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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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聖戦士の勝負駆け――4日目、前半のピット

2007_1122_1047  装着場には、あまり選手の姿は見当たらない。ときどきポツリポツリとペラ装着などの作業をしている選手もいるが、着水するなどして姿が消えると、また閑散とした時が訪れる。「賞金王勝負駆け」の準優勝負駆け、しかしピットを見る限り、こちらが想像するようなアツさはない。むしろクールであるように感じるほどで、晩秋の冷気が身にしみる。
 そんななかを、川﨑智幸がゆっくりゆっくりと歩いていた。児島周年・競艇キングカップの優勝戦でも、ゆっくりゆっくりと歩く川﨑を見かけているが、そのときよりは速度は2~3倍。ゆっくりゆっくりとは言いながら、児島よりはちょいと速い。あのときは優勝戦、今回は予選最終日。優勝戦のほうがおのずと気合が強くなるのは当然で、それが速度に表われるということか。こうなったら、今節も優出を果たしてもらって、明後日、歩く速度を確認したい気になった。2年連続の賞金王出場も、俄然応援したくなったぞ。

2007_1122_0255  今節は本体の大手術もしていて、整備室で見かけることの多かった辻栄蔵が、今日はペラ室で作業している。辻はもともと、ペラ室で姿を見ることのほうが圧倒的に多かったから、ようやくいつもの辻栄蔵に戻ったという感じだ。3R前、ペラ室から歩み出て、ボートに装着。すでに締切時間は近づいていたが、「降ろしてもいいですかぁ?」と大声でリフト操作の職員さんに声をかけて、OKサインをもらうと「ありがとうございまぁすっ!」と急ぎ着水。軽やかな足取りでボートを押して、リフトへと向かっていった。そのスピードは、川﨑の2~3倍。まあ、辻はスタスタと歩いていることのほうが多いような気はするが。昨年まで4年連続賞金王出場、一昨年は優勝。言うまでもなく、連続出場を途切れさせるつもりは、微塵もないはずだ。

2007_1122_0169  3Rに出走した鳥飼眞のエンジン吊りに、上瀧和則が駆けつける。いや、駆けつけるという言葉はふさわしくないか。腕を組みながら、散歩でもしているかのように涼しい顔つきで、のんびりと歩いていたのだから。エンジン吊りには多くの選手が駆けつけるわけだが、リフトに到着したのはいちばん最後。そのスピードは、辻の3分の1、くらいだろうか。計算上は川﨑と同じような速度ということになるが、時間差があったから、ちょっとよくわからない。ただし、川﨑が雲の上を歩くような足取りだとするなら、上瀧は踏み固められた土の上を歩いている感じ。まあ、本人はそんなことを意識して歩いているわけはないのだが。
 鳥飼のボート引き上げを手伝いながら、上瀧はゴキゲンな笑顔を見せていた。これは、いつもの上瀧だ。選手仲間の輪の中では、上瀧はいつも笑っている。この勝負駆けに、上瀧はまったくの平常心で臨めそうだ。昨年まで3年連続賞金王出場の上瀧、もちろん4年連続を本気で狙っているはずである。

 昨年の賞金王戦士12名のうち、今年の出場をすでに決めているのは、4名。このチャレンジカップに出場しておらず、連続出場を逃したのが3名。残り5名が昨年に続いてベスト12に名を連ねるために、この浜名湖ですべてを懸ける。今日の勝負駆けが、そのための胸突き八丁。気合が高まらないはずがない。
2007_1121_0081 「クロちゃん、朝から仕事し続けて疲れたから、休憩してくるわ!」
 昨日よりずっとスッキリした表情になっていた三嶌誠司が、そう言って選手食堂へと消えていく。彼もまた“残り5名”の昨年賞金王出場組。初日のFで、あとは他選手の結果待ちという状況になってしまったけれども、緩めることなく、朝から仕事を続けているのだ。1Rでは初1着も出て、少しでも賞金を積み上げて逃げ込みを図る。全選手のなかで、もっとも間近に賞金王のスペシャルな雰囲気を知っている昨年の出場者たちは、今年もあの空気を味わいたくて、全力を尽くすのである。

2007_1122_0145   そして彼も昨年出場組だ、気になる山崎智也。彼は開会式や勝利選手インタビューで「崖っぷちに立っている」と言った。この言葉は、実は深い。なぜなら、彼が立っている崖っぷちとは、「賞金王決定戦の崖っぷち」だからだ。つまり、彼は「賞金王に出られないかもしれない」と考えている。「ここを勝てば賞金王に出られるかもしれない」ではない。山崎智也のなかでは、「賞金王決定戦出場は当たり前」ということになっている。だから、「出られないかもしれない」。それが、「崖っぷち」という言葉の意味である。山崎智也は、それほどまでの高いステージに立っている。それだけに、今日は最高の気合で走るのは間違いないのだ。……と言いながら、今朝の智也は昨日とまったく変わったふうはなく、佐藤大介とニッコニコで談笑していたのだけれど。

なお、5Rで今村豊が展示後に急遽、欠場となっている。発表は「急病のため」。記事執筆&更新のため、ピットを離れていたので詳しい状況はわからない。わかれば、後半のピットで続報したい。今村は12Rも欠場です。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田守)


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