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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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12戦士の時間――決定戦初日前半のピット

_u4w2691  1Rの展示航走が終わった直後には、三嶌誠司、松井繁、吉川元浩が試運転に出て行った。引き上げてきた三嶌は、NIFTY黒須田の姿を見つけると、笑って「準備体操は終わり。こんなものでしょう」と言っていたのだから、上々の手応えを得られたということなのだろう。
 しかし、それでも三嶌は作業の手をゆるめず、すぐにペラを叩き出したかと思えば、1R後にも試運転に出て行ったのだ。
 ペラを叩いていた時間の短さを考えれば、微調整程度のことだったのだろうが、ある程度、納得がいっている足にさらなる上積みをつけようとしているわけだから、そんな貪欲な姿勢はいかにも三嶌らしい。12番目の切符を手に入れた直後から「1億円をとってきます」と言っていたのは本気なのである。

_mg_2631  松井と吉川は試運転から帰ってきたあと、少しだけ声を掛け合っていたが、長話をしていたわけではなかった。すぐに松井はペラを外していたし、吉川はモーターを入念にチェックしていたのだから、時間のムダは少しもつくらないのだ。
 池上カメラマンによると、早い時間帯には、シリーズ出場選手である我らがアイドル、“シラケン”こと白石健を加えた3人でモーターを見ながら何かを話していたということだ。
 そうして互いの状態などを確かめ合うことはしていても、それぞれにやるべき作業は違った方向性になってくる。

_u4w2606  1R前には、整備室の中に服部幸男、高橋勲のボートが入れられていて、そのしばらくあとには、濱野谷憲吾、瓜生正義のボートも増えていた。
 こちらが確認した範囲では、濱野谷以外のモーターはボートから外されていた。濱野谷も含めてこの4人は本体に手を付けているのだろう。福岡競艇場の整備室では、本体の整備をするときには奥のほうで作業を行なうので、どんなことをしているかが確認しづらいのだが、ボートごと整備室に入れているのだから、午前中はモーター整備が中心になってくるのだろう。
 もちろん、整備室に籠もりきりになっているわけではなく、高橋と濱野谷は1R後の引き上げにもしっかりと出てきていた。また服部は、控室と整備室を移動していたときに内田和男アナウンサーの姿を見かけると、笑って手を上げ、しばらく話もしていたので、リラックスはできているようだった。
 それとは対照的に高橋は、ボートの引き上げに出てきても、誰かと声を掛け合うこともなく、何かを思案しているような顔をしていたものだった。
 モーター組としては他に、湯川浩司もギアケースの調整をしていたが、ピット内を歩いているときなどは、その足取りはゆっくりとしていて、落ち着いている印象を受けたものだ。

_u4w2539  早い時間帯からペラ調整をしていたのは田中信一郎と魚谷智之だった。ともに屋外の「ペラの森」での作業だったが、田中は鎌田義、齊藤仁、須藤博倫などに囲まれるようなかたちになっていたのに対して、魚谷は作業台から少し離れた床のところでしゃがみこみながらペラを叩いていた。
 田中の傍にいたのがカマギーだったというのも大きいのだろうが、作業の手はほとんど止めないながらも、時々何かを話しながら笑っているところも見かけられたものだ。
 昨日の前検からそうだったが、田中はペラの森に陣取っている時間が長く、同期の太田和美と並んで、二人で黙々とペラを叩いている時間帯も見られた。

_u4w2352  昨日、「衝撃の不調発言」で周囲を驚かせた魚谷が、大がかりなモーター整備ではなく、ペラ調整から作業を進めているのは少し意外だったが、しばらくのあいだは、ペラ中心の作業になるものと予想される。
 1R後には試運転に出ていたが、引き上げてきたあとには、リポーターに対して「とりあえず、まだダメ」というようなことを言って、3枚あるペラを使っていろいろ試してみるということを話していたのだ。

_mg_2612  1R後の試運転には、三嶌誠司、魚谷智之のほかに、寺田祥、井口佳典も出ていて、井口と田村隆信、寺田と白井英治、井口と坪井康晴の足合わせなどが行なわれていた。
 そのとき近くにいた“浪速のドン”長嶺豊さんは、井口と足合わせをしているのが坪井だと確認してから、「よう出てるね。井口と変わらんくらいやないですか」とも言っていたのだから、すなわち井口の足も出ているということである。
 そのためか、試運転から引き上げてきたあと、井口の表情は晴れやかに見えたものだ。マナーのようなものとして選手の誰もがやることではあるが、足合わせをした寺田や田村のもとに行って少し話をしたあとには、装着場にいた湯川とも話をしていた(写真は試運転前のもの)。

_u4w2861  それとは逆に、表情が暗く見えたのが寺田だった。もともとポーカーフェイスなので判断しにくいところもあるのだが、好感触が掴めていないのは確かだと思う。
 井口としばらく話をしていたあとは、同県の白井が、かなり長いあいだ、寺田と話をしていたし、その後、一人になった寺田は、“さて、どこに手をつけようか”と悩んでいるように、しばらくモーターを見つめ続けていたのである。
 ……出ている人間も出ていない人間も、こうしてそれぞれの作業を続ける。
 トライアルは11R、12Rに組まれるので「12戦士の時間」は長いのだ。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/内池久貴)


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