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ボートレース特集 > 優勝戦 私的回顧
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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 ボートレース特集

優勝戦 私的回顧

「やんちゃなスター」誕生!

チャレンジカップ優勝戦

①湯川浩司(大阪)
②佐藤大介(愛知)
③倉谷和信(大阪)
④寺田 祥(山口)
⑤川﨑智幸(岡山)
⑥西村 勝(埼玉)

2007_1125_r12_0531  パワー万全、リズム完璧の湯川であっても、不安がなかったわけではない。
 イン戦はスタートまで相手が見えない孤独な戦いなのだが、今日の湯川はとりわけ孤独だったはずだ。他の5艇はすべて賞金王への勝負駆けで、そのうち4艇はSG初Vへのアタック。モチベーションは高く、失うものがない挑戦者の立場で水面に向かう。その5艇の新鮮なパワーを、湯川はひとりで受け止めなければならなかった。
 「呪われた1号艇」とでもいうべき不吉な現象も、湯川の脳裏をかすめたかもしれない。森秋光の展示後状態変更、大嶋一也の内規違反、今村豊の疾病、そして昨日は瓜生正義のF……悪魔に魅入られたように、1号艇に不測のアクシデントが連続して起こった。返還による主催者のダメージも少なくない。
「絶対に無事故完走を遂げなければ!」
 そんな気持ちがいつにも増して強かっただろうし、それが守りの姿勢につながる危険もあったはずだ。他の5艇と違ってすでに今年SGを制覇し、賞金王へのキップも手にしている湯川なのである。攻めより守りを重視してもおかしくはないだろう。
2007_1125_r12_0542  だが、そんな傍観者の勝手な心理分析や不安を、湯川は一閃のインモンキーでぶっとばした。コンマ11のトップスタート。昨日の準優とまったく同じタイミングで、湯川はスリットを通過したのだ。攻めすぎず守りすぎず、平常心で臨んだ証である。2、3コースがともにコンマ15、パワー的に当面の敵と見られていた寺田祥がコンマ20だから、勝負はほぼスリットで決したといっていい。
 誰からもまくられることのない隊形から、湯川は豪快に1マークを制した。これも完璧。まったく隙のないインモンキーに、佐藤が差し場を逸して減速する。倉谷の二番差しは、もちろん届かない。三番差しの寺田はもっと届かない。ただ、回ってからの寺田のレース足は、やはり恐るべきものだった。バックの中ほどで楽々と倉谷を捕まえて、前だけを見据える勢いなのだ。先頭が並みのパワーの選手であれば、残りの2周半で逆転さえありえたかもしれない。
2007_1125_r12_0577  しかし、湯川のレース足も超抜だった。逃げた湯川と三番差しの寺田。ここで発生した5艇身ほどの差が、いくら回っても変わらない。変わらないということは、追う寺田の方が強いのかもしれないが、縮まらなければ意味がないのだ。ダービーは4着で今回が2着。この2着で賞金王の当確が点るとはいえ、道中、寺田は悔しかったことだろう。敗因はパワーではない。初日から準優までの些細な要因が今日の枠番の差を生み、5艇身の差を生んだ。スタートでの精神力の差も含めて……そのシビアな現実を、悔しさとともに痛感しただろう。それでいい。湯川の背を見る寺田に無念と悔恨の思いがあったとしたら、それはすべて寺田の糧になる。寺田は素晴らしい経験を積んだ。4着から2着へ。次に残された着は、頂点しかない。
2007_1125_r12_0600  最終ターンマーク、湯川は豪快に艇をぶん回した。そのままスタンドに衝突しそうな勢いで艇を流す。やんちゃな男だ。堤防すれすれを走りながら、ゴールの150mほど手前でもうガッツポーズを繰り出している。やんちゃで、華がある。ダービーあたりから「魚谷の時代が到来する!」と騒がれはじめたが、この男も負けてはいない。華がある、という一面だけを見れば、湯川の方が上かもしれない。
 ゴールでまた湯川は右手を高々と突き上げた。2度目のSG優勝。私の勝手な見解だが、「SG1Vは超一流選手、SG2Vはスター選手」という思いがある。この優勝で湯川は艇界のスターダムに乗った。半年足らずの間に強いA1選手→超一流選手→スター選手へと進化した湯川。来月、福岡で大仕事をやってのければ、このやんちゃなレーサーは問答無用のスーパースターに変身する。(Photo/中尾茂幸、Text/畠山)


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