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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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勝負師の本能――チャレンジカップ、前検のピット

2007_1119_0841 「……松井がええで~」
 選手たちが慌しく動く整備室を覗き込んでいたら、隣に長嶺豊さんがやって来たのに気づいてご挨拶をすると、長嶺師匠は万感のこもった口調で、そう言った。
 長嶺さんがインタビュアーを務めるJLCの展望番組には、ドリーム組が全員出演した。もちろん、松井繁も、である。長嶺さんは、松井に質問をし、マイクを向けながら、涙が出そうになったそうだ。
「松井、カッコええなあ~……」
 大阪の後輩でもある松井と、長嶺さんはこれまでたくさんの時間を過ごしてきたはずだ。松井の人となりも、よく知っている。もちろん、レーサーとしての性質も。さらに言えば、レーサー同士だからわかる胸の内さえ。そんな長嶺さんが、隣に立った松井に思わず見惚れてしまった。
「結局、ドリームのことはな~んも聞かへんかった」
 悪戯っぽく笑った師匠だが、そのこと自体が“ドリームのこと”を聞いたも同然だろう。つまりは、松井は目も眩まんばかりのオーラを発しているのだ。
 実は僕も、同じようなことを感じていた。ドリーム組の共同会見、会場の記者室に現われた松井を見て、身体全体から発散される充実ぶりを感じずにはいられなかったのだ。どこが、と言われても困ってしまうのだが、あえて言うなら振る舞いのひとつひとつに迫力を感じる、ということだろうか。アシ色についても、「久しぶりにいい感じです」とキッパリ語っている。機力に手応えを得たことが、さらに松井を大きく見せているのか。
 今節は、王者の王者たるゆえんを見せつけられるのかもしれない。

2007_1119_0368  種類は違うが、同じようにいい雰囲気を感じたのが、田中信一郎だった。浜名湖の上位モーターは、番号札の数字が赤字(他は黒字)になっていて、しかし信一郎は「赤札を外してほしいですね」と笑った、すなわち数字ほどのアシではないことを表明しているが、ちっとも困っているようには見えない。「出足はいいが、伸びが売り切れる」ということらしいのだが、それはすなわち「信一郎なりの高いハードルをクリアはしていないが、調整さえすれば光明は見える」と翻訳したほうが良さそうである。ドリーム会見では、コース取りを聞かれて「100%動きます。動いてナンボですからね」とまで言い切っている。爽快な語り口がかえって訝しく思えるほど、信一郎は事もなげに断言した。僕には、それが彼の精神的な充実度を物語っているようにしか、思えなかったのだが。

2007_1119_0685  前検もずっと進んだ時間帯のことだ。水面には9班、すなわち今節もっとも登番が若い選手たちがスタート練習を行なっていた。3本の練習が終わり、1周の前検航走。展示タイムを計測する航走だ。だからもちろん、レースでの展示と同じように、1艇ずつ間隔を開けて走る。つまり、何艇かはピット付近の水域で、前の艇が走り出すのを待機している。そのボートの群れに向かって、湯川浩司が頭上で手を振った。湯川の視線の先には、井口佳典、山本隆幸、田村隆信がいた。同期である銀河系軍団に、湯川は愛想を送っていたというわけだ(湯川はドリーム出場だから、前検は1班)。とは言うものの、湯川の顔つきは真剣そのものであった。今日の湯川は、笑顔よりはぐっと男っぽい表情が目についていて、気合乗りの良さを感じさせている。走り去った同期を見つめる顔を、水面に反射した陽の光が赤々と照らす。震えるほど、美しいシーンだった。

 競艇王チャレンジカップ。賞金王決定戦へのラストチャンス。全レースが勝負駆け。僕はたしかに、ボーダー組や優勝一発勝負の選手たちの、強烈な闘志を楽しみに浜名湖にやって来たはずだった。だというのに、まず目についたのが「賞金王当確組」だったというのは、どういうことなのだろう。やはり、このクラスには勝負駆けウンヌンは関係ないのか。そこにSGというでっかい獲物がある限り、勝負師の本能がうずく。そのとき、立ち位置がどうのこうのというのは些末な話に過ぎないというのか。僕は、そこにSG戦士たちの凄みを見出さざるをえない。あるいは、だからこそ彼らは賞金王に駒を進められるのだ、と。やはり、このクラスの勝負へのこだわりは、我々の想像のはるか上を行っている。あ、上の3人はすべて大阪組じゃないか。今節は、大阪旋風が巻き起こるのかもしれない。

2007_1119_0495  とは言いながらも、やはり勝負駆け組の気合も生半可ではない。原田幸哉は、児島で見た以上に、表情に厳しさを宿している。それは、不機嫌にすら見えるほどで、この大一番に懸ける気迫がみなぎっている。池田浩二も、仲間と一緒に過ごしている間は笑顔も見えているけれども、一人になると表情がキュッと引き締まり、自然と気合が表に出ている。三嶌誠司も、競艇場入りの際の笑顔は完全に封印していて、僕のほんの数m先を通過しながら、入りのときとはまったく違って僕になど目もくれない。これはまさしく、三嶌の勝負モードの振る舞いだ。
2007_1119_1050  エンジン吊りに飛び出しては、走って整備室へ飛び込む。これを繰り返していたのが、今村豊。ギアケースの整備にいそしんでいたようだ。その足取りは妙に軽快で、そして相当に急いでいるようでもある。他の選手が、キビキビと動いているとはいえ、そこまでのダッシュを見せていないから、今村の動きは実に目立っていた。彼が、ここまで走り回っているのは、最近ではほとんど見ていないから、さらに目を奪われるというものだ。顔つきには微笑が見えていたから、決して焦っていたわけではなかろう。むしろ、わずかな時間も惜しむほど、整備をしたくてしたくてたまらん!といった風情。そんな今村豊は、やっぱり誰よりも若々しい! そして、そんな今村豊こそ、待ち望んでいた姿を体現しているミスター競艇である。

2007_1119_1028  さて、一発逆転なるか、気になる山崎智也。こんなにスッキリした雰囲気の智也をSGで見るのは、いつ以来だろうか。村田修次、齊藤仁、佐藤大介ら仲のよい選手とにこやかに談笑するのはいつも通りだが、それ以外の場面でもここ何度かのSGで見られた焦燥感はない。アシに手応えを得たのか、はたまた開き直りか。その正体はどうにもつかめないが、これが悪い状態でないのは間違いない。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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