この特集について
ボートレース特集 > 意外な光景!?の勝負駆け――2日目、前半のピット
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
ライタープロフィール
カテゴリー
関連リンク
競艇サポーターズ
関連書籍

 ボートレース特集

意外な光景!?の勝負駆け――2日目、前半のピット

2007_1120_0533 「太田くん、見なかった?」
 おなじみ野中文恵さんが、同期を探してピット内をさまよっていた。太田和美、ですか……見てないなあ。野中さんが太田を探していた理由は「ノリ」。昼飯につけるの? と聞いたら、「違う違う、糊、だよ」。ああ、文房具のノリ、ですか。なんでも、太田は出走表を切り貼りして、独自の資料を作っているとか。ところが、今日はノリが見当たらない。浜名湖は庭と言っていい同期の野中さんに調達するようお願いした、そして野中さんは仕入れてきた、ということだ。野中さんは69期のよき姐御ですな、といちおう誉めてみたのだが、「違う違う、パシリ、よね」。だはは、たしかに。二人して笑っていたら、はるか前方に太田の姿が見えた。太田は、いつも通りの淡々とした足取りで、試運転用のピットに向かうところだった。このアツい勝負駆けの場で、平常を保っている様子なのがすごいことだと思った。
2007_1120_0301  野中さんが言う。「69期って、下のほうの勢力が強いんだよねえ」。下のほうとは、登番が若いほう、すなわち年下組が強いということだ。3554仲口博崇、3556田中信一郎、3557太田和美、そして最年少が3558山本浩次。SGクラスはたしかに、下に固まっている(3555野添貴裕も記念覇者だ)。「上のほうでは誠やん(3541三嶌誠司)くらいだもんね」。なるほど。一方、銀河系軍団85期は、登番が上のほうにSG常連が多い。4024井口佳典が85期では上から2番目。4025山本隆幸、4028田村隆信、4030森高一真など、年長組はたしかに強い。4044湯川浩司が下のほうだが、この期のリーダー役である井口をはじめ、上のほうに実績を残している選手が多いのは間違いない。
「強い期ってのは、上のほうが強いか、下のほうが強いものなのよね。上が強ければ、全員を引っ張り上げる。下が強ければ、全体を押し上げる」
 なるほどなあ。最強レベルと言われる期には、そうした「強い勢力が上か下に固まる」という特徴があるわけだ。ただし、上か下かで期の性格は変わる、とも。
「上が強いと、全体がまとまるのよね。下が強いと……」
「野中さんがパシリにされる」
「アハハハハハ!」
 ともかく、元選手の視点というのは、さまざまなものを気づかせてくれるものだ。あ、下が強い期は「個性派揃いになる」が正解です。たしかに、69期勢はそんな感じですね。

2007_1120_0334  4R、池本輝明がインから逃げ切り、SG初勝利。40歳の遅咲き男が、嬉しい嬉しい水神祭だ。いや、嬉しい嬉しい表情を見せていたのは、本人よりもむしろ周囲のほうだった。もちろん池本もピットに戻ってくるとヘルメットの奥で目を細めていたが、むしろ淡々とした表情の池本に比べて、広島勢は笑顔満開。きっと池本の積み上げてきた努力を、仲間は知っていた。SG初出場が不思議な実力の持ち主であることも知っていた。だから、自分のことのように嬉しい。そういうことだと思う。
2007_1120_0813  池本がピットに戻ってくる前、リフトに集まった時点ですでに、仲間たちは浮かれていた。隣県の寺田千恵や、中国地区同士の今村豊もその輪に加わっていた。池本の姿がピットに近づくと、バンザイ! 次の瞬間、辻栄蔵がテラッチをお姫様抱っこに持ち上げる。「キャーッ! やめてぇぇ! やめてよぉぉぉ!」
2007_1120_0653  辻がそのままテラッチを“水神祭”しようとする素振りを見せたのだった。もちろん、フリだけですけど。「もぉぉぉぉ!」とふくれるテラッチに、西島が何か話しかけてからかった。テラッチは西島をひっぱたこうとして、西島は大笑いしながら逃げる。テラッチはなおも追いかけて、腕のあたりをバッチーン。今村も何か話しかけて、「私、訴えたらお金になると思うぅぅぅ!」とテラッチ。だっはは、池本のめでたい勝利を肴に、大盛り上がりの広島&中国勢なのでありました。これも池本の人徳! ともかくおめでとうございます!

2007_1119_0587  3R後の話だ。レースを終えて、カポック脱ぎ場に次々と選手がやって来る。一番乗りは、もちろん1着の赤岩善生。公開インタビューがあるので、さくさくとカポックを脱いでいく。そこに、白井英治がやって来た。赤岩がすかさず駆け寄る。「英治さん(英ちゃん、だったかもしれない)、ごめん!」。進入について「あれ、向けた?」などと回顧し始めていて、ややもつれ気味だったコース争いについての「ごめん」だったのだと思われる。いったんはスローに入った赤岩は、回り直しての5コース(秋山直之が6コースに引いたため)発進となっている。そこに返ってきた山本隆幸が、「すみません!」と今度は赤岩に駆け寄った。赤岩は、おぅ、と右手をあげて返した。続いてやってきた笠原亮は、そこにいた全員に対して、「すみませんでした!」。笠原は、1号艇ながらピット離れで遅れ、大きく外を回って前付けのような形から2コースに入っていた。
 そもそもレースというものは全員が敵同士だが、このチャレンジカップはさらに「賞金王のイス獲り合戦」でもある。ライバルたちを蹴落として、輝かしいピットを奪い合う、問答無用のガチンコ勝負なのだ。当然、スタートも踏み込む。コース獲りも激しくなる。己の勝利のために、ギリギリの戦いを繰り広げる。だが、それが正々堂々の真っ向勝負だからこそ、レース後はみなが相手を気遣い合う。「すみません」の応酬は、一見、ガチンコの場にはふさわしくないように思えるかもしれないが、そうではないのだろう。これこそが、真剣勝負の場の美しい真実、なのだと思う。

2007_1120_0485  さて、ともかく気になる山崎智也。4Rは3着で、そこそこの序盤戦といったところか。レース後は、張り出されたスリット写真をかなり長い時間、見入っている姿があった。その直前、写真を見る前に顔を合わせた松井繁が、「10入ったくらいだよな」とドンピシャの言葉を智也に投げかけていたのには驚いたが、それはともかくコンマ08のタイミングに智也は何を思っただろうか。智也の一発勝負は、まだまだこれからだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
コメント
コメントを書く




※メールアドレスは外部には公開されません