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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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それぞれのムード――前検日のピット

2007_1109__0782  前検日は、やはりあわただしい。
 モーター抽選後、わずかな休憩をとってピットに出ると、すぐにそれぞれの作業に着手する。
 かなり早い時間に水面に飛び出していったのは、西島義則、松井繁、田中信一郎などで、最初から整備室にモーターを運び入れて手を付けていたのは、白井英治、寺田祥、重野哲之などだった。また、松井は試運転を終えたあと、整備室で「モーター台帳」に目を通していたが、松井と同様に、これまでの整備履歴などをチェックしていた選手としては、草場康幸、中島孝平、森高一真などが挙げられる。
 作業はそれぞれだが、何もしないでいる選手などは一人もいなく、それぞれに自分のやり方で、スタート練習までの時間を、可能な限り有意義なものにしようとして過ごしているわけだ。
 そんな中、なんとなく気になったのは大澤普司だ。なぜ、気になったのかといえば、理由はない。……だからこそ、なんとなく、なわけだが、ピットの隅でモーターと向き合う「寡黙な姿」が妙に気になったのである。
 これまでは、じっくり取材するチャンスがなかった選手なので、今節は「理由もなく気になった理由」を探るためにも、俄然、注目したくなってきた。

2007_1109__0759  また、地元の若手選手である吉田拡郎も、今日のピットを見ていて、気になった選手である。
 今節は最若手といえる選手の一人なので(吉田拡郎が90期で、郷原章平が91期。その上は山崎哲司の87期となる)、ボートの引き上げなど、いろいろ作業が増えるのは否めない。
 しかし、そうして忙しげに動き回りながらも、あわてている感じがまるでなく、妙なほど落ち着いてるいるように見えたのだ。だからといって、ふてぶてしく見えるわけではなく、とにかく自然体そのものでいるようにしか見えなかったことに好感が持てたのだ。
 地元だから、といえば、たしかにそれが理由なのだろう。しかし、ただそれだけともいえないほど悠然として見えたこの25歳の若者の活躍に期待したい。

2007_1109__0889 2時頃からスタート練習が始まったが、練習から引き上げてくる選手の顔には、ある種の明暗が分かれているものだ。
 もちろん、どの選手もプロのつわものなのだから、どれだけモーターに手応えがあっても高笑いしながら引き上げてきたりはしないし、かなり厳しいと感じていたとしてもしょげかえっていたりするもことない。それでもやはり、それぞれの表情にはどことなく、手応えの良し悪しが反映されているようにも見えるものなのだ。
 たとえば第1班。練習後、記者陣に囲まれていると、明るく笑いながらギャグのような言葉を飛ばして記者陣を笑わしていたのが西島義則だったのに対して、記者に声をかけられて、まず首を傾げたのが小畑実成だった。
 そんな場面ひとつをとっても明暗があらわれているように見えたわけだが、その印象がそのまま正しいかといえば……、実をいうと、そうでもないのが難しいところだ。
 この両選手は、この後、整備室でモーター整備に本格的に取り組んでいたのだが、とくに西島は、まったく手を止めることなく、すべてのスタート練習が終了するまで、モーターと格闘し続けていたのだ。
 そんな様子を見ていると、モーターがいいのか、悪いのかもよくわからなくなってくる。
 そこで、作業が終わりかけていた頃に「モーターの調子はどうですか?」と確認してみると、「悪い!」とひと言できっぱり返されたのである。
 そうは言いながらも、少しも不機嫌な様子を見せずに笑っていたのは、人柄ゆえのものなのだろう。スタート練習後に記者陣を笑わせていたときには、遠目で見ていたので何を言っているのかは聞き取れなかったのだが、それもまた人柄ゆえのものだったのかもしれない。

2007_1109__0898  一方、首を傾げた小畑はどうだったかといえば、こちらはやはり、いい手応えまでは掴めていなかったようだ。
 各班の練習が終わるたびにモーター吊りの手伝いに駆けつけるなどして、整備に集中はしきれてはいなかったのだが、西島と同様、すべてのスタート練習が終了するまで整備を続けていたのである。
 僚友・川崎智幸をはじめとして、深川真二や立間充宏など、多くの選手に話しかけられてくるたび、笑顔を返して話し込んだりもしていたが、そんな姿もまた、この人らしかった。実をいうと、明日(土)発売の『BOATBoy』に記事を掲載するため、最近、小畑のインタビューをしているが、小畑という人は、どこまでも男っぽく、人付き合いというものを大切にしている選手なのである。
 作業がひと段落したころ、モーターについてを尋ねてみたが、やはり「実績もないし、それほど期待ができるモーターとは言えないですね」という回答だった。
 ただ、そう言ったあとに小畑は、間をあけずにこうも付け加えている。
「でも、コースを取ってスタート勝負で行けば、もたない足じゃないですよ」
 この言葉からすれば、良くも悪くもない数字どおり(2連対率31%)のモーターといったところなのだろう。
 しかし、どうしても結果を出したい地元の記念であるからこそ、物足りなさを感じて、首を傾げたのだとも考えられる。
 地元・児島であればスタートも見えているだろう。また、整備力には定評があるだけに、この後、どんどんと足を仕上げていく可能性は高いはずだし、今節の小畑からは目を離せなくなりそうだ。

2007_1109__0969_2   足に関していえば、手応えをつかめていたのだろう選手の一人は、2連対率51%の69号機を引いた山本浩次だ。
 山本はかなりのポーカーフェイスといえる選手で、スタート練習から引き上げてきたときも表情はほとんど変えずにいたために、本当に手応えを掴めているのだろうか……と、こちらも判断しにくかった。
 しかし、なんと、その後に山本は、柏野幸二と話しながら……笑っていたのである!
 同県の選手と話していれば、誰だって笑うことくらいあるだろう、と思われるかもしれないが、山本の元同期である野中文恵・元選手(現、解説者)の証言によれば、「簡単には笑わない男」であるらしいのだ。
 そう考えれば、好感触を掴んでいるものと判断していいだろう。少しばかり強引な理屈であるかもしれないが、まずは明日のドリーム戦に期待したい。

 また、モーターの手応えによるものかどうかは確信できないが、この日の松井は、森高一真、寺田祥などという珍しい相手と話しながら笑顔をよく見せていたのが印象的だった。個人的には、寺田祥も、山本浩次に負けず踊らず「笑わない男」という印象を持っていたのだが、松井と一緒に笑っていたのだから、松井も寺田祥も、いいムードになっているとは言えるのだろう。

2007_1109__1007  そんなこんなで進んでいった前検であるが、7班の練習中にはちょっとした事故が起きている。
 1マーク付近で佐々木康幸のボートが他艇と接触したのだ。その際には大事には到らなかったようにも思われていたのだが、4本の練習があるのに2本でやめてピットに引き上げてくると、ボートリフトの手前まで来たところで、文字通りボートが沈没してしまったのである。
 本人はボートが沈没する前に降りていたため、水に浸かることはなかったが、ボートのほうには、ナンバープレートの下あたりに穴が開いていて、そこから水が入ってきてしまっていたわけだ。
 これには、佐々木も苦笑い。
「ちょっと当たったくらいだったんだけど」と、同じ班で練習をしていた白井英治や寺田祥に囲まれながら、照れているような困ったような顔をしていたものだった。
 現在のところ、ボート変更はしないで修理する予定のようだが(当日の変更はあるかもしれないので確認してほしい)、佐々木はその後、とりあえず水に浸かったモーターをチェックしていた。
 前検日から思わぬアクシデントに見舞われたわけだが、本人はしょげかえるようなこともなく笑顔を絶やさないままでいたのだから、きっと大丈夫だろう! 今年好調の佐々木にはアクシデントに負けない快進撃を期待したいものである。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/内池久貴)


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