるごとに選手が集結し、和やかな雰囲気が支配するエンジン吊りの作業で、ほとんど笑顔が見られないのには驚いた。ようするに、そういう日、なのだろう。

 準優組の様子をざっと記しておこう。
10R
①市川哲也 ピリピリ指数20
2007_1123_0258  いきなりだが、もっとも雰囲気がよく見えたのは、市川だった。18名のなかで、もっとも笑顔が多かったように思う。賞金王決定戦優勝、モーターボート記念完全優勝、そんな緊張を強いられる舞台を経験している彼には、今日の緊張感も特別なものではない。
②原田幸哉 ピリピリ指数80
 市川とは逆の意味で、もっとも雰囲気がよく見えたのは、幸哉だ。表情がとにかく怖い。目つきの鋭さが尋常ではないのだ。もっとも気迫を表に出しているのが、この男ということ。空回りしなければ、壮絶なレースを見せてくれるはずだと思う。
③佐藤大介 ピリピリ指数40
2007_1123_0703  柔和な顔つきでいることの多い大介だが、さすがに今日は厳しさがうかがえる表情。幸哉とおそろいのウェアで歩いていると、なかなかに迫力がある。
④川﨑智幸 ピリピリ指数30
 川﨑も、こんな雰囲気のなかでの戦いは手馴れたものだ。2R前には、ボートごと整備室に運び込んで本体整備。それほど時間をかけたわけではないが、戦いの準備に怠りはない。
⑤渡邉英児 ピリピリ指数20
 整備室の奥の「工作室」と掲示されている部屋で、整備に励む。今日も“英児スタイル”を貫き通している。装着場に出てきた際の表情は、平常と変わらないように見える。
⑥西島義則 ピリピリ指数70
 幸哉ほどではないが、とびきりの気迫を感じる一人だ。昨日、勝負駆け成功後の足取りを伝えたが、比較すると踏み込みがやや浅い。同時に、しっかり規則的な足の運びで、力強さは感じる。進入のキーを握る男だけに、何十何百種類のシミュレーションをフル回転でしているのではないか。

11R
①瓜生正義 ピリピリ指数40
2007_1123_0273  ここ一番の場面では、頬がぎゅっと引き締まるのが瓜生。もちろん今日も、そんな瓜生が見られた。緊張に震えているわけではないだろうが、普段よりも顔つきは厳しい。
②平石和男 ピリピリ指数35
 穏やかな振る舞いを見せる平石も、大一番の前には迫力を感じさせる。時間を追えば追うほど、その度合いは強くなり、前半はまだ強烈ではない。これからの時間帯でどう変化するかに注目したい。
③佐々木康幸 ピリピリ指数35
 ピット内を駆け足で移動しているのを何度か見かけている。焦ってドタバタしている印象はないものの、少しだけ気になった。
④倉谷和信 ピリピリ指数50
2007_1123_0376  怖い。もともと、いかつい顔である(失礼だけど)。それが、こうした場面ではさらにすごいことになるのだ。思い出すのは、一昨年の芦屋チャレンジカップ。準優、優勝戦でのコワモテぶりには、ひたすら圧倒されたものだ。あのときの状態に、近づいているという印象を受けた。もっとも怖い(顔がじゃなくて)存在だと思う。
⑤西村勝 ピリピリ指数45
2007_1123_0326  準優や優勝戦の賞典レースに限らず、どんなレースでも気合を感じる男である。その意味で、今日は特に変わった様子は見えないと言うべきか。
⑥上瀧和則 ピリピリ指数??
 ピットではほとんど姿を見ないが、池上一摩カメラマンによると、選手食堂で烏野賢太と並んで食事をしていたとか。仮に、ピットで姿を見たとしても、その心中は判然としなかったに違いない。ピリピリ指数は常に高いように見えながら、選手仲間とは笑顔で冗談を飛ばし合う。そんな上瀧を見れば見るほど、惑わされるに決まってる。

12R
①湯川浩司 ピリピリ指数75
2007_1123_0245  あの湯川が、まったく笑っていない。むしろ、眉間にシワを寄せて、不機嫌にすら見える顔つきなのだ。準優1号艇というのは、もっともプレッシャーがかかる局面でもある。その重圧と、真っ向から対峙し、戦っているのだろう。賞金王当確なんてことは、今日の湯川の頭にはない。ただただ、予選1位の栄誉とプレッシャーのなかで、優出することだけを考えている。
②寺田祥 ピリピリ指数25
2007_1123_0311  渡邉英児と同様、工作室でペラを調整していた。どんなときもクールな表情を崩さないテラショーだが、今日はなんと、検査員さんたちと大爆笑している姿を見た。少なくとも、妙な緊張はない。
③松井繁 ピリピリ指数50
 ピリピリ指数50は、普段と変わりはないものである。2R後、弟子の山本隆幸にアドバイスをしている姿があった。笑顔はなかった。
④白井英治 ピリピリ指数30
 透明な気合を感じる。必要以上に入れ込んではおらず、適度な緊張を胸に作業をしている感じだ。
⑤太田和美 ピリピリ指数35
2007_1123_0386  まったく普段と変わらぬ表情。ただし、気合は何割か増しな印象を受けた。朝イチで挨拶を交わしたのだが、返してきた会釈が妙に力強かったのだ。賞金王決定戦1V、賞金王シリーズ2V。決定戦とシリーズに横たわる深い溝を、もっともよく知るのが彼なのかもしれない。
⑥中島孝平 ピリピリ指数45
 もっとも緊張感をたたえているように見えたのが、彼だった。まあ、ムリもないかな、とも思う。SG初準優、しかもそれが夢の舞台につながっている。緊張するなというほうがムリだろう。しかし、浮き足立ったところはない。良好な気合に変化していく可能性もあると見た。

 ピリピリ指数は、あくまでも独断。ただ、いつもよりこちらの身も引き締まる雰囲気を18人がかもし出しているのは間違いない。太陽系最大の勝負駆け、その一発目まで2時間を切っている……。

2007_1123_0218  最後に、気になる山崎智也。穏やかに、リラックスして過ごしているが、こちらの勝手な思い込みだとしても、どうしたって強い悔いを感じずにはいられない。現実を受け入れはしても、納得はしていないのだろう。もちろん、納得していないのは自分に対してだ。つまりは、今日もまた、男っぽい智也に出会ったということだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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