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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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 ボートレース特集

準優ダイジェスト

10R

地元の意地

①一宮稔弘(徳島)
②原田幸哉(愛知)
③烏野賢太(徳島)
④川﨑智幸(岡山)
⑤三嶌誠司(香川)
⑥吉田弘文(福岡)

2007_1114_10r_0011  地元の川﨑が絶好の4カドから混戦を制した。進入は123/456。スタ展では同じ枠なりでも三嶌の前付け狙いに川崎が抵抗したため12345/6。三嶌としては「こりゃ無理やな、S見えてる地元の川﨑をマークしよう」と思ったのだろう。本番ではすんなりの3対3になった。この差は大きい。艇をピット近辺まで引いて、4カドの川﨑はいち早く発進した。
 早い。
 スリットのはるか手前でスロー3艇を捕える勢い。このまま全速で行ったら楽~にハコまくりという態勢なのだ。が、さすがに起こしが早すぎたか、スリット直前でアジャスト(タイミング04、正解だった)。一時は2艇身ほども遅れているように見えた3コース烏野が全速で伸び返し、1マーク手前で川﨑の内側にへばり付いた。すでに絞りまくり態勢に入っていた川﨑としては二者択一。そのまま強引に握り潰すか、軌道修正で差しに回るか……川﨑は瞬時に後者を選択し、これが正着だった。握っていたら、烏野もろとも対岸までぶっ飛んでいただろう。
2007_1114_10r_0027  差しに構えてからの川﨑は見事の一語。内でもたつく幸哉の外を絶妙のタイミングで突き抜けていた。今節も事故が多発しているように、児島の1マーク付近はうねりがある難所である。が、川﨑はこの難しい水面と展開の中で、あっさりと最善手を見い出したのだ。これぞ、地元の利。そして、地元の意地。
 焦点は2着争い。1マークで烏野が転覆したため、第2議席は2マークで決まる。川﨑に連動して差した三嶌がバックで優位を築き、1艇身遅れで逃げ残した一宮が続く。この四国対決は2マークで一宮が渾身のツケマイを決めて逆転優出を果たした。
1着・川﨑智幸
2着・一宮稔弘

11R

怪物級の逃げ

①前本泰和(広島)
②田村隆信(徳島)
③馬袋義則(兵庫)
④吉田拡郎(岡山)
⑤大庭元明(福岡)
⑥金子良昭(静岡)

2007_1114_11r_0008  進入は1236/45。スタ展は126/345だったが、本番では馬袋が金子の前付け進路を塞ぎ、穏やかな4対2進入になった。トップスタートは瀬戸の韋駄天・吉田拡郎。最近、妙にSが慎重になってきた拡郎だが、地元の大一番でビビるわけにはいかない。10Rの川﨑先輩の背中も見ている。5カドから飛び出した拡郎は、内の様子を伺いつつ絞り気味にハンドルを切っている。
 いくらカドからトップSを切ってもインまで届かないのが、今節の児島水面だ。インの前本は外を気にする風もなく1マークを制した。田村も正攻法の差しに構える。そこに割り差しを目指した拡郎が襲い掛かる。私の目には前本のターンがやや流れ、田村と拡郎が突き抜けるように見えた。2-4態勢か!?
2007_1114_11r_0031  が、その見立てはお門違いもはなはだしかった。やや流れ気味に見えた前本の艇は、ターンし終わった瞬間にギュイ~~~~ンと伸びて独走してしまったのだ。なんたる出足回り足レース足!! これまたバック半ばで焦点は2着争いに。田村か、拡郎か。わずかに優位を保っていた拡郎が2周2マークで田村に強ツケマイを放ち、嬉しいGI初優出を果たした。トップSから田村とのスピード勝負に勝っての優出は誇っていい。地元の利と地元の意地は川﨑だけのものではなかった。
 それにしても、繰り返すが今日の前本のレース足は怪物級だった。一般戦7連続Vという史上初の快挙を成し遂げた勢いとパワーは、もはやGIまで呑み込もうとしている。
1着・前本泰和
2着・吉田拡郎

12R

消えた主役

①寺田 祥(山口)……欠場
②田中信一郎(大阪)
③大嶋一也(愛知)
④菊地孝平(静岡)
⑤赤岩善生(愛知)
⑥森高一真(香川)

2007_1114_12r_0004 「下駄を履くまでわからない」がスポーツの常套句だが、寺田祥は下駄を履けぬまま水面から去った。去ってしまった。
 スタ展のピットアウトから、何が起きたのかはよくわからない(←詳しくはピットレポート参照のほど)。様子を再現すると、まずは大嶋が凄まじいピット離れで1艇身ほど飛び出した。もちろん、そのまま内に切り込みインを狙う。展示の段階でも敵を威圧し意思を表示するのは当然のこと。信一郎を追い抜き、寺田にぐぐいと迫ってゆく大嶋。「そう簡単に譲りませんよ」と加速する寺田。あるいは、ここで接触があったのか。
 結局スタ展の進入は寺田がインを文字どおり死守する形で132456になった。見ている側としては、「こりゃ本番では大嶋がインを獲りきるな」などとぼんやり考えていたわけだが、ここで妙な異変が起きた。いきなりインの寺田が回り直したのである。スタンドがざわめく。
「うわ、これで寺田のインはなくなったぞ!!」
「何をしとるんじゃ、寺田は!?」
 回り直したからには6コース……この瞬間に1コースは進入禁止の領海になってしまったのである。私は驚きながら、寺田が本番でも大嶋に攻められるのを是とせず、ダッシュ戦法に切り替えたのだと勝手に考えた。節イチの伸びを誇る寺田の破壊力は、むしろダッシュでこそ生きるからだ。本番はもちろん、4カド狙いか。
2007_1114_12r_0009 だが、そうではなかった。回り直した寺田はダッシュどころか、スタ展のコースにさえいなかった。ピットに帰還したのだ。ボート破損による欠場……スタンドはざわめきから騒然に変わった。
「寺田がおらん!」
「なんでじゃ、何があった!?」
 節イチのパワーを誇る大本命の失踪。驚かない方がどうかしている。が、いちばん驚いたのは寺田本人だろう。111失1というド派手な成績で、失格がありながら予選トップ。それほどエンジンは噴いていたし、リズムも抜群だった。準優はおろか、明日の優勝戦の1号艇まで視座に入れていたはずだ。が、自分が主役の舞台を、ピットの物陰からひっそりと見つめることになるとは……。
 主役なき舞台は、それでも続く。5艇立ての本番は23/456。大嶋のピット離れはスタ展ほどの迫力がなく、信一郎が楽に取りきった。今節は2コース慣れしている大嶋が「ここでもOK」という感じで続く。そして、菊地孝平が意表というほどではないが、3カドに艇を引いた。本人にしてみればハナからカド狙い。4コースが3コースになっても、初志を貫きたいという思いもあっただろう。
2007_1114_12r_0012  菊地孝平の3カド。平均タイミング12、記念では09くらいと思われる男の3カド。これはヤバイ。内2艇の背中をぞぞぞと悪寒が走り抜けたのではないか。そうだとしたら、その悪い予感は的中することになる。3カド菊地のスタートはコンマ17。さほど早くはなかったが、カド受けの大嶋が29だったからたまらない。菊地はスリットからあっという間に大嶋を飲み干した。インの信一郎は19発進から、この菊地の進軍を牽制する。一瞬だけまくる気配を見せてから、菊地は自重してまくり差しに構えた。当然、菊地のまくりだけを警戒していた信一郎はターンマークを外して流れる。
 アタマは菊地だ!
2007_1114_12r_0025  そう見えたのは私だけではないだろう。が、3カドからの速攻には思わぬ落とし穴も隠されていた。菊地マークを決め込んでいた赤岩と森高が、楽々と内水域の突破に成功したのだ。寺田がいれば5、6コースだったはずのふたりが4、5コースからの決め差し。ターンマークまでの距離の近さが断然違う。バック直線では内から5642の順に並び、その順番のまま2マークを回って艇間が開いた。5-6-4。絵に描いたようなアウト決着。
「たらればは禁物」は勝負ごとの常套句だが、もし寺田祥がいたら……拙稿を書いている今もその幻のレースが浮沈する。暴力的な伸びで1マークを制し、バックで一気に突き放す寺田の姿が。111失1欠。5日間、異彩を放ち続けたシリーズの主役は、穴の開いた船底とともに水面下へ消え去った。
1着・赤岩善生
2着・森高一真

※寺田祥……欠場
(Photo/中尾茂幸、Text/畠山)


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